家族って大変映画『レリック 遺物』感想文

《推定睡眠時間:5分》

気鋭の映画会社A24最大の功罪は家族ホラーというジャンルを切り拓いたところにあると思っていてこれは反家族主義の俺からすれば家族はこんなに人を追い詰めるものなんですよ怖いですねと呵責なく描いてくれている点でビッグ功績なのだがジャンル映画主義の俺からすれば家の中で家族同士ごちゃごちゃやってんじゃねぇよどうでもいいわお前らの葛藤とか! のビッグ罪悪なのである。でこれもそんなA24的な(的なであってA24映画ではない)家族ホラーの一本。

家族ホラーって家族の葛藤の中に恐怖を見出そうとするからどうしても映画がせせこましくなるんだよな。そのせせこましさがないと家族ホラーはほとんど成立しないわけだから広げようもなく。これは認知症のお婆が忽然と姿を消して娘と孫が探しにお婆宅にやってきたらなにやら怪異に襲われて…という話なのだがぶっちゃけアンソニー・ホプキンスがオスカーを手にした今年の話題作『ファーザー』と基本的には同型の話であり、その性質上作品世界を広げられない家族ホラーは題材が一致してしまえば(この場合は認知症)どうしてもこんな風に他の作品と似通ってしまう。そうなると、飽きる。

別にこの映画も不穏な空気の醸成とかは悪くないと思ったけどさ。認知症の進行を人間の怪物化として、認知症患者の見る世界を家の迷宮化として、寓話的に見せていくわけですが、寓話であるからにはどんなに表面的な変化があっても(それも大してないのだが)物語の内容や意味の面でそう飛躍することはない。不穏な空気だけがダラダラと続いて大したことが起きないというのは認知症患者や認知症患者を在宅介護する家族の感じるリアルな恐怖なのかもしれないが、それを突き抜けるものが欲しいよな~とかどうしても思ってしまう。

家が怖いっていうお話なら台所の包丁がびゅんびゅん飛んできて全身細切れ! とかやればいいのにね。でもそうなると認知症患者の恐怖ってそんなんじゃないだろってなるわけでしょ、この映画の場合は。あくまで真面目に認知症と向き合って小手先のオモシロには決して走らないっていう点では誠実な映画と言えるのかもしれないですけど、いいよ~そういうのはもういいって~それこそ『ファーザー』観ればいいじゃな~い。って感じですよ俺は!

最後らへんとかイイ話だなぁって思ったけどさ。イイ話からの落としでタイトルの「遺物」が真に意味するものが明らかになるのも巧いですよね。結局われわれは家族を抱えて生きていかなければならないしそれは認知症を含む各種の病気や老化現象と生涯付き合わなければならないということなのです。その意味では家族ホラーの本質がある映画だよな。でも本質が映画として面白いかどうかはまた別の話なのだ。

【ママー!これ買ってー!】


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それにほらタイトルの響きから連想しちゃうものってあるじゃないですか。俺の世代的にはやっぱ『レリック』といえばこれですよ。『レリック』『ミミック』『ザ・グリード』のモンスター・ホラー三点セットのイメージが記憶にこびりついているので…セットか?

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