極私的・映画ドラえもんランキング!(旧映画ドラえもん編パート1)

映画ドラえもんのランキング記事はいつか書こう書こうとは思っていてなかなか手が付けられなかった。いや、だって映画ドラえもんですよ。そりゃ俺は子供の頃に劇場で旧映画ドラえもんを見ていたとはいえ本格的に見始めたのは二十歳を過ぎてからっていう映ドラネイティブというにはうーんみたいな半端な映ドラファンですけど、逆にっていうかだからこそっていうか映ドラを神聖視してるようなところあるからね。一時期毎日見てたもん映画ドラえもん。帰ったらご飯食べながら何度も観た映画ドラえもんをとりあえずテレビ代わりに再生して何か他の作業をしている間もBGM代わりにして流しっぱなしっていうそういう生活を送ってましたからね。選べないないでしょおいそれとは。まぁ別に選ぶか選ばないかは俺の裁量なんだから選べなかったら選ぶなよという話なのだが!

で、選ぶのはいいんですけど俺は世代的に声優一新前の「旧映画ドラえもん」ばかりを観てるんで一新後の「新映画ドラえもん」も含めてランキングにしちゃうとぶっちゃけ超つまんないっていうか不平等感が出る。そんなもん旧映画ドラえもんが全部ランキング上位を占めてしまうんで。なので、旧映画ドラえもん全25作(短編・中編除く。それはまた別のランキングにする)をまずはランキングにして、それから新映画ドラえもんだけのランキングを作ろうと思う。ってなわけで今回は旧映画ドラえもん編の25位~11位まで。だが忘れるな! これはあくまでも「極私的」ランキングだ! まぁ俺なりに可能な限り公平な感じの順位付けを心がけたが当然偏りはある! それに映画ドラえもんは本来すべてがオンリー1かつベスト1だ! こんなものは戯れに過ぎない! そのことを頭に暗記パンで叩き込んだ上で読んでね!

25位『のび太の南海大冒険』(1998)

栄えある最下位はF先生没後の旧映画ドラえもん後期、別名芝山ドラ(監督がすべて芝山努のため)の第一作目というわけでいや別に嫌いじゃないし面白い映画だとは思いますが! まぁやっぱネタ切れ感というかネタ無し感というか、言うまでもなく映画ドラえもんの核心であったF先生の離脱はシリーズに甚大な影響を与え、何を描いていいのかわからないというスタッフの困惑が『南海』には痛々しく刻まれている。芝山ドラがその答えをアクションとエモーションに見出すのはもう少し後のことで、これはまだ芝山ドラのプロトタイプ。旧映画ドラえもん前期で何度も観たような場面や展開や秘密道具をひたすら繋ぐだけの塩辛い作りだが、それでもストーリーの退屈さやキャラの魅力のなさを芝山印のアクションの面白さがだいぶそうとう補っている。


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24位『のび太の恐竜』(1980)

この順位にマジかよテメェなんもわかってねぇな! と怒りのあまりラップトップPCを壁に投げつけておかあさんにすごく怒られるキッズ大人もいるであろうが、まぁでも本来こんなもんだと思うんですよね、『恐竜』の順位というのは。なにせ映画ドラえもん記念すべき一作目なわけでシナリオも演出もこなれてない。もちろん恐竜大好きF先生的には入魂の一作だったとしても、その後『日本誕生』や『竜の騎士』で部分的に語り直しを試みているように、やはりF先生としても出来に相当不満はあったんじゃないだろうか。ピー助はかわいいし公園の噴水で水棲恐竜を育てるセンス・オブ・ワンダー、恐竜時代の素朴な旅行的大冒険は魅力も、こちらも今観ればプロトタイプの印象が強い作品。


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23位『のび太と翼の勇者たち』(2001)

