【ネッフリ】駄菓子ドラマ『今際の国のアリス』感想文

《推定ながら見時間:わりと常時分》

1シーズンで終わらないなら先にそう言ってくれ。それは確かに海外ドラマだって全然1シーズンで終わりませんけどこれ別に海外ドラマと違ってお話の面白さで見せるドラマじゃないんだからながら見とはいえ8時間も観て終わらなかったらいや終われや! って思うよ。そんで別に最後にすごいどんでん返しとかすごいスペクタクルとか見せ場らしい見せ場があるわけでもないしな。普通に続きますよ~って終わるんじゃないよ。せめて最後に街一個爆破するぐらいの見せ場は作れ。

監督は『アイアムアヒーロー』とか『キングダム』とかジャンル系漫画の実写映画化なら任せろの佐藤信介だそうですがサトシン作品といえばとにかくアクション。邦画離れしたすごいアクションを見せてくれる映画監督ということで…逆に言えばこれは毎回思うが本当アクションだけしかこの人の映画は見所がない。長いシリーズドラマを作るにはアクションばかりやっていても話がもたないからどうしても人間ドラマが必要になってくる。8エピソード8時間もサトシン演出の漫画的テンプレでそのくせやたら鬱々した根暗ドラマを見ることになるわけである。面白いわけないじゃん、と思う。

いやまぁ面白くないとまでは言いませんけれどもこっちとしてはアクション以外なにも期待してないからな。ゆーても映画ならつまらない人間ドラマだってアクションの起爆剤になるわけじゃないですか。つまらない人間ドラマを1時間30分ぐらい重ねて重ねて重ねて最後の30分に怒濤の大アクション、こういうことなら人間ドラマのつまらなさ、徹底してベタな薄っぺらさもプラス要素になるんです。それが今までのサトシン映画。とくに『アイアムアヒーロー』とかそんな感じでしょ。

でも『今際の国のアリス』は徹底してテンプレな薄っぺら人間ドラマを延々やるだけなんだよ。アクションも一応各エピソードに用意されてますけどどうも盛り上がらない。それは単純にゲームのルールがそんなに面白くないっていうのもあるわけですが(あるのか!)、今回はドラマなのでつまらない鬱々ドラマを毎回ちょっとずつ重ねながら同時にちょっとずつレベルアップしてくデスゲームもやるっていう作りになっているわけで、サトシン映画の重ねて重ねて重ねて最後に怒濤の! っていうカタルシスはないわけです。

一応あるんですよこれぞサトシンみたいな格闘シーンも最後の方のエピソードに。でもそこで戦うの主人公の山﨑賢人じゃなくてラスト3エピソードぐらいで急に出てきたイズレミ男と水着女なんです。なにそれって思うじゃん。そんなの次シーズンのために主要キャラ殺せないからとりあえず死んでも良さそうなキャラを出して戦わせてるだけじゃん。バカバカしくて面白かったけどそういうことじゃないんだよ。アクションが見れればそれでいいってわけじゃなくて…いやアクション目当てで観てるんだけどさ…。

まぁでもあえて言うならばですけれどもながら見には良いシリーズドラマだと思いましたよ。なにせ頭使わなくていいですからね。よくできた海外ドラマとかだとシーズン全体でひとつのパズルが完成するようにあちこちに伏線張って色んなキャラクター小出しにして途中で回想回が急に入ってきて意表を突きつつもそこから物語が急展開して…とかそういう作劇を採用するじゃないですか。こういうの、面白いですけどちゃんと見ないと話についていけなくなるから疲れますよね。

その点『今際の国のアリス』は疲れない。上のオモシロドラマ作劇の全部逆を行くイージー作劇を採用。要はですねこれは元々原作が週刊少年誌に載ってたやつだそうですが週刊連載的だったりサスペンス系のテレビドラマっぽい作りなわけです。移動時間にスマホで気軽に見たり洗濯物でも畳みながらついでに見るようなやつ。そういう感じで雑に観ても全然オッケーに楽しめる。やたら長ったらしいわりに筋は単純だし状況は説明役のキャラが全部説明してくれるし悪い奴はちゃんと「悪いぞー!」って演技してくれたりするしとにかく頭を使わない。楽。

