大人の映画感想『劇場版 ポリス×戦士 ラブパトリーナ!~怪盗からの挑戦! ラブでパパッとタイホせよ!~』

《推定睡眠時間:0分》

三池崇史が総監督を務める女児向け戦隊シリーズの第四弾の劇場版だが前シーズンの劇場版『ひみつ×戦士 ファントミラージュ! ~映画になってちょーだいします~』は撮影自体は新コロ禍以前に済んでいたようだが劇場公開が新コロ直撃、ガールズ戦士たちのお歌シーンになると画面右下なんかに応援振り付けのワイプが入るので本来ならばそこで想定客層であるところのお子様たちが歌って踊って事前にパパママに買ってもらった応援用オモチャとか振って画面の中のファントミちゃんたちを応援!

…と実に賑やかなお子様マサラ上映になったのであろうが生憎の新コロ禍ということで「応援は心の中でしてね!」と注意テロップが入りお子様たちもし~んの台無しっぷり。むろん映画が悪いのではなく新コロが悪い。いや、平和を愛するガールズ戦士の映画感想でそういうことを言うのはよくないし新コロだってあいつ人間を殺そうと思って蔓延してるわけじゃないからな。自分で複製作れないから他の生き物の身体を嫌でも命がけで借りるしかないと考えればそれはそれであいつも大変なんだなってなるよ。種の保存ができない生物は存在しちゃいけないと考える某自民党右派政治家ならきっと新コロくんの生存戦略を応援して…やめろよそういうの! こども映画の感想で時事を出してくるな! でもガールズ戦士をたのしく観ているみんなはそんな阿呆な大人にはならないから大丈夫だよね!

で、前作はそういう映画だったんでお祭り的な多幸感があったわけです。こども映画と侮ってはいけない、映画作りをテーマに先代ガールズ戦士ファントミちゃんたちが太秦映画村を訪れるという内容で映画愛いっぱい前のめりなギャグいっぱいアクションも歌もいっぱいあって人ももちろんいっぱい出てきたのでたいへんよかったのですが、新コロ禍だからねぇ~、今回は。もう目に見えて苦しかったですよ

とにかく密ったらやべぇっていうんで人が呼べないし呼んでも大がかりなモブシーンみたいなのは作れない、撮影地は角川武蔵野ミュージアムとどこかのテーマパークと屋内セット、どこかのテーマパークといってもエキストラなどは一切入れていないし他のシーンでも基本的には今回のガールズ戦士であるパトリナちゃんと数人の俳優が出るだけで、おそらくソーシャルディスタンスを意識して距離を取って芝居をしているし、会話時も顔と顔が向き合わないように角度を付ける徹底っぷり。

歌シーンのひとつでは何の説明もなくパトリナちゃんの一人が抜けているが、これたぶんなんらかの事情で現場来られなかったんでしょう。それぐらい、かなり苦しい撮影だったであろうことが画面の端々から感じ取れるわけです。

さすがにここまで苦しいとキッズ大人の俺としては映画の裏側にばかり目と思考が行っちゃって純粋に楽しむことはできないが、それでも観終わった後は新コロ禍の憂きをだいたい40分ぐらいは忘れさせてくれたので楽しい映画であったことは確かだ。新コロ禍を逆手にとまでは言わないが三池崇史といえばVシネ出身の職人監督であるから状況に合わせて臨機応変に対応できる人、比較的王道の娯楽映画だった前作に対して今回は悪ノリ半開のサイケデリックでアヴァンギャルドな面白さがあった(それは臨機応変と言えるのか?)

なんか、よくわかりません。美術館のラブダイヤ的な感じのお宝が悪党に盗まれるのをみんなのラブパトリーナが阻止するわけですがなんでそういう展開になったのか不明な場面多数。ラブダイヤを盗んでパトリナちゃんたちから逃げる悪党が美術館の食堂に入ると突然思いつく。胃の中なら奪い返せまい! よし、食べちゃおう! ナイフとフォークでジョキジョキとダイヤをカットしてモグモグと食べてしまう悪党だったがダイヤは食べ物ではないのでおなかを壊してその場で七色に輝くウンを出すとウンがワルダイヤに変身してパトリナちゃんたちに襲いかかる。

今回のゲストキャラは柳沢慎吾です。俺にとっては哀川翔の舎弟的なポジションで出演した『新デコトラの鷲』に続いて映画館で観るの今年二度目。インターポール捜査官役の柳沢慎吾をパトリナちゃんたちに引き合わせるレギュラー刑事の役名は愛川警部(哀川翔と何度もタッグを組んでいる三池の遊び心でしょうな)なのだから不思議な縁もあるものだと思うが、その演出はもっと不思議で子連れ狼パロディ。いつも三途の川の乳母車に子供を乗せて現場に向かうがなんで子連れ狼なのかわかんないしこの子供がとくに何もしない。なんだったんだ! 「俺は仕事ばかりで息子の相手をしてやれなかった…だから息子にもラブを見せたい」とか言われても。

