来ましたね二度目の緊急事態宣言! いや~、パニック! これはパニックですよ! パニック! …パニックかと思ったら何この日常感! みんな会社行ってるじゃん普通に!
萎えたわ。萎えましたから映画の中でパニックを体験することにします。俺激選のアマプラおすすめホラー、モンスターパニック編です。
『モンスター・パニック/怪奇作戦』(1970)
直球! あまりにもそのまんまなタイトルのこの映画は内容もそのまんま! モンスターパニックって言ってるのでモンスターがたくさん出てくるぞ! 母星が適当な理由で住めなくなっちゃって地球侵略的移住を企む宇宙人が目を付けたのは地球人の迷信深さ! 宇宙超科学核兵器を使えば人類一掃など簡単なことだが地上が汚染されては移住ができない、ならば古よりのモンスターを復活させて地球人を襲わせようではないか!
いでよ、フランケンシュタインの怪物! いでよ、ドラキュラ伯爵! いでよ、狼男! いでよ、ミイラ男! この四人さえ蘇らせたらもう地球は我々のものとなったも同然だな! わっはっは! わーっはっは! …そうか?!
いやいやすごいよね、なんというかね、この、子供騙しを一切隠さないところ。怖いとか怖くないとかそういう次元の話ではない。モンスターパニックっていうから群衆が逃げ惑うシーンとか想像するでしょう。ないからそんなの。宇宙人が律儀に一体ずつ遺体の在処を探して手術で復活させて復活したその場で蘇ったモンスターがデモンストレーション的に近くにいた人間を一人殺してあとはだいたいモンスター宇宙人のアジトで寝てるから。手抜きにも程があるだろ。
でもね、パニックでした。やはり望まぬ同居生活でストレスが溜まっていたのかアジトにこもってたモンスター4人衆そのうち仲間割れ、一応の主人公も悪役の宇宙人も無視してモンスター同士で勝手に戦うプロレス展開になりました。これは確かにモンスター(が)パニックだ! バカか。かくして地球の平和は保たれましたってそもそもどんな脅威が地球に迫っていたのかモンスター4人しか出てこないので全然わからないのだが、まぁとにかくよかったね! 最後はなんか宇宙人と地球人怪物博士の悲恋みたいになってちょっと切ないという謎エンド。
それにしてもこのフランケンシュタインの怪物は情けない顔をしているなぁ。
『ザ・サンド』(2015)
砂が人を襲います。そう言われてもなかなか想像ができないでしょう。でも砂が人を襲う映画です。砂浜が人を食うので海の家とかからバカな若者たちが出られなくなってしまいました。その一人の黒人巨漢は飲み過ぎてなぜか砂浜に埋まったドラム缶にハマってました。砂が人食うとか嘘でしょえいやと若者が砂浜に足を踏み出すとギャーってなって倒れて血まみれになる。うんこれは確かに砂が人を食ってるな! 安いっ!
要するに原価割れ激安底値版の『トレマーズ』なのだが馬鹿馬鹿しさと怖さのバランスはなかなか技ありの巧さで単なるへっこぽ映画には終わってない。安いは安いが砂が人を食う…食うっていうか接地した面を溶かすような感じなんですけど、その描写は結構陰惨。砂にベローっと皮だけ剥がれてってすぐには死ねないとかかなり厭な死に方だと思う。基本CGですけどゴア描写も案外力入ってますしね。でも、砂なんですけど。
砂砂とさっきから言っているが一応この砂怪物にも正体がちゃんとある。その見せ方もちょっとだけ気が利いていて、砂が人を食うと言えばBCなんかとうに通り越してZ級の彼方に思えるが、アイディア一発には終わらず一応のバトル展開もクライマックスには用意され、予算規模を考えればかなり出来の良いモンスターホラーだったのではないかと思う。あとずっとハマって泣き言言ってるドラム缶の黒人が最高。
『ビッグ・バグズ・パニック』(2009)
50点満点中の50点みたいな巨大昆虫パニック・コメディ。気付いたら甲虫系の謎の巨大昆虫が街を巣に。繭に包まれてあわや食材(もしくは幼虫のおうち)というところをからくも抜け出した主人公たちノーマル属性の会社員はとりあえず巣と化した街から逃げだそうとするのであったが。
怖いというより気持ち悪さの方が強いがまぁそれなりに怖い。昆虫クリーチャーたくさん出てくる。気付かれたらわりと詰む巨大昆虫から隠れながら隠れながらの展開は適度に緊張感あり。で、そこにオフビートなユーモアと定番の軟弱主人公の片思い&男しての成長と…みたいな、まぁだからとにかくこの手のジャンルの最近(つっても11年前の映画ですが)の流行をうまく取り入れたソツのないB級映画って感じですよね。
個人的に好きな映画でも嫌いな映画でもないが、まぁ誰でもそれなりに楽しめるんじゃないでしょーか。
『スタング 人喰い巨大蜂の襲来』(2015)