俺これ好きなんすけどね。順位的にはこれぐらいですけどある意味芝山ドラで一番面白いんじゃないかぐらい思ってて、っていうのもシナリオが支離滅裂でやたらテンションが高い! 片っ端から面白そうな要素を詰め込んでそのどれもが有機的に結びつかず起承転結の起だけがズラズラ並んで唐突に結が来るような映画なのだがとにかく勢いがあるのでわけがわからないまま最後まで見入ってしまう。ポッドレースもかくやの鳥人間レースの迫力、たまに出てきてピィと鳴くだけのスネ夫の雛のシュール、ビッグゲストとしてなぜか担ぎ出された森繁は高齢のためか台詞が完全棒読みで、とはいえありがたいその台詞を登場人物たちが全然聞いておらずのぶ代ドラは台詞を遮って話を進めてしまう! 試行錯誤と書いて迷走と読む芝山ドラらしさが存分に発揮された怪作だ。


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22位『のび太の宇宙漂流記』(1999)

芝山ドラの特徴としてお馴染みのキャラクターの芝居の白々しさっていうのがあって、単純にシナリオが悪かったのかそういう方針だったのか、のび太たちが画面の中に生きているって感じがしなくてのび太たちが自分の役を画面の中で演じてるっていう気がしてしまう。そこにドラえもんの「ちゃんとお片付けしようね」みたいな教育的配慮の行き届いた台詞が乗ったりするものだから率直に言って白けてしまうんだよな。『宇宙漂流記』はその典型なのだが、そこにさえ目をつむれば宇宙を舞台にしていることもあって芝山監督のアクション演出は冴え渡り、チャイルディッシュな宇宙怪生物の数々や宇宙船デザインもクラシカルなパルプSFを思わせてなんとも愉快、それに映画ドラえもん第20作目を記念してのスペシャルなオープニング映像が眼福! と、実にたのしい一本なのです。


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21位『のび太の宇宙開拓史』(1981)

『宇宙漂流記』のサンプリング元と思しき西部劇編『宇宙開拓史』はF先生の原作・脚本作なので『宇宙漂流記』と比べると(比べるのも酷だが)シナリオの完成度がまったく違う。身近な問題をSF的なパースペクティブで捉え直すことで思いも寄らない方向に物語が転がっていくダイナミズム、異文化の客との偶然の出会いの驚きとあくまでもリアルに構築された異文化世界のすこしふしぎな面白さ、それを通して間接的に地球人類の問題が描かれる風刺性、そして異文化の危機にのび太たちが立ち向かうスペクタクル…といった旧映画ドラえもんの諸要素が劇場版2作目にして既に完成されていることに驚かされる。悪役のギラーミンは映画ドラえもん屈指のカッコよさ。野球スキルを駆使して地上げ宇宙人と戦う発想もたのしい。芝山努監督就任以前の西牧秀夫監督作であり、当時の流行り(?)を意識してか多少サイケデリックな味付けがされているところも隠れた見所。


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20位『のび太の太陽王伝説』(2000)

芝山ドラの中ではおそらく最もシナリオのまとまりがよく、また美しい作品でもあることから人気が高いらしいのだが、俺はそんなに乗れなかった。アクションとエモーションという芝山ドラの二大柱のうちエモーションが開花した作品で、乞食王子の童話をベースに身勝手王子らゲストキャラ陣とジャイアンを中心としたレギュラー陣の心の機微と成長をしっとり描いた展開は安田祥子&由紀さおり(作曲は大江千里)のテーマ曲も相まって感動的なのだが、SFのFはあってもSが少ない…。ドラえもんの活躍もあんまりないしぶっちゃけこれなら映画ドラえもんでやらなくていいじゃんとか思ってしまう。童話の映画としては見事なんですけどね。マヤ・アステカをテーマにした美術は見物。


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19位『のび太とふしぎ風使い』(2003)

これも好きな人が多いんだよなー。それもわかりますけど『太陽王伝説』で限りなくFに近づきつつもギリでSFに留まっていたところが『ふしぎ風使い』ではSを完全放棄して純粋なファンタジーになっちゃってそれはもう映画ドラえもんじゃないよって俺は思う。とはいえ後の新映画ドラえもんに見られる諸要素、マスコット的で可愛いゲストキャラとか理屈よりエモーションで問題を解決する姿勢とかキャラクターをぐねぐねとよく動かすドタバタ的なギャグとかが既にこの作品に出てきてて、新映画ドラえもんのプロトタイプとして興味深く観ることができるし、映像的にも風の表現をはじめとしてアニメーションの快楽が詰まってる(万華鏡のようなタイトルバックは必見だ)。相変わらず展開は粗雑で台詞は白々しくキャラクターには生気がないが映画ドラえもんだと思わなければ見事なアニメ映画じゃないかと思う。


