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イギリスに『メアリーの総て』あらばフランスには『コレット』ありというわけでプロットまでちょっと似ている有名女性作家の伝記映画シリーズ第二弾。流行っているんだろうかこういうの。流行っているんだろうなあ。次はアメリカ編としてジェイムズ・ティプトリー・Jr.ことアリス・ブラッドリー・シェルドンをお願いします。『コレット』の監督はアルツハイマー映画『アリスのままで』のウォッシュ・ウェストモアランドだからぴったりだ(なにが)
それで『コレット』ですがぼくは全然知らなかったのですがこの人フランスの国民的作家みたいな人らしい。緑と虫の豊かなブルゴーニュの片田舎でぬくぬく育ったコレットはやがて当時の人気作家アンリ・ゴーティエ=ヴィラール(筆名ウィリー)と恋愛要素もありつつの半強制結婚、ハネムーン気分でパリに上京したはいいがウィリーめっちゃ無駄なことに金を使う人だったので予想外の苦しい生活、少しでも家計の足しになるならばと半強制的に夫名義で小説を書き(書かせられ)始めて作家デビュー。これが見事に一世を風靡した。
その『クロディーヌ』シリーズは一冊も読んだことがないのでどんな内容かは知らないが映画の中では舞台化されて大ヒット、クロディーヌのコスプレが流行ったりしていたので世の女の人のハートをむんずとキャッチするドンピシャ感あふれる内容だったに違いない。『愛がなんだ』とか『勝手にふるえてろ』みたいなものだろうか。違うとおもクロディーヌ。
おもしろいところはコレットは最初ウィリーに連れられて入ったハイパー☆スノッブ社交界の面々をあいつら中身の無い上っ面だけで糞つまんねぇなっつって酷評してんですが、パリで長く過ごすうちに段々とその薄っぺらな戯れと快楽の世界に染まっていく、でそこに何か抑圧された者の逆転の契機というか、抑圧すること/されることを行為はそのままにその意味を変えてしまう手段を見出す。
ウィリーというのは酷い夫で金がなくなると田舎の別荘にコレットを軟禁して小説を書かせたりするのですが、そうした数々の鬼畜行為はある種SM的に描かれていて、二人の結婚生活を映画はコレットのプレイとして捉える。
正攻法ではひっくり返しようがない男女格差の現状を打破するための戦術的スノビズムは痛々しくもある一方でコレットのしなやかなしたたかさの表れでもあった。
話の流れだけ見れば不憫度高めのものがたりもそんなコレットに敬意を表して(かどうかはしらない)飄々淡々、愉快奔放。途中からは作家先生コレットに頼らないと生きていけないウィリーが憐れに見えてきて、からの結婚生活の痛快顛末にサムズアップ。
おもしろい映画でしたね、不敵なやってやろうじゃねぇか感が漂っていて。それにしてもキーラ・ナイトレイ、男装の麗人的なの好きだなぁ(あと個人的にグッときたポイントはコレットの生き様がなんとなくデヴィッド・ボウイと重なるところでした)
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こっちはもっと映画的につまらない解釈をしているが、エル・ファニングのメアリー・シェリーはちょっと良かった。
↓百合要素があるらしい