フラファン映画『ミューン 月の守護者の伝説』感想文

《推定睡眠時間:10分》

そういえばフランスの国民的な神話といったら何になるのか知らない。中国なら中国神話があるだろうし日本なら日本神話があるだろうし朝鮮半島には朝鮮半島の神話が、アメリカでさえネイティヴの神話という形でだとしても神話があるだろうがフランスの神話というのは聞いたことがない。国としての神話じゃなくても民話レベルで語り継がれてきた地域の神話がないことはないと思うのだが。

そんな神話後進国(?)のフランスはだからこそというべきかヨーロッパの中ではわりとファンタジー映画が盛んな国でリュック・ベッソンの『アーサーとミニモイの不思議な国』とかジャック・リヴェットの『デュエル』などがパッと浮かぶが(全然浮かんでないじゃないか・・・)『ミューン』も含めて共通するのはストーリーテリングが基本的に下手っていうかあんま理詰めで脚本を作ってなくてイメージ先行だから最初の方は面白いけどなんか途中からダレてくる、というところだったりする。

『ミューン』はこんなような世界観の映画だった。昼と夜が交互にくるのはむかしむかし誰かが太陽と月をつかまえて二匹のでっけぇ亀さんにくくりつけたからであります。それからというもの太陽の守護者と月の守護者に選ばれた人はでっけぇ亀さんに乗って昼と夜がちゃんと交互に来るよう外敵から太陽と月を守ったりメンテナンス作業をしたりしなければならなくなりましたが太陽の守護者と月の守護者は責任を持って仕事をしたのでとくに昼夜が乱れることもないのでした。

この世界の生き物は様々な物質や植物を擬人化したもので定年を迎えると花が咲いちゃう植物人とか昼になると溶けて夜になると固まるロウソク人とかが出てくる。これはなかなか愉快な見た目で面白いのだがなんせイメージ先行なので異世界社会がほとんど描かれておらずその特徴的な性質があまり活かされてはいない。ロウソク人にはロウソク人の村があってこういう生活をしていて・・・みたいなのが基本的にないんすよね。なので太陽と月をでっけぇ亀さんが引っ張って昼夜を運行してるっていうのもそれが色々あって乱れちゃうっていうのもそんなに面白い展開には結びつかない。

軽妙な会話が笑えるのはフランス映画らしいところだろうか。場面場面の面白さやキャラクター造形の面白に反してストーリーがつまらないというのも、ファンタジーっていうかフランス映画の全般的な傾向なのかもしれない。まぁ世界観は良いので楽しい時間は過ごせましたけど、もうちょっと作り込めたのになぁとかはアメリカ産ファンタジーなんかに慣れた身からするとどうしても思ってはしまいますわね。作り込んだらフランスのファンタジーって感じじゃなくなっちゃうんだけどさ。

【ママー!これ買ってー!】


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かなりクセのあるビジュアルでエルフみたいなのは全然可愛くないと思うが子供娯楽映画としてたのしいです。

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