夏休み映画二本立て感想:『ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~』『ブレンダンとケルズの秘密』

なんだか夏休みっぽい映画を見たので二本立て感想を書く。
ロバート・ダウニーJr.のパチモノが家族でバカンスに出かけようとしたらクルマが止まらなくなっちゃって家庭崩壊の危機(のわりには楽しそう)に瀕する原始的コメディ『ボン・ボヤージュ ~家族旅行は大暴走~』と、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のクリエイターの幻視的長編デビュー作『ブレンダンとケルズの秘密』です。

あんまり内容について書いていないのは夏のせい。

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『ボン・ボヤージュ ~家族旅行は大暴走~』

《推定睡眠時間:0分》

去年おなじ映画館でやってた『世界の果てまでヒャッハー!』は俺ん中ではフランスの電波少年というポジションだったが、同監督らしいこちらはあくまで俺オンリーでフランスの東映スピードアクションです。
バカンスに浮かれるアホ家族を乗せた最新鋭の自動制御カーが制御不能に陥って時速160キロでハイウェイを暴走パニック、狂走セックス白バイ警官とか愛車を破壊され狂った野獣と化したマザコン男とかその他諸々巻き込んで大激突、の筋に乗っかる大事件を尻目に卓球に明け暮れる白バイ隊長の公権力不信感、突っ込んできた暴走車のドライバーを引きずり出してリンチするキャンピングカー族のバイオレントな世界観…これは東映だろ…だいぶゆるいが…こんなものは渡瀬恒彦だろ…!

それはやはりフランスと言えば『新幹線大爆破』をいち早く評価した意識の高いお国であるから我が国では伝説の中にしかもはや見られないと思われる東映感覚がまだ映画の中に生きているんである。
人を叩いたら面白いとか人におしっこをかけたら面白いとか人がゲロ吐いたら面白いとか面白い顔は面白いとか女の人のパンツが見たいとかそういう下町プリミティヴなやつである。梅宮辰夫を呼んでトークショー付き上映をしてほしい。

どういう映画かと言うとそういう映画なのですが、でもまぁかような不謹慎もギリギリのところで倫理の内側に踏みとどまってるのでえらいとおもいましたね。『世界の果てまでヒャッハー!』もそうだったからそのボーダーラインギリギリのところで勝負してる人なのかもしれませんが、この手のアメリカ映画とかにありがちな変な気負いとか感じないからいい。
なにせ自動制御装置が壊れる伏線とかないからなこの映画は。理由とかないけど壊れたら面白いから壊すんです。主人公一家が途中で拾うヒッピー少女(?)もそう。別に乗っけたからと言ってストーリーに広がりとか出ないし台詞だってそんなにないけどなんか居た方が面白いんで乗せるんです。すごくない?

いや、なにがすごいと言われればなにもすごくないから答えに窮するが…こんな素朴な、バカバカしくて素朴なんだけどでも笑えるか笑えないかのギリギリの所を攻めていく知性と根性はあって、ほんで暴走車が料金所を突破するスリルとか派手なカークラッシュとか、そういうアクションはきっちり見せてくわけですよ(結構迫力あった)
すごいかどうかはともかくなんら衒うことなくこういうのやってる映画を見るとあぁ映画見たなって気になる。プログラムピクチャーというもの。一本調子だしギャグはクドいし大して面白いものでもないが、こうやって気持ちよく劇場を後にできる映画つーのはいいのです。

あと出てくる女の人がみんなチャーミングなのは重要。最重要。

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『ブレンダンとケルズの秘密』

《推定睡眠時間:35分》

このトム・ムーアという監督の『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』はすごく好きで、俺にしては非常に稀なことなんですがEGO-WRAPPIN’の中納良恵が歌を吹き替えて話題になった吹き替え版と字幕版の両方見に行っていたりする。
驚くべきは好きで2回も見ているのに2回とも45分ぐらい寝ている。45分。それは寝たな。見るなら寝るな、寝るなら見るなの微妙に角川的な強硬意見もわかるが…ただ寝るものは寝るのであり寝たいから寝るのではなく寝るから寝る、そのような映画は現に存在するのだから仕方がないよね。

寝ましたよもちろんトム・ムーアの長編デビュー作『ブレンダンとケルズの秘密』。ランタイム75分のうち半分ちかくを睡魔に持っていかれているよ。ただすごく良い映画だね。おもしろかったです。
『ソング・オブ・ザ・シー』がそうであったように異界のうたが厳格に体系化された理性的世界をゆらりふわりと流体に変貌させるものであるからこちらも釣られてリアル夢世界(ふしぎながいねん)に突入するという体験。幻視的感性の映画は夢うつつで見るものだ。

世界で最も美しい本と言われると検索して出てきた一番上に書いてある聖書手写本、ケルズの書を巡るおはなし。こども修道士が世界を救うためにケルズの書をあーだこーだ冒険ファンタジーを謳っているが、ここで世界というのは某巨人よろしく大ビッグ防壁に囲われた修道院を中心とする9世紀アイルランドのキリスト教共同体である。
いま公開中の『ウィッチ』が内容的に共通するものがあり宣伝パターン的にも似ているのだが、抽象化・一般化して訴求しているが実際はそのような広がりを拒むトラディショナルな映画なのだ。これから見る人はデジタルをフル活用した2時間スペシャル版『日本むかし話』ぐらいに思っておいたほうがよい。逆を言えば『日本むかし話』が好きな人は絶対見るべき。

ところで監督トム・ムーアと書きましたが、単独名義なのは『ソング・オブ・ザ・シー』でこちらの方はノラ・トゥーミーという女性アニメ監督と共同監督だそうです。
この内容でそれでしょ。おいおいおいデッド・カン・ダンスですかってなるなおいこれは。リサ・ジェラルドとブレンダン・ペリーのコンビだろデッカン、それでこのタイトルだからな。リサとかアイルランド系だし、ゴシックと民族音楽と異言のうたっていうデッカン的越境音楽の構成要素、これ映画に翻訳すると『ブレンダンとケルズの秘密』みたいになるんじゃないの、ちょうど。KiLAという人の音楽も一瞬ですがデッカンかと思いましたもの。

それは別に映画とはなにも関係ないのであるが見つけると嬉しい導きの糸。しかしこの糸は混迷から抜け出させるのではなく理性がガラクタも同然になってしまう世界の奥深く奥深くの原初的混沌へと繋がってるんである。
『ブレンダンとケルズの秘密』では忘れられた遺跡に封印されたいにしえの存在が禍々しい臭気を放っていたが、おおそういえばデッカン「The Host of Seraphim」は異界のばけものが現世にあふれ出すキング流クトゥルー神話の映画化『ミスト』の主題歌だったのだ!
これはコズミックなんである。越境、混淆、文節され秩序づけられた昼の世界が夜の闇に宇宙として再編される、民俗的宇宙論だったのです『ブレンダンとケルズの秘密』は。

たいへんよいものをみた、ねたとおもいます。ふたつの意味でぐー。

【ママー!これ買ってー!】


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着想的には『ボン・ボヤージュ』と変わらないっぽいロビン・ウィリアムズ主演作。さいきん微妙に家族仲がギクシャクしてきたんでここいらでテコ入れしましょか! つーことで超最新式のスーパーキャンピングカーを買ってきて家族旅行に出るロビン・ウィリアムズだったが、右から左か後ろから前からトラブルが舞い込んできて家族再生どころではなくなってしまうのだった。
『ボン・ボヤージュ』はゲロが見所でしたが『RV』はウンコです。

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