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俺は『スラムダンク』直撃世代に一応入るので同級生男子は大抵コミックを全巻読むか夏休みに再放送してたアニメ版を全話観ていたし学校でもバスケ部はかなり人気の部活だったのだが俺自身はといえばそんなにはハマらずそうだなぁ好きでよく読んでた漫画は『ハイスクール! 奇面組』でした。『奇面組』めっちゃ面白ぇ。というぐらいですから『スラムダンク』よく知らない。コミックは読んでいたが桜木花道の坊主姿は記憶はなく『スラムダンク』好きの友達に聞いたところ花道がバリカンを入れたのは11巻ぐらいの出来事なのだという。みんな山王戦がどうとかよく言うがまったくピンとこなかったのはそういうわけか。たぶん俺は『スラムダンク』が不良漫画からスポーツ漫画に変わったあたりで読むのをやめてしまったんだろう。
そういうわけで『スラムダンク』はミリ知っているがミリ以上は知らない。ついでに言うとバスケのルールも中学の頃に授業でやったような記憶はあるが今となってはなんだかよくわからない。トラベリング? ダブルドリブル? トラベリングはサッカー用語でしたっけ? バスケというか、もう球技知識が壊滅的である。それでも『THE FIRST SLAM DUNK』は超面白かったのでミリ知り勢の俺なりに面白かったところを書いていこう。いやー、ミリ知りでも燃えさせる『スラムダンク』、さすが国民的アニメだけありますなぁ。
めっちゃ平成
いやすごかったわ溢れんばかりの平成感。平成といえば沖縄じゃないですか。すごい飛躍している気もするが平成といえば沖縄でしょ、ほら安室奈美恵とかSPEEDとか。で湘北スタメンの宮城リョータって沖縄出身だったのねこれ知らなかった。今回リョータにスポットライトを当てて原作のクライマックスらしい? 山王戦が描かれるわけですけど、そういう次第で沖縄回想パートが結構入ってくる。あとリョータの眉毛の感じとかすげぇ90年代~ゼロ年代の沖縄系シンガーとかダンサーのやつ。リョータの母親もすげぇ沖縄のヤンママ。なんだよ沖縄のヤンママってそれは偏見だろ! でも沖縄なんだってすげぇ沖縄感あるんだってリョータのおかーちゃん!
あと平成っていったらスポーツマンじゃないですか。Jリーグも流行ったしサッカーとかバスケとかをやる男が爽やかで男らしくてカッコイイっていう時代ですよね。平成の「男らしさ」は昭和のそれとはかなり違うけれども、でも男らしさではあって、今は男も女も区別なくというのが世代標準になりつつあると思うんですけど、平成はやっぱり男らしい男が良いっていう価値観ありましたよなんだかんだ。この映画はそれに一抹の疑いも差し挟まない。男らしい男は絶対にカッコいいんだという信仰に近い確信がある。それが大ヒットしているということはまぁなんだかんだみんな平成をまだ引きずってるんだろうな、と一つ嫌味を言っておくか。いいじゃない嫌味の一つぐらい、どうせ大ヒットしてるし面白い映画なんだからさ。
それから湘北マネージャーの彩子、平成だわ~この人も平成だわ~完璧に平成の姉御女だわ~。それに音楽も、スラッシーなギターが特徴的なJロック全開の音楽もこれは平成の音だわ~感傷だわ~。もう、とにかく隅から隅まで平成あの頃!
深津が『ハンター×ハンター』に出てきそう
山王のポイントガード(っていうの?)深津は映画を観終わった後に検索したら案の定原作ではもっと台詞があり立ち位置も山王の主将とずいぶん重要なキャラだったのだが映画の中ではその大部分が削られたことにより何の説明もなく「よろしくピョン」とか無表情で言い放つ怪人になってしまい誰もツッコミを入れないのでシュールコントみたいになっていた。わはは! 深津! お前最高! あと深津すげー『ハンター×ハンター』に出てきそうなんだよ。めっちゃ念能力者顔じゃん。操作系か具現化系じゃん。深津いいわー。
ちなみに山王メンバーでは他に力夫とか呼ばれていたような気がする大仏みたいなヤツがお気に入りでこいつの何が良いって他の山王メンバーはみんな表情のアップとか台詞が用意されているのに大仏だけは一言も台詞がなく表情のアップも1秒程度のごくごく短いものが一箇所あるだけ、もちろんプレイにも見所はほとんど無い。たとえ途中後退で出てきたベンチ要員だとしても最強山王の試合に出てくるほどの実力者なのだからもう少し大きく扱ってあげても…というその巨体のまとう悲哀がたまらない。
ベンチで小暮を食う存在感を放つ奈良(幕張)
コミックを11巻ぐらいまでしか読んでいないらしい俺にとって小暮はベンチの人ではなく試合に出る人でありおそらく11巻以降活躍を本格化させるリョータよりも馴染みのある『スラムダンク』のレギュラーメンバーなのだが、この映画では小暮はベンチ要員にプラスして安西先生が花道に何か言い聞かせる時にだけコートに出てそのプレイが画面に映ることはないというほぼモブに近い扱い。むしろベンチで存在感を放っていたのは湘北ベンチもう一人のメガネである『幕張』の奈良とほぼ同型の名前を知らないアイツであった。ここでは仮に奈良と呼ぶことにするが奈良、ベンチが映ると画面の隅にでもほぼ入ってくる。こいつがいると「あ、奈良だ」とすぐわかる。俺にとって『スラムダンク』のレギュラーメンバーであった小暮はむしろ他のベンチ要員と並んで埋もれてた。小暮…!
キャラ立ちがいい
当たり前だろと思われるかもしれないが『スラムダンク』よりも『ハイスクール! 奇面組』にハマった俺はこの歳まで『スラムダンク』の面白さがよくわかっておらず、今回映画を観てやはり国民的漫画だけあってキャラクターの魅力がすごいなと唸ってしまった。キャラさえ立たせればストーリーがなんでも漫画は面白くなる。こう言うのもなんだが『スラムダンク』のストーリーなんか全然大したことがなくてこれが井上雄彦の描くあのキャラクターたちによって演じられていなければまぁこんな超ヒット漫画には絶対なってないでしょたぶん。だから『スラムダンク』の魅力って一にも二にもキャラクターなんだと思う。
そのキャラクター重視の姿勢はカメラワークからも伺えて、映画のバスケの試合を撮る時ってよくあるのはスポーツ中継のカメラワークに準拠してコート外から広角でコート全体を俯瞰するってやつじゃないですか。でもこの映画は違っててこのへんアニメの利点でコート内にカメラが入る。で、ひたすら選手個人個人の動作と表情を捉えつつフレームの空いた部分、つまり被写体の背景に他の選手を入れることで、メイン被写体以外のキャラクターも立てると同時に、誰がどのポジションにいて何をしているかというのを立体的に見せる。こうした手法がキャラの魅力を最大限引き出し、更にはバスケの試合を臨場感たっぷりに活写することにもなって、これは大正解だなと思った。
総論
井上雄彦先生ナメててすいませんでした。
【ママー!これ買ってー!】
原作も読みたくなったよ。
原作者による「テレビ版の否定」が前評判に響いていましたね。
声優総変更はもちろん、演出面でもスポーツアニメにありがちな
・競技場がやたら広くなってる
・時間経過が実際より遅くなってる
・キャラクターのお喋りやモノローグが妙に多い
を抑えようとしてたので。
下3つのスポーツアニメありがちポイントは原作にもあったポイントだと思うので、漫画では表現できなかったことをアニメでやってみたかったのかもしんないすね。
でも声優は前の方がハマってたなぁ。