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18位『のび太とブリキの迷宮(ラビリンス)』(1993)

いくぶん順位が高めなのだが実は旧映画ドラえもん前期(Fドラ)の中では一番苦手な作品で、これなんか陰気なんだよな全体的に。電流拷問されて死ぬドラえもんとか、闇に包まれた地下迷宮とか、宿泊客のいないがらんどうのホテルとか、ゲストキャラの人間は表情がずっと暗いしブリキのロボットは気持ち悪いし、だいたい冒頭に出てくる放送を終了したテレビの砂嵐から浮かび上がる謎のリゾートのCMだって…怖いよ! 怖い怖い! わくわくするところが全然ない! でもそれがこの作品の強烈な個性になっていて、97年の児童アニメにしてコンピューターウィルスが物語のキーとして出てくるなど、SFのSが突き出した異色作となっております。いーとーまきまきいーとーまきまきの大合唱は一度聞いたら忘れられない!


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17位『のび太のねじ巻き都市(シティー)冒険記』(1997)

この作品の評価を難しくしているのはやはり原作がF先生の絶筆という点で、執筆途中に亡くなっちゃったため残りはアシスタントらが推測して完成、いくつかのアイディアは構想メモに残っていたとはいえオリジナルの『ねじ巻き都市冒険記』がいったいどんな展開を見せたのかは今となってはわからない。その原作を基にした映画版は面白ガジェットや面白キャラ&かわいいどうぶつとSFアイディアがワンドスクリーン・バロックばりにテンコ盛りで楽しめることは間違いないのだが中盤以降の失速が激しく妙にこじんまりとまとまってしまった。F先生が全編描き上げていれば…などと言ってもしょうがないしこれをなんとかまとめたアシスタントの仕事っぷりには敬意しかないのだが、なまじ中盤までのテンションが高いだけにそう思わずにはいられない。とはいえ、『アニマル惑星』以降F先生が映画ドラえもんで取り組んできた「この世界を創造したとされる神とはなにか」の未完の集大成として、やはり見応えはある。


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16位『のび太の大魔境』(1982)

旧映画ドラえもん初期は作品毎に物語の中心となるキャラクターを変えていて『宇宙小戦争』ではスネ夫、『鉄人兵団』ではしずかちゃんが大きな役割を果たすが、その手法を初めて取り入れた『大魔境』はジャイアン大活躍編。ジャイアンの身勝手、強情、でも案外メンタルが細いところや友情に厚いところまで余すことなく描かれて、笑わせてくれるやら泣かせてくれるやら。旧映画ドラえもん初期らしいコミカルで波瀾万丈な冒険譚から異郷での戦争への転換の意外性、ゲストキャラのワンちゃんの可愛さと気高さの同居する造型の面白味、巧みな伏線の活きるラストの鮮やかさなど、旧映画ドラえもんを構成する様々な要素が高いレベルで融合して見所いっぱい。


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15位『のび太とロボット王国(キングダム)』(2002)

芝山ドラの中ではもっともFドラに近づいた作品。芝山ドラらしいアクションシーンを随所に配しつつもあくまでも「人間とロボットの共存は可能か」をテーマにしたSFストーリーを語ることに意欲を見せた結果は意外性こそないものの絶妙なバランスでアクションとストーリーテリングが両立しており、芝山ドラの中では例外的にキャラクターの芝居に白々しさがない点も素晴らしい。ロボットコロシアムでのひみつ道具を駆使したドラえもんバトルはワクワク&ハラハラ、クライマックスには巨大ロボバトルも用意されてサービス満点、小錦の歌う主題歌も暖かみがあって映画ドラえもんの世界観によくマッチ!


