【ネッフリ】『デンジャラス・ライ』書くことない感想文

《推定ながら見時間:60分》

まぁ観たからには感想書くけど取り立てて書くこともないというのが本音である。別につまらないわけじゃないが面白いわけでもない。午後ローで観てたら思わぬ掘り出し物的な感じでもう少し面白さが加点された可能性はあるがネッフリで観ると「いつものネッフリ映画だね~」で終わってしまう。事実、終わった。

こういう映画が一番扱いに困るしこういう映画をちゃんとよそ見させないで観せるためにこそ映画館はあるんじゃないかと思ってしまう。映画館が長期休業中(こちら東京)の今、いちばん映画館で観たい映画と言っても過言ではない。ごめんなさい過言でしかありませんでした。過言でしかありませんが言いたいことはまぁ、わかってくれますよね? 以下、わかってくれる人向けの無駄話。

あのなんかね、貧乏カップルがいるんです。ダイナーの夜勤で学費とか稼いでる冴えない女と冴えない男。そしたらそこに強盗入った。うわぁこれはどっちか死ぬな、と思ったらどっちも死なない。それから物語はネクストステージに入ります。なにやら立派なお屋敷に住む独居老人がおって、この人がエリオット・グールド。最近の作品選びの華がなさすぎて気を抜くと去年ぐらいにお亡くなりになったような気がしてしまうエリオット・グールドです。『破壊!』とか『ロング・グッドバイ』に華があっただろうかといったら(時代の空気を全身に纏ったその魅力はすさまじいとしても)そうでもないわけだから決して堕ちたわけじゃあなく、これがエリオット・グールドのマイウェイなんだろう。

さてダイナーで働けなくなった女はエリオット・グールド邸のハウスキーパーかなんかの職を得る。グールドと仲良くなってハウスキーパー派遣会社の規約で本当はやってはいけないことになっているのだが彼氏も庭師で雇ってもらう。この彼氏というのは黒人なので黒人庭師と女メイド、う~ん貧困は時代を逆行させますな~と社会派路線の映画を予感させるがとくにそういう方向には進まない(みんな金無い、という程度の設定を社会派と呼ぶならまぁそうかもしれないが)

やむなくの仕事とはいえグールドが超良い人だったのでまんざらでもない女。グールドから学費支援の話なんかも出てきちゃったりして強盗に遭ったあの不幸な夜から一転、人生の上昇気流に乗ったようである。女うれしい。男もうれしい。グールドも孤独が癒やされてうれしい。よかったよかったよかったね、と、そんな平和が続くわけもなく、グールドはまもなく死体となって発見されるのであった。

前置きの比較的長い映画でここからが物語の本番。次から次へと怪しい奴らが屋敷にやってくる。グールドの生前からちょくちょくと土地を狙ってた不動産屋、例のダイナー強盗事件の主人公二人の関与を疑うタフな女刑事、外を歩けばどうも怪しい車に尾けられているような気がする。そしてグールドの遺言を預かった弁護士が告げる衝撃の事実…身寄りのないグールドはなんと遺産相続人に主人公の女を選んだのだった! 感嘆符は一応付けたがあらすじに書いてあったので別に驚きはない。

謎の侵入者によって男の方の頭部が強打され意識を失うという小さな大事件こそあったものの遺産を貰えればもうハッピーエンド一直線。のはずだったのだが、グールドの死の直後、金に飢えた主人公カップルは屋敷の屋根裏で発見したタンス預金をネコババしてしまっていた。こうなると謎の侵入者の一件でも警察を頼ることはできない。ますます近づく不審な影。ハッピーエンド一直線のはずだったカップルはこうして恐怖に苛まれていくのであった。

王道である。王道サスペンスすぎて再度になるが書ける感想がほとんどない。確かに次から次へと何かしらの事件が起きて背後で様々な思惑が複雑に絡み合ってるっぽいことを暗示するので退屈はしないのだが、突出して面白いところもないので次から次へとシーンが脳みそを通り抜けていってしまう。ウェルメイドといえばそれまでだが、その真相と結末も半端ないデジャヴュ感でとにかく、思うところがない。

まぁしかしあえて言えば、映像スタイル的には正統ヒッチコック・フォロワーといった感じで、思わせぶりな小道具のクロースアップや計算された移動撮影はなかなかカッコいい。エレガントな屋敷の美術はどことなくオールド・ダーク・ハウス風味。うっすら漂う死のムードは少しだけ『ガス燈』を彷彿とさせたが、プロットも概ね『ガス燈』をなぞっているような気がしたので古典主義的なサスペンスを今のキャストで作る狙いがあったのかもしれない。

とはいえそんなものをいちいち面白がるのはつまらない映画オタクだけで、普通人が観ればやはりどうにも普通の映画としか言いようがない。エリオット・グールドはさすが作品に重厚感を与えていたがすぐ死んじゃうので後は知らないキャスト任せ。悪い仕事をしている人は誰もいないと思うが、なにせシナリオが地味なものだからどの登場人物も魅力薄。

それは決してつまらないという意味ではないのだが、まぁ、とにかく、そういう映画でございましたね。おもしろかったですよ。いや、おもしろいはおもしろいんだけどさ…。

【ママー!これ買ってー!】


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さすがに今日の水準でこれをハラハラドキドキのサスペンスとして観るのは難しいかもしれないが、格調高いサスペンス調のクラシック・メロドラマとして、今観てもよい映画です。イングリッド・バーグマンもうつくしい。

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