これもでかい昆虫が出てくるやつ。こっちは予想外に面白かった。展開としては典型的な低予算モンスターパニックで、なんか人里離れた屋敷があってそこでパーティやってる、そしたらそこに巨大蜂来ちゃってみんな屋敷に逃げ込む。後はまぁ蜂の侵入を防ぎながら一人また一人と…みたいな予定調和ですが軽快なテンポが良いし、定番シチュエーションの数々もブラックなユーモアを交えつつしっかり作り込まれているので安心して見れる。
外はさすがに予算的なアレがあるのでアレですがそのぶん屋敷の中をちゃんと壊していくあたりは実に好感の持てるところで、いまどき巨大蜂なんかで誰が怖がるんだよとか思うわけですが、こいつらめっちゃ暴れて壁とか破るし扉も破るし調度品は片っ端からぶっ壊していくのでぶっちゃけ怖い。しかも蜂だから集団で来てるしね。頑張って一匹殺したところで…の絶望感。エグ味あふれる屋敷地下のシークエンスは虫苦手人種にはかなりキツイかもしれない。
基本的にはコメディ・ホラーではあるが、ラストの終末感もなかなかの本格派だった。
『X-コンタクト』(2015)
邦題のXは『遊星からの物体X』のXなので当然そういう内容。なんか北極海あたりを海洋調査かなんかの名目で漁船が航行しておりましたらやばいもんを引き上げてしまった。正体は不明だがこのドロっとした怪生物は人間に寄生するし変形するしどんどんでっかく凶悪な風貌になっていく。『物体X』っていうか『物体X』感もありますがどちらかと言えば深海版『エイリアン』こと『リバイアサン』だねこれは。
監督はハリウッドの特殊メイク屋さんでたまに俳優として出演したり監督したりもしている多彩な人アレック・ギリス。まぁこういうのが好きで業界入った人なんでしょうってなわけで『物体X』とか『リバイアサン』みたいな80年代SFXホラー愛をひしひしと感じるクリーチャー造形が最大の見所。ドラマの方はロシアの工作員とか絡めつつもちょっと弱い。
が、全編漁船の中とかいう極めて限定された舞台の上で疑心暗鬼の『物体X』的人間模様とSFXクリーチャーバトルをやるだけの上映時間82分、人は選ぶだろうが俺は全然楽しめたしかなり好きな映画だった。ランス・ヘンリクセンが出ているのもニクイところです。
『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)
『リバイアサン』の特撮担当といえば大御所スタン・ウィンストンですが、そのスタン・ウィンストンも特殊効果で入った『ジュラシック・パーク』シリーズの個人的最高傑作は『ロスト・ワールド』だと思っているし、近々公開されるとかされないとかいうシリーズ最終章を見てもたぶんそれは変わらないと思う。
『ロスト・ワールド』は最高である。どこが最高ってガチガチに武装した傭兵軍団がですよ、ジョン・ウィリアムズので~んで~んでで~んで~…っていうですね、前作の明るいマーチ風のテーマ曲から打って変わってのドンドコなトライバルビートを採用したダークで重厚なテーマ曲をバックに、孤島で平和に暮らしてる恐竜たちを狩りまくる! もうこのシーンが好きで好きで血湧き肉躍るとはまさにこのこと、前作は「恐竜を間近で見れたらいいな~」の夢を叶えてくれる映画でしたが『ロスト・ワールド』は「思う存分野蛮に恐竜を狩りたいな~」の夢を叶えてくれる映画です。どっちの方に夢があるかは言うまでもないな!
狩る方が野蛮なら恐竜も野蛮の蛮返しをするしかない。恐竜ホラー描写は前作の五割増し、手乗りサイズのちっこい群れ恐竜が集団で人体を肉片にしていく場面はスラッシャー映画もかくやだし、夜闇の中でブチ切れラプトルが逃げ惑う人間どもを一体一体草むらに沈めていく場面は狩る者と狩られる者が逆転して人間の無力に絶望するしかない名シーン、前作でもそのケはあったがスピルバーグの残酷趣味が炸裂しているのはやはりこっちの方だろう。
こっちはね出てくる人が傭兵とかだからバンバン恐竜に食われて死んできますから。前作は女子供がメイン登場人物だからどんなに怖い恐竜が襲ってきても「どうせ難を逃れるんだろ」っていう余裕を感じちゃってたからね。こっちはそういうのない。野蛮人類VS野蛮恐竜の野蛮頂上決戦だ。これは燃える。最後にはティラノサウルスがアメリカ本土に上陸しちゃって大破壊の大騒ぎっていうのも最高だし、『GODZILLA』などなど以降のアメリカ産怪獣映画に多大なる影響を与えたであろうことは疑いえない。その意味でも必見のモンスター・パニック映画の傑作でありましょう。
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『ピラニア3D』(2010)
ジョー・ダンテの出世作をフレンチ・スプラッターの雄アレクサンドル・アジャ が血まみれリメイク。同世代同趣味(なんだと思いますが)のスプラッター新世代イーライ・ロスまで俳優として呼んでオッパイと血いっぱいの俗悪スプラッターフェスを開催だ!