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14位『のび太と銀河超特急(エクスプレス)』(1996)

メンデルスゾーン「真夏の夜の夢」のメロディに乗せて旅客列車で宇宙に旅立つ瞬間の高揚感は旅行や冒険を数多く描いてきた旧映画ドラえもんの中でもおそらく一番、子供の頃に旅行というものに抱いていた気持ちをまざまざと思い出させてくれる。中盤からは舞台を宇宙の果てのテーマパークに移しオムニバス的な構成でTV版ドラえもんの特番回のような小さなエピソードを繋ぎつつ『ウエストワールド』的パニックへとなだれ込んでこれはこれでオモチャ箱をひっくり返したようなワイドスクリーンバロック、敵の存在感が薄くバトル展開が今ひとつ盛り上がらない欠点はあるものの、多幸感のある娯楽編として大好きな一本だ。「昔もん」「バッタ!バッタ!待った」などなど名(迷?)台詞もたくさん!(海援隊の主題歌も最高)


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13位『のび太とアニマル惑星(プラネット)』(1990)

旧映画ドラえもんのターニングポイントといえる密かな重要作。この作品からFドラ後期の主テーマ「この世界を創造したとされる神とはなにか」が作品を横断して様々な角度・深度から考察されることになる。喋るどうぶつたちとそれを憎む人間(ニムゲ)の対比は絵柄は可愛くも鋭い社会風刺となっており、ピンクのもやの中にのび太が迷い込む導入部や静まりかえった無人のどうぶつタウンなどが不気味さを帯びる一方で、童話パロディに溢れたどうぶつ社会の日常描写は牧歌的でユーモラスであるなど、怖いもの・難しいものと可愛いもの・易しいものが交互に押し寄せてくるのが面白い。ゴリラ船長とジャイアンのやりとりは必見。


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12位『のび太のパラレル西遊記』(1988)

F先生の病欠により原作なしという緊急事態に脚本家・もとひら了が一世一代のファインプレー、映画ドラえもんらしさを崩すことなく旧映画ドラえもん屈指のSF冒険アクション編のシナリオに仕上げた。その功績を讃えるべくかどうかは知らないがもとひら了は学芸会を控えたのび太のクラスの「脚本家」として劇中に登場までする。変容した世界のおどろおどろしさと緊張感、パズルのピースがパチパチはまっていく構成の気持ちよさ、加えて今回は総力戦の観もあり先生に出木杉くんにパパにママにドラミちゃんもしっかり活躍、妖怪軍団とのとんち合戦には膝を打ち恒例の「のび太の夢」には笑わされ、ひたすらたのしい一本。ロック調の主題歌もかっこいい!


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11位『のび太と夢幻三剣士』(1994)

おそらく『ダイの大冒険』の影響がかなりダイだと思われるF先生版『ドラゴンクエスト』、もしくは『パラレル西遊記』『魔界大冒険』のセルフマッシュアップ。アクションファンタジーとして面白いのは当然のことだがこの作品の真骨頂は現実世界と夢の世界を行き来するシナリオで、現実と夢を何度も反転させつつ意味深な台詞を断片的に散りばめることで今見ている光景は夢なのか現実なのかという謎を観客に提起する。謎を無視しても楽しむことはできるだろうが、その意味で少しだけ対象年齢層が高い映画ドラえもんかもしれない。観客を夢の迷宮に誘う衝撃的なラストは実は原作にはない映画オリジナル。


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極私的・映画ドラえもんランキング!(旧映画ドラえもん編パート2)に続く!

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あるひと
あるひと
2022年4月22日 3:19 PM

おもしろかったです。『パラレル西遊記』を苦手というひともいますが、本当に奇跡のような完成度ですよね。「夢幻三剣士」についても似たような意見で、これは『パラレル西遊記』をやり直そうとした作品として見れますよね。そういう意味では個人的には『パラレル西遊記』に軍配をあげたいですが。
しかし、アニマルプラネット以降の大長編は、テーマが重い、実は暗い作品が多いですね。10~1位も楽しみにしてます。