フィリップ・K・ディック原作映画をたくさん観たから感想書く!(その3)

近年になってもまだまだ作られ続けるディック原作映画!
もう飽きた?
いやいや、まだ早い!
まだまだ面白い映画はいっぱいあんである!
ってコトでその1その2に続いてその3だ!

『NEXT ネクスト』(2007)

ラスベガスの売れないマジシャン、ニコラス・ケイジ。
彼は二分先の未来が予知できる能力を持っていたが、あんま面倒に巻き込まれるのはイヤなんでひっそり生きていた。
そんな彼の前に、FBI捜査官が現れる…。

短編『ゴールデン・マン』(1954)が原作。
『スキャナー・ダークリー』と違ってコッチは原作どこいったんだ映画。
二分後の未来が予知できる男って基本設定だけ同じで、後はもう一切共通点ナシ。
原作だと予知できるのは全身金色の自閉的なミュータントだったけど、こっちゃラスベガスに生きるマジシャンのニコラス・ケイジですよ。いや、ある意味ゴールデン・マンかもしれないが(衣装とか)。

でも面白いんだな、コレが。
豪快なアクション映画ばっかり撮ってるリー・タマホリ(スゴイ名前ですが、ゲイというのがまたスゴイ。私生活でも玉掘りか)が監督なんで、少なくとも観てる間はずっとタイクツしない。
観た後は完全に忘れたが、とりあえずアクションとか爆発とかあって面白かったコトと、ニコラス・ケイジとラスベガスの相性が良すぎたコトだけ覚えてます。
ベガスとケイジ。なんか語呂いいよね。

『アジャストメント』(2011)

若手政治家のマット・デイモンは、ある日エミリー・ブラントに出会って一目惚れ。
しっぽり決め込んでやろうとしたところ、ナント彼女は謎の紳士たちに拉致られてしまう。
彼らこそ、人々の運命を調整するアジャストメント・チームだった…。

短編『調整班(後に『アジャストメント』に改題)』が原作。
『ボーン・アルティメイタム』(2007)の脚本家ジョージ・ノルフィが脚本・監督を手掛け、『ボーン』シリーズのマット・デイモンが出た。
プロデューサーには『ペイチェック 消された記憶』のマイケル・ハセットが名を連ねてる。
その時点でなんか感じるものがありますね、なんか。

で映画は『マイノリティ・リポート』系なんですが、別にアッチみたいに面白いアクションとかギャグとか展開とかあるワケじゃないんで、一言、地味。
アジャストメント・チームが人々の運命を全部決めていて、この人たち的にはマット・デイモンとエミリー・ブラントは出会っちゃいけないコトになってる。
でもマット・デイモンはエミリー・ブラントとラブしたいんで、そいつらに立ち向かうコトになる。

といって別にジェイソン・ボーンみたいに強くないんで、基本的にはアジャストメント・チームとマット・デイモンが追っかけっこするだけ。
あんまグっとくるトコとか無いが、でも映画オリジナルのガジェットはちょっと面白かったナ。
名前とか忘れたが、そのガジェット使って扉を開けると全然別の場所に行けるのだ。「どこでもドア」だよね。
マットが走ってはどこでもドア、また走ってはどこでもドア使いまくって、あっちゃこっちゃピュンピュン飛びまくるのは楽しい。
それだけ。

ちなみに、原作はシオドア・スタージョンの呑気なバカSF『昨日は月曜日だった』に近いテイストで、もう核になるアイディアからしてそもそも違う。

「俺さ…会社が溶けるの見たんだよ…それで早退してきたんだ…」
「まったくアナタったら、会社がイヤになったのね。分かったわ、私から上司に話してあげる。仕方のない人ね!」
「いや、違くて…」

みたいな感じ。

『トータル・リコール』(2012)

大戦によって荒廃し、人間の居住可能区域がイギリスとオーストラリアだけになってしまった近未来。イギリスは富裕層が支配し、労働者たちはオーストラリアのスラムに押し込まれていた。
オーストラリアに住む底辺労働者のコリン・ファレルは、希望の見えない生活に嫌気が差していた。
そんな彼に、同僚は夢旅行を勧める。
初めは興味の無かったコリン・ファレルだったが、ふと思い立って夢旅行に出かけようとして…

シュワ主演のケッ作『トータル・リコール』のリメイクで、なんかもうディック祭り。というかディック原作映画祭り。
オーストラリアの街並みは完全に『ブレードランナー』で、イギリスの街は『マイノリティ・リポート』。『トータル・リコール』の有名な顔面崩壊シーンも引用。
コリン・ファレルの貧相な顔立ちもなんかディックっぽいな。少なくともシュワちゃんよりはディック的だろう。

オリジナルの『トータル・リコール』みたいな破壊的なエネルギーとか別にないが、いや面白けりゃなんでもいいじゃない。
パトリック・タトポロスの美術はカッコイイし、ハリー・グレッグソン・ウィリアムスの音楽だって盛り上がる。
脚本に『リベリオン』(2002)でボンクラと中二を歓喜させた、オタク野郎カート・ウィマーが参加してるのもポイント高し(ある意味低いが)

ケイト・ベッキンセイルの鬼畜嫁っぷりもマゾ男には堪らないものがあるが、この人監督のレン・ワイズマンの嫁である。
多分、ワイズマンはマゾなんだろう。

撮る映画撮る映画必ず重力を無視した立体アクションをやりたがるのがワイズマンなので、コリン・ファレルは行く先々で立体アクションに巻き込まれる。
この監督よっぽど立体アクションが好きらしく、最後に待ってるのはコアを通過する際に無重力となった地殻エレベーター内でのアクションだ。

地殻エレベーターってのは映画オリジナルの設定で、こう、地表に穴掘ってですね、エレベーター通してですね、オーストラリアとイギリスを二時間で繋ぐワケです。
んで、オーストラリアの貧民どもはこのエレベーターに乗ってイギリスの工場に出勤するって寸法。
あまりにバカバカしいが、そのアイディアの荒唐無稽さと反比例する地味な使用法にグっときた。
なんか知らんが、小市民感覚を核とするディックらしい気がするぞ!

ってなワケで、とにかくディック映画的な映像やらガジェットがたくさん出てきて、アクションもサスペンスも盛りだくさんなのがこの映画。
オバマ大統領がドル紙幣の肖像になってるみたいな小ネタもあるし(『ユービック』(1969)か?)、更にはジェシカ・ビールとケイト・ベッキンセールのキャットファイトまであって、なんか得した気分になる。
面白いぞ!


というコトでディック原作映画を見てきた。
スティーブン・キングと並んで映画化されまくるディックですが、スティーブン・キングと並んで玉石混交。
でも傑作と駄作の落差はキングの一本勝で、なんだかんだディック原作はどれも面白いのだ。大体。
なので、『ブレードランナー』だけ観とけばいいっしょなんて言わないで、ディック好きもそうでない人もディック原作映画観てやってください。
いやホント、面白いのばっかなんで。

【ママー!これ買ってー!】


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『トータル・リコール』は最近のディック原作映画の中じゃ個人的に一番のヒット。
色々バカバカしいトコあるんで、ツッコミながら観ても楽しいぞ!

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