2Dの配信とかDVDとかで見るとあんまそのへんわからないだろうが公開時にはピラニアが食いちぎった男性器が3Dで飛び出すとかいう3Dのいちばんバカな使い方をして当時3D映画『アバター』の大成功で舞い上がっていたジェームズ・キャメロンに怒られた、というイイ話を持つ。
そのエピソードから内容は推して知るべしという感じだが、こちらも名作リメイク企画の『ヒルズ・ハブ・アイズ』で見せたアジャの巧みなストーリーテリングは『ピラニア3D』でも生きており、やっていることはスケTギャルに放水してオッパイが見えちゃったコンテストとか素人ポルノ撮影とか凶悪ピラニアのチンコ食いちぎりとか腕食いちぎりとか全身跡形なく食いちぎりとかろくでもないが、徐々に破局へのピースを埋めていってクライマックスで一気に爆発! というあたり、モンスターパニック映画としてはむしろ王道の風格すら漂う。
多めの登場人物を丁寧にさばきつつ一人一人に見せ場を作っていくのも職人芸、バカとか悪趣味の一言では済ませられない見事なリメイクであった。でも肝心のピラニアがモンスターとして地味なのでなんとなく盛り上がらないんですけど。
↓もっとろくでもない続編もアマプラに入ってます
『クロール 凶暴領域』(2019)
で、そのアレクサンドル・アジャの最新モンスター・パニック・ホラーがこれ。こちらはオリジナル脚本で今度はワニです。ピラニアの次はワニか~。なんか、ハリウッド的にそういうカテゴリーに入ってしまっているのだろうか。熱帯系の動物を使う時はこの監督みたいな。動物ではないが『ヒルズ・ハブ・アイズ』も熱い地方の話でしたからね…アリゾナの荒野の…まぁそんなことはどうでもいいのだが!
『クロール』の話。いや~これはB級傑作でしたね~。B級っても『ピラニア3D』みたいなバカ路線のB級ではなくてガチ路線のB級で、ストレートに怖いし面白い。なんてったって作り方が抜群に巧い。カテゴリーなんちゃらの巨大ハリケーンが迫る中で主人公の競泳選手が取り残されたっぽい父親を探しに避難地域に入る序盤の不穏さ、家の縁の下に潜って身体の自由の利かない状態でのワニとの攻防、縁の下が徐々に浸水していくタイムリミット設定。
刻々と変化していく状況に合わせて縁の下、浸水した居住空間、川と化した道路と舞台を変えていって、その中でワニが増えたり凶暴になったりしていくわけですが、こういう観客を飽きさせないための工夫がよくよく練られているし、でまた崩壊していく状況にあって内なる野生と闘志を解放する人間…というのはアジャ映画によく出てくるモチーフなわけですが、最初はワニから逃げるだけだった主人公の競泳選手も水位の上昇で徐々に人間の限界を突破、ワニと正面からガチバトルを繰り広げるようになるっていうカタルシスもある。
要素要素を切り取るとゲテモノっぽいが最後はなんか感動してしまう。成績が伸び悩んでいた競泳選手が「お前は最強捕食者だ!」とかいう父親兼コーチの激励を受けてワニと水泳勝負、競泳選手としての自信を取り戻す…ってなんか間違っている気がするのだがそれを間違いと思わせないのがアジャのストーリーテリングだ。誰にでもオススメできてホラーマニアでもたぶん納得するジャンル愛と完成度なので、地味にすごい映画である。
クロール ー凶暴領域ー (字幕版)[Amazonビデオ]
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『ROAR/ロアー』(1981)
ここまでいろんな動物とか怪物とかが出てくるホラー映画の感想を書いてきたわけですがそのどれよりもスリリングだったしおそらく今後も超えられることのないモンスター・パニック界の絶対王者はモフモフどうぶつファミリーコメディのこの映画です。ビデオ邦題は『ロアーズ/猛獣一家はおおさわぎ!』。どこが! と思うかもしれないが…。
どうかしている。いわゆるアニマルライツ、動物の権利を守ろうという活動家の監督が撮ったヒッピーっぽい平和な動物愛護映画ですが、その愛護対象がライオンとかヒョウとかトラとかゾウ。別にライオンもゾウも愛護して何の問題もないと思うが100匹くらいホンモノを呼んで放し飼い状態で役者とゼロ距離のコミュニケーションを求めるのは映画の撮影的に問題以外の何物でもない。