俺はこういう駄菓子みたいなシリーズドラマも案外嫌いではないんですよ。なんだか矛楯するようだけどさ、ははは。だからというかなんというか、駄菓子なら徹底して駄菓子でも別によかったんじゃないのっていうのはちょっと思ったよね。なんでサトシン作品ってこんなに暗いんすかね。それも厚みとか深さがある暗さじゃなくて単に暗いの。で根暗オタクは全員正義でリア充は全員カスみたいなめちゃくちゃ幼稚な世界観なんですよ。孤独にあえぐ中学生男子のナルシスティックな空想をそのまま映像化したようなっていうか。

どうせ渋谷(世界中?)から急に人々が消えて残された一握りの人々がよくわからんまま程度の低いデスゲームをさせられるっていう頭の悪いガキ向けストーリーなわけじゃないですか。だったらもうシリアスぶってないで開き直っちゃえばいいのにね。だってバカでしょ普通に考えて。シーズン後半は渋谷からお台場だかどこかのホテルに舞台が移ってサビ抜きお子様サイズの『ドラゴンヘッド』みたいな展開になるわけですけれどもそこにいるヤングたちは全員水着を着てるんです。で水着姿のままわーきゃー言って殺したり殺されたりする。

そんなの真面目にやらないでいいから。切断された男性器が3Dで飛び出してくる『ピラニア3D』みたいにふざけて撮ればいいから。イレズミ男VS水着ねーちゃん戦だってあんなもん美女軍団がチチ揺らしながら戦う格ゲーシリーズ『デッド オア アライブ』じゃないですか。『デッド オア アライブ』だって格ゲーとしての作りはしっかりしていても美女がチチ揺らしながら戦うってコンセプトはバカだって認識はあるだろ開発側も。ビーチバレーのスピンオフ作るぐらいなんだから。

バカなものはバカっぽく撮ればいいのになんでこんなに真顔で…いいよ、デスゲームを通した生の実感とかそういうの。そういうちゃんとしたテーマはちゃんとした映画なりシリーズドラマなりがやってくれてるんです。どうせ何の面白味もない記号的定型キャラしか出てこない世界でそんなこと真顔で言われても響くわけないじゃん。響かせたかったらこんな雑な脚本と演出で良しとすべきじゃないだろどう考えても。

よくわからん。なにがしたかったのかよくわからん。なにかをしようというビジョンが作り手にあったのかどうかもよくわからん。とりあえずNetflixからシリーズものの仕事来たからやってますぐらいの考えしかないのかもしれない。次へ次へと視聴者を引っ張る仕掛けもとくにないのでそう解釈するかもしくは単に無能と考えるしかない。あるいは逆に、スタア俳優さえ出てりゃ日本の観客はバカだからミソもクソもわからず食うということをこの作り手はプロとして熟知しているんである。

Netflix作品というと娯楽性と芸術性の融合が云々みたいなだいぶ実態と乖離したイメージもありますが向こうも商売なわけですからそこらへんシビアなもので、漫画原作×デスゲーム×佐藤信介(×山﨑賢人×土屋太鳳×村上虹郎)という若いヤングに確実に売れる要素の組み合わせからは単に再生回数を稼げそうな売れ線ドラマを作ろうという以外の意図は100%感じられないし、日本のNetflix再生数ランキングでは配信が開始されてからこれを書いている今日まで首位をキープしているから、実際それで売れている。売れてるんだから何も一つも間違ってないし、少なくとも興行的には大正義以外の何物でもない。

こうなってくるといわゆる「Netflix作品」というより美術やロケ撮影が多少ゴージャスな日本のテレビドラマかシリーズ化されたメジャー配給のジャンル邦画という感じだが、まぁでも俺も含めて日本のNetflix視聴者層はみんなチープで身体に悪くて子供同士でわいわい騒ぎながら気軽に見られてそして絶対に外れがない代わりに絶対に知った味しかしない駄菓子みたいな作品を求めているようなので、いーんじゃないですか、こういうので。諸々の謎は全部次に持ち越しになったのでシーズン2が待ち遠しいですねー。『幽遊白書』のNetflix実写ドラマも楽しみだナァ。

※土屋太鳳のタンクトップ姿のみ100点満点でした。

【ママー!これ買ってー!】


ドラゴンヘッド(1) (ヤングマガジンコミックス)

でも駄菓子ばっか食ってるとたまには高級ステーキみたいのを手づかみで貪るように食いたくなる時だってあるんです。実写映画版が残念なことになった『ドラゴンヘッド』もNetflixドラマなら原作のエッセンスを損ねずに実写化が可能だと思うのでガキ向けはもういいからこういうのやってくださいよ…!

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