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何度反芻してみても『地獄のデス・ポリス』に脳内変換されてしまう邦題はなんだか陽気で楽しそうな印象を与えるがその楽しそうなイメージに反して実物はかなりガチめにデスなポリスだったし炎も出てくるのでこの邦題は嘘ではないのだが警官たちの死屍累々っぷりを見れば『地獄のデス・ポリス』の方が正しいんじゃないかと思えてならない。
主人公の若者警官ヴァレリーは支給されてるオートマチックの拳銃をあえて携行せず今時私物のリボルバー拳銃なんかを持ち歩く遅れてきた西部劇人種。彼女の勤務するネバダ州の片田舎では大した事件なんか起こらないのだったがその日はどうも妙な小事件が続く。胸騒ぎを覚えながらもとりあえずとっ捕まえた二人の男を留置所に放り込む主人公。それが彼女の西部劇メンタルを試すことになる一夜の始まりだとは、当然ながら彼女はまだ知らない…。
監督はジョー・カーナハンで、思えばカーナハンの出世作『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』もバイオレンス・コメディっぽい体裁をつくろいつつ本質的にはシリアスなサスペンス映画だったのだが、この『炎のデス・ポリス』もユーモラスなムードを残しながらも警官の汚職などを絡めた意外にハードなストーリーになっていて、映画の主軸になるのもアクションではなくサスペンス、すなわち2人の悪党フランク・グリロとジェラルド・バトラーの駆け引きや、一触即発の暴力的なムードにある。
銃撃戦も基本は撃つか撃たれるか。撃たれたらあっさり死ぬし撃つ方は殺すつもりであっさり撃つ。重みのあるバイオレンス描写が効いてこれが絵空事にならずしっかりとコワい。カーペンターの『要塞警察』と比較する声も聞くが、一発の重さという点において、どちらかといえば『要塞警察』の元ネタとなったハワード・ホークスの『リオ・ブラボー』の方に近いかもしれない。その現代版って感じです。
とはいえシリアス一辺倒にならず湯気立つ広いシャワールームでの対決や炎をバックにした銃撃戦といったケレン味溢れるアクションシーンもきっちり用意されているのは嬉しいところ。最後だって燃えるじゃないですか、なんつーかね、安易な共感とかお約束に向かわずに「俺は俺の道を往くぜ!」みたいなさ。そうねそういうところがこの映画よかったな。出てくる全員が妥協しない。全員が自分のことしか考えない。主人公が正義を貫こうとするのもそれが彼女の仕事だからで、誰かに情けをかけてるとかじゃないんだよな。ヒーローにはヒーローの信念があって、悪党には悪党の流儀がある。そのぶつかり合いはカッコイイ。
孤立した警察署のシチュエーションやその立体的な構造、味のある警官たちのキャラクターはもう少し活かした方が面白くなったんじゃないかとは思うが、小さくしかし妥協無くまとまった、午後ローで観たら超傑作という映画だったなこれは。
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アメリカのクラシック西部劇というと牧歌的な印象が強いが、これはそんな中ではやや異色なサスペンスフルな作品。