監督兼主演のノエル・マーシャルはリアルでもライオンとかを放し飼い多頭飼育していた人らしいのでもうまったく臆することなく家の中にライオン群団を招き入れて好きなだけモフモフするしライオンたちが喧嘩をしていれば仲裁に入ってリアルに血だらけになる。「彼らは遊びたいだけなんだよ、ははは」直後、遊びたいだけのライオンが突進してきてみぞおちに頭突きを食らったマーシャルさんは地面に押し倒されたりするのだがこれ事故だろう普通に。
狂気の沙汰だ。コメディタッチで描かれているがホンモノの大型ネコ科ウン十匹が家を破壊しながら来訪者を執拗に襲う…まぁジャレてるだけなのかもしれないが…こんなシーンは少しもシャレになってない。さすがにマーシャルさん以外の俳優はどうぶつたちと多少距離を取って撮影しているがホンモノの迫力の前ではそんな安全策など安心材料にならないだろ。とにかく全編、怒ったゾウに持ち上げられるシーンとか全力ダッシュのキリンとバイクで並走するシーンとか「よく死ななかったな」以外の感想が出てこないシーンの連続である。
マーシャルさんは本気の人なのでエンドクレジットにはラブ&ピースなフォークソングをバックにアニマルライツの大切さを訴える切実なメッセージ・テロップが流れるがこんな地獄絵図を見せられた後でアフリカのどうぶつを守らなきゃねとか思えるわけないだろう。どうぶつの無邪気な暴力に恐怖し、本気の人の常軌を逸した動物愛に恐怖する映画であった。
『怪怪怪怪物!』(2017)
ある意味『ROAR/ロアー』は猛獣よりも人間が怖いという映画だったわけですがこの『怪怪怪怪物!』は人間こそが怪物なのだという映画。悪ガキ連中がボランティアで介護施設的なところに入って人権蹂躙系の悪戯をしていたら人型だが人ではないらしい謎の女怪物発見。さっそく非公認部室に持ち帰って人型女怪物に悪戯という名の拷問を加えて遊び始める人間のクズガキたちであったがこの怪物はまだ子供、子供ということは親もいるわけで…かくして惨劇が幕を開けるのであった。
台湾映画ですが台湾といえば青春映画の強い国、その特色は俺調べで日本のそれにも似た鬱屈や屈折にあるわけですが、その屈折系青春映画のフォーマットで怪物ホラーをやったらどうなるか? というのが恐らく元々のアイディア。その結果は暗澹たるものであった。どうせ言葉も喋れない怪物だからとクズガキどもは際限なく暴力を行使し、行使すればするほど暴力しか言語を持たない自分の愚かさに自己嫌悪に陥り、そして暴力を誘発する怪物をますます憎む…の悪循環。
事を更に複雑にしているのはクズガキ連中のヒエラルキーであった。とにかくクズガキというのは猿のようなものだからヒエラルキーを作らなければ仲間として他人と関係できない。猿山のボスでいるためにそうしたくなくても怪物に暴力を振るい、ボスに忠誠を示すために下っ端は暴力を賛美し、ヒエラルキー最底辺は底辺エネルギーを怪物にぶつけて暴力のヒエラルキーに亀裂を入れる。こうして危うい均衡を保っていたヒエラルキーは怪物の存在によって自壊していく。怪物が壊すのではなく人間たちが勝手に壊れていくのだ。
クズガキどものクズさに勘づきながらもどうせクズだからと放置しておく無責任教師、どうしようもない家庭環境、何があったか知らないが最初っから感情の死んだクズガキどもの紅一点。ここには救いが何一つ無い。人間は怪物だ。なら怪物の方がむしろ人間的なんじゃないか? クズガキどものヒエラルキーが自壊して、みみっちく閉塞した主人公高校生の世界が一気に反転するラスト、善とも悪とも希望とも絶望ともつかないその黙示録的な(?)光景には思わず言葉を失った。
あ、あとこの映画っていうか台湾映画は総じてレベル高いですが、撮影が非常によかったです。ハリウッドレベル。ブラックユーモアも仄かに香る血の洪水とかトラップを駆使した怪物バトルとかジャンル映画的なケレン味もちゃーんとあって、いやぁこれは傑作だったね~。