ミニシアター映画感想:『プラネタリウム』『ポルト』

ミニシアター系映画ふたつ見たので感想。『プラネタリウム』は公開初日に見て全然意味がわからなかったミステリーのように見せかけてミステリーじゃない頭使う系映画。『ポルト』は頭とかなんも使わないで主演アントン・イェルチンに寄り添ってポルトガルのポルトという街を漂っていればいい映画。

どっちも超ミニシアターっぽいミニシアター映画。ミニシアターっぽいってなんだろう。

『プラネタリウム』

《推定睡眠時間:10分》

これはむずかしい映画。劇中でナタリー・ポートマンとリリー=ローズ・デップの如何わしい交霊姉妹が出会うスピリチュアル爆ハマり映画プロデューサーというのはベルナール・ナタンという実在の人がモデルだそうで、この人は映画草創期の大メジャー、パテ社を経営破綻の危機から救った偉い人。
そのあと怪しい経営術や出自に文句がつき捕縛、なんやかんやあって後年アウシュビッツに送られ虐殺されたらしいとウィキに書いてあるがなーるほど! そういうストーリーだったのか! 公式サイトのあらすじを読んでもいまひとつ腑に落ちなかったが(全然そんな映画じゃなかったぞ…!)ウィキで把握。ウィキでモデルになった人のことを読まないとストーリーもよくわからないのだからむずかしい…。

プロデューサーが実在モデルありなら交霊姉妹にも実在のモデルがあるそうでこちらは19世紀アメリカにオカルトブーム(※スピリチュアルとは書かない)を巻き起こしたフォックス三姉妹。オカルトは在野の専門家が日本にも多いから知ってる人おおそう。ぼくは全然知らないがウィキ情報ではラップ現象とか起こせたそうです。しょぼっ。
とこう、モデル並べてようやくなにについての映画かゆらゆら輪郭が見えてくるのですがー、これは回想形式のシナリオで、ほら、そういえばあんたの上客だったナタン某、あいつがどうも最近…とかなんとかいうゴニョゴニョした噂話を知人から聞いたナタポーが数年前のナタン某との奇妙な日々を回想する、そういう場面から映画が始まる。

噂と回想が話の導入っていうの交霊会で霊媒が故人として過去を語る(騙る?)行為と繋がるところあるじゃん。でそれ映画にも接点あるよな。映画の中で演技することとか過去をフィルムに定着させることとか。モデル的にはナタンとフォックス姉妹っていう二組の興行師は遭遇するはずがないんだけど、でも遭遇するはずのない人たちは交霊ショウとか映画の虚実皮膜のあわいの中では繋がる。
だからたぶんこういう映画だよね。心霊から映画へそれからナチズムへっていう風にして、時代が下るにつれてどう虚実皮膜のショウは変容していったかっていうのを、新しい虚実皮膜のショウはどうやって前世代の虚実皮膜のショウを呑み込んで駆逐していったかっていうのを興行師ナタポーの信用できない回想の中でひとつに結び付けたヨーロッパ映画史批評ムービー。興行のラブストーリー(ラブストーリーの興行ではない)

これは何に似ているかと言われたら押井守の映画で見る映画論『トーキング・ヘッド』に似ているな。この内容でさも官能ミステリーででもあるかのように騙りナタポーとデップ娘を前面に打ち出した見世物宣伝ぷりは酷いが、その点でもバトルアクションみたいなキャッチーな宣伝で売っておいて実際みたら衒学的な独白と綺麗な風景が延々続くだけみたいな押井映画とよく似ているよ…!

ちなみに良かったところは咀嚼音とか喘ぎ声とかの異様に強調された効果音とリリー=ローズ・デップの昆虫的な残酷を帯びた天真爛漫(こわい…)。

『ポルト』

《推定睡眠時間:30分》

なんていうかすごい親密な感じの映画だったのでエンドロールのアントン・イェルチンへの献辞はおためごかしではないな。それにしても訃報たしか去年でしょ。今まだ新作としてアントン・イェルチンの映画が一般公開される。見てる方にはその時差マジカル。『プラネタリウム』であーだーこーだ論じられていたことでもあるが死んだ人が普通に映画の中で呼吸しているのだからやはり映画は不思議なものなのである。
そういうしんみりした特にイェルチンのファンの人はしんみりに違いない映画にそういうことを言うのもどうかと思うが本当にロマンポルノみたいな映画だなって思いましたね。それはそれでお前ロマンポルノをバカにしてんのかよって言われかねないので難しいが別にどっちのことも辱める意図とかなく本当にロマンポルノみたいな映画だと思ったんだ『ポルト』。ロマンポルノみたいな『ポルト』。

なんかアントン・イェルチンが職の定まらない肉体労働者で。仕事がないんだかできないんだかで遺跡の発掘現場で石運んだりするバイトしてるんですけどガリッガリの不健康で。友達とかいなくて。アポート戻ると大家に家賃払えってどやされる。主人公設定の時点で既にどうしようもなくロマンポルノぽい…。
それでそのダメなアントン・イェルチンが年上のエロい女の人と出会う。エロい女の人と出会って一夜を共にする。アントン・イェルチン的にはもう有頂天。俺にもモテ期来たなとか思う。でも翌朝になってみたら女の人の態度は冷たい。二度と目の前に現れるなぐらい言う。イェルチン思わず手を上げて警察沙汰になってしまう。
果たしてあの一夜とはなんだったのか…そういうお話だったがいややっぱりロマンポルノ的世界観だと思うよこれは! ロマンポルノっていうか神代辰巳とか石井隆のああいうやつだよ…!

例の一夜の濡れ場がやたら長い、5分ぐらいほとんどカットも割らないで布団もなにもかけないモロ出し状態でカメラベタ置きで撮るっていうそういうところも含めてロマンポルノだと思うが別にロマンポルノの語に拘泥しても良いことないのでロマンポルノの乱用はやめにするとしてそれはともかくプライベート・フィルムみたいなボケっとしたささやか映画、愛嬌あるわ。
濡れ場は映画の最後の最後にあったがこういう作りの映画なので、しっかり勃起はしているが、スタッフになって現場で見守ってるような錯覚に陥る。親密。

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