《推定ながら見時間:100分》
なんか説教臭い映画だった。舞台は南北戦争終結後のアメリカ南部。元軍人のトム・ハンクスは講談師のようなもので最新の新聞の内容を噛み砕いておもしろい感じに聴衆に伝える仕事をしてる。新聞つっても田舎の方だとなかなか新しいの届かんでしょうしトムハンは「みなさんお忙しいでしょうから私が代わりに…」と口上を述べるがあれみんな文字とか読めないんでしょうたぶん。いわば情報弱者だよね。南北戦争にも負けちゃったし南部の田舎の人たち良いことない。そういう人たちのためにトムハンは町から町へとニュースを手にいや口にして渡り歩く。ネイティブに育てられた白人の娘を連れて。
まぁ、もう、何についての映画かというのは以上の設定だけでわかってしまうので…それは確かに100分もながら見してたら面白いわけないだろそれお前のせいじゃんとは思いますけれどもそれにしたって意外性がなさすぎるっていうかさ、正直もう食傷気味。最近のアメリカ映画こんなの多いんだよ。俺たちが悪かったー! みたいな東部インテリのごめんなさい映画みたいなやつ。アメリカの分断は俺たちにも責任があるんだー! みたいなね。だから俺たちがあなたたちを決して見捨てないし和解できるっていうことを証明しますー! みたいな。
そらそういう態度は立派なことだと思いますけれども何度も何度もそんなの観るこっちの身にもなってよっていうか、白けるのはさ、結局こういうのって東部インテリが東部インテリを批判する東部インテリに観せるための自己批判映画だから作りが真面目なんだよね。つまんない。なんかバカスカ銃撃ったりガンガン人が死んで血がびゃーっと出たりとかしない。すればいいのにねぇ。だってこんなの田舎の情報弱者観ないでしょー。そういう層に観せようと思ったらわかりやすい見せ場たくさん入れないとダメですよ。結局自分たちのためにこういうの作ってんだよハリウッドのリベラル映画作家っていうのは。それで白ける。
とはいえ最近なんだかスピーチ役者としての地位を確固たるものにした感のあるトムハンのニュース講談は安定の聴き心地、監督ポール・グリーングラスのクレジットがにわかには信じがたい静かなロードムービー…も、アンソニー・マンを思わせる地形と高低差を利用した銃撃戦の緊張感はさすがだし、穏やかさと痛ましさの同居するテキサス荒野ののんびり風景も心に響く。ぼく実は西部劇好きなんですよ、銃をバンバン撃たないタイプの人情西部劇ね。あの素朴で雄大な世界、イイっすよね。
だから昔のハリウッド人情西部劇みたいに90分ぐらいにまとまってたら結構好きな映画になってんじゃないだろうか。長いんだよこれ、118分とかあって。長くてしかも生真面目なリベラルの自己批判なわけでしょ。そういうところがダメなんだよなハリウッドのリベラルは。いいよ別に反省とかしないで。変に反省とかしようとするから逆にムカつくんだよ。ハリウッドは単におもしろいだけの映画を作っていればいいじゃない。保守の人もリベラルの人も田舎の人も都会の人もみんながとりあえず楽しめる、みんな一緒におもしろいだけの映画を観る時間を作ることが、政治的分断へのなによりの処方箋になるんじゃあないすかねー。
※「俺はそんな法律認めないぞ!」みたいな講談師に言っても仕方がないだろブーイングにクソリプの元型を見る。そういうところは(も)ちょっとおもしろい。
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コズミック出版のクラシック映画10本1500円ぐらいシリーズは映画ファンのたからもの。この中に収録されている『キャトル・ドライブ』という映画は子連れロードムービー西部劇で、これが嫌味がなくてイイんだよなぁ。