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アカデミー国際長編映画賞とかいうあまり馴染みのない賞に関しては監督トマス・ウィンターベア×主演マッツ・ミケルセンの知名度でもらったようなもんだろどうせアカデミーそういうところ適当だしなと思っていたがなんとゴールデングローブ賞の外国映画賞にもノミネートされセザール賞の外国映画賞に至っては受賞しているらしい。
ええっ。…この内容で? いや別につまんない映画だとは思いませんし良質なホロ苦喜劇ではあると思いますけど賞とかそういう次元の映画かなこれは。なんか植木等の無責任男シリーズのちょっとカタい版みたいなもんなんじゃないのこんなの。無責任男おもしろいですけどそれ観てこれはアカデミー賞ものだー! っていう方向に感極まったりはしないだろ普通。なんでこんなにちゃんとした感じの賞に絡んでるのかよくわからんぞ。酒呑みまくったら人生うまくいく(かも)って映画なわけだからこれも酒のおかげなのだろうか…。
お話はなんか冴えない教師連中が平日日中から酒飲むようになったら楽しくなってきて人生好転、と思いきや酒の力でなんでも解決するわけじゃないし酒の悪影響というのもあるのでまー人生こんなもんだよねーっていうお話でした。うんそれは知ってるかなり知ってるかなり知ってるからその先が見たかったっていうのはちょっとある! っていうかそんな言うほど酔ってねぇし!
遺伝子なのかな。日本人はアルコールの分解酵素が欧米人に比べて少ないと言うが、とすればこの映画ぐらいの酔いっぷりでも欧米基準ではドラマティック泥酔なのかもしれない。そういえば『シャイニング』のジャック・ニコルソンもアル中設定だが日本の人間崩壊アル中の皆様方の醜態からすればあんなものはもはや紳士であった。ちゃんと斧でドア突き破っても明瞭な発声で「こんばんわー!」って挨拶するぐらいだもんな。日本の泥酔アル中だったら「ぼんふぁがああああ!」とかになるしそもそも斧をまともに扉に当てられない。ふふふ、さすが日本人だレベルが違うぜ。なんて情けない民族マウンティング!
いや、でもね、ちょっと沁みる映画ではありましたよ。やっぱ誰しも人生が思うように回らなくて酒の力を借りたい時ってあるじゃないですか。俺はビール一杯飲んだだけで心拍数は倍増して猛烈な偏頭痛は一時間は止まず嘔吐は何度してもし足りない、という急性アルコール中毒で死ぬ一歩手前まで行く劇的虚弱人間なので酒で酔うということができずしたがって酒に逃げることができないが、それでも酒のみてーなって思うことはありますよ。最近とくにそうだねなんか急に寂しくなってきてさ。まぁ季節性のものなんだけれども…この夏から秋への移行期の憂いを帯びた空気がな…いや、そんなことはどうでもいいのですが!