もっとも、このノリは新コロとかあんま関係なくテレビ版からしてそうだったのかもしれず、パトリナちゃんたちは指令を受けると「パ~ト~パ~ト~」と言いながら柳沢慎吾のパトカー芸っぽく手首を動かして現場に向かうのであったが「それで行くの!?」と地味に衝撃を食らう俺とは対照的に客席に点在するキッズたちは実に冷静であった。お前らいつもなに観させられてるんだよ三池に。

前シーズンではCGだったキュゥべえ的な導きファンタジー生物は今回マペットになっているがあえての選択であろうからマペット感を全然隠そうとしない。逆にというかテーマパークでの着ぐるみボス(土偶)との対決ではパーク内を燃やすわけにはいかなかったのかボスの吐き出す火炎弾と爆炎をCGピクセルで表現。その攻撃をかいくぐって柳沢慎吾がボスに捨て身の突撃! パトカー芸をやりながら! なんでだよ! その光景を無駄に手間暇かけてスローモーションのトラック撮影で捉えているのでどうかしている。

なんともアシッドな映像世界だがそのカオスっぷりにも関わらず、というかカオスだからこそ逆にというところもあると思うが、先代ガールズ戦士のファントミちゃんたちが窮地に陥ったパトリナちゃんたちを助けに現れる場面にはちょっとだけ感慨を覚えてしまった。ファントミ映画が去年公開ということは撮影は2019年、そこに映っているファントミちゃんたちの姿は二年前のもののはずである。この二年が超でかい。俺の中ではファントミ映画から姿形が更新されてなかったので二年の間に成長したファントミちゃんたちを見て「大人じゃん!」とか思ってしまった。

育つね~子供。たった二年でこんなに大きくなるんだね~。で感慨にふけっていると歴代ガールズ戦士までも(合成で)登場。初代を演じた人とかはもう成人してるかしてないかぐらいでしょうからこれはもう完全に大人です。なんかいいなそういうの。この見守ってる感じ、繋がってる感じ、一人じゃないよという感じね。知らんけど男の子戦隊ものは先輩後輩であんまりこういう柔らかい関係性ってないんじゃないですか。一緒に戦うとかはあるかもしれませんけどこれはそういう感じじゃないからね。

全員集合の図にこれでガールズ戦士も終わりなのかなと一瞬思ったが次の代もチラっと登場、ガールズ戦士は続くよどこまでもということで今はまだキッズなパトリナちゃんたちも次のガールズ戦士映画にゲスト出演する時にはすっかり声変わりしているんだろう…泣けるナァ! なにか、混沌の中にガールズ戦士のひとつなぎの過去・現在・未来が現れることで秩序が生まれる感じがあって、そんな風には子供たちは絶対観ないと思うが…リアル世界の方もギンギンに混沌としてる中ではその秩序の顕現が神話的な光を帯びてしまう。

三池映画には神話的なイメージが時折顔を出すのでこれもある程度は意図したことなのではあるまいか。輝いていたね。この映画、愛と希望と絆とあと神話的な生命の連鎖、その輝きでキラキラしてました。そのキラキラって映画作ってるタカラトミーがオモチャを売りたいからやたら画面にオモチャが出てきて光ったりしてるからじゃないですかと冷静な方の俺は言っているがそんなことはわかってるんだよ! 大人なんだ俺は!

わかった上で! 新コロ禍に観るガールズ戦士映画はたいへんよかったという話なんだ! やっぱこういう無邪気で明るい映画は定期的に観なきゃいかんね。おならネタ、ウンチネタでお客を笑わそうとするような…いやさすがにそれを笑えるほど無邪気にはなれないけれども。

※終盤に出てくるMV的歌シーンは『ブレードランナー2049』のオマージュになっており、なんでそこで…? とは思うが、三池はちょくちょく『ブレードランナー』オマージュを自作に入れてくるのでどうやら好きらしい(意外)

【ママー!これ買ってー!】


劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ! ~映画になってちょーだいします~ [Blu-ray]

これを観に行った頃は次のガールズ戦士映画まで新コロ禍が続くとは思ってなかったね。観に行くとも思ってなかった。

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オギャ
オギャ
2021年5月29日 8:22 AM

MVも女の子たちも非常に元気いっぱいかわいさ満点でよかったです。
終盤のMV、本当にブレラン2049風でなぜ…?と思いました。三池が楽しいならよいのですが…。

某アポロな菓子箱を使った無線芸といい、ちょっとした挙動といい、柳沢慎吾があの世界観に全く違和感なく溶け込んで、とてもよかったです。極道大戦争の背景に散らばる無数の謎日本語と同様、「いんたぽーる」ののぼりが映り込む度に心地よい脱力が起こり、癒やされました。

名無しのサブカルオタ
名無しのサブカルオタ
2021年7月10日 1:31 PM

>歌シーンのひとつでは何の説明もなくパトリナちゃんの一人が抜けているが、これたぶんなんらかの事情で現場来られなかったんでしょう。それぐらい、かなり苦しい撮影だったであろうことが画面の端々から感じ取れるわけです。

〇×△の事?
だったら社員加入前のED映像ですよ。