案外マッツの演技はここではそう魅力的でもないしトマス・ウィンターベアの演出もマッツとのコンビ作『偽りなき者』で見せたあの迫真性はどこへ行ったんだというぬるいもので、これはシリアスなコメディを狙ったためではあろうが、とはいえそれで別に笑えるわけでもあんまりないし、そりゃコーチの「水」のくだりとか試験前に生徒に酒を飲ませる教師とか笑えるところはあるけれども、それはあくまで表面的な滑稽さで深みを欠くし、展開は凡庸で起伏に乏しい、全体的にはそんなに面白いわけではない。比喩とか台詞回しもなんか安直じゃないかな。
それでも映画冒頭のなぜ新コロ対策として(集団客への)酒の提供中止が必要なのか大変残念ながらめっちゃわかりまくってしまう学生酒乱パーティの笑えるクソっぷりとか、昔は得意だったダンスが加齢と共に臆病になったせいで今はなかなかできなくなって、でも色々あった末に胸の内にしまいこんでてもしゃーねーやって感じでダンスを解放するマッツ、とかそういうシーン単位では良いシーンも結構ある。マッツら親友四人組がレストランで飲みながら会食していると最初は冷静だったのに段々と声がでかく態度もでかく席から立ち上がって余興をしたり…とリアルタイムで酔っ払ってくところとか面白かったよな。でもそこには完全ゼロの酒適性ゆえ加わることができない俺としては面白く感じると同時に引いたりもしているのですが。
※ただしあまり表面には浮かび上がらない仄めかし程度の皮肉の数々は注意深く拾っていきたいところで、歴史教師のマッツは真面目に授業をしているのだが真面目すぎて生徒に人気がなく生徒も学習意欲が湧かない、ということで親たちが学校に乗り込んできて「受験が近いんですから先生もっとちゃんとしてくださいよ!」とかいう(いやテメェのガキが授業聞く気ねぇんじゃねぇかよ…)な若干理不尽クレームをマッツ先生に食らわせて、ほいじゃあ酒を飲んで陽気な感じで授業やったろかいということで真面目で詳しい授業は放棄、ノリが良くて楽しいが学習内容的には当然ノンアル時より薄い授業をやったところこれが大好評で…というあたりなんかはわりと毒気のある社会風刺と言えるかもしれない。
【ママー!これ買ってー!】
世界よこれが日本の醜悪な酔っぱらいだということで日本のおとうさん的な役柄の多い笠智衆が酒をガブガブ飲んで醜態をさらす我が心の巨匠・渋谷実の監督作。なんだかたのしそうですがテイスト的にはアメリカ時代のフリッツ・ラングのノワールみたいな出てくる全員が悲惨な目に遭うわりと笑えないひとでなし喜劇です。そこが最高。
宣伝の割に地味目な映画ですよね。そんなたくさん賞とってるとは、びっくりですよ。
しかし、この映画はミッドライフクライシスがテーマとなってるっぽいので、現在の映画文化を支えている層が高齢化しているおり、ゆえに刺さったのかもしれないな~とも感じます。
ラストのダンスすごかったですが、マッツ・ミケルソンてもともとダンサーだったんですね。彼の魅力でこの映画は底上げされてますよね。
アカデミー賞もアカデミー会員の高齢化が進んでるので老後テーマの映画を撮るとウケて賞を貰えるなんて話もあるぐらいですもんね。そういうのはあると思います。
マッツ、いやに動けるなと思ったらダンサーだったんですか!それは知らなかったです。ダンサー俳優といえばクリストファー・ウォーケンがパッと浮かぶんですが、そういえばなんとなく雰囲気が似ている笑 マッツとウォーケンの共演なんて観てみたいっすね〜
こんにちは。
この主題歌が気に入って何度もアナザラウンドしています。(エア)酒瓶持って踊ってます。
ある映画評論家さんが、「93回アカデミー賞の国際長編映画賞ノミネート作品は粒揃いですね」なんてSNSで仰ってたので、ふーん、と思って調べたら、自分は本作含め三作品観てました。おおっ。未見の二作も楽しみです。(貴レビューはあと一作品!期待)
この主題歌を歌ってるコが、マッツさんの娘さんの同窓生で、若い頃酔っ払ってたのを家まで送ってあげたとか(ホントかな?)。だとしたらデンマーク映画界ってなんてドメスティックなの
クリストファー・ウォーケンも踊れる人なんですねー。『ディア・ハンター』好きだ…(踊ってないけど)。
狭いなー!デンマーク映画界!でもそう言われてみればなんとなく親密感のある映画というか、見知った連中で和気あいあいとやってるような感じありますよね。そこ面白かったな。
ウォーケンのダンスは10年ぐらい前にファットボーイスリムのMVに出て話題になってました。ダンサーの素養を感じさせる動きで結構すごい。あと改めて見るとちょっとだけアナザーラウンドのラストシーンっぽい笑
https://youtu.be/wCDIYvFmgW8