意外と面白い映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』感想文

《推定睡眠時間:50分》

この映画ツイッターでたぶん試写を観た人が「意外と面白い」って書いててそれで「あ、ちゃんと面白いんだな」って思った。意外とっていうのがイイじゃないですか。意外ってことはこの人この映画に期待してなかったんだよな。でも実際観たら意外と面白かった。最近はなんか一部の声のでかいファンが狂ったように映画を持ち上げて盛り上げるみたいな信者ムーブがネットでは常態化しててそれを配給会社とか制作者も宣伝に利用してたりしますけど、娯楽映画ってそんなもんだと思うんですよね。近々海洋クリーチャーホラーの人気作『ザ・グリード』がかなり久々に地上派放送されるそうですけど、あれだってテレビ点けたらやっててなんとなく観たら意外と面白いっていう映画だよね。別に映画史に残るとかそんな大袈裟なことじゃなくて、あれ、意外と面白いじゃん、っていう。

で実際観たら確かに意外と面白い映画でした。テイストとしてはハイファンタジー世界を舞台にした軽妙なケイパーものって感じで、めちゃくちゃ面白いわけではないけどまぁなんかクリーチャーとか沢山出るし、魔法とか沢山出るし、わりと人はカジュアルに死ぬし、キャラは立っててユーモア満載、最後は家族愛でほっこり、かつミシェル・ロドリゲスの常時汗かいてるウォーリアーは体臭が感じられるようで最高、あのぶっとい二の腕でヘッドロックをかけられたい…それはいささか個人的な趣味すぎるが、娯楽映画に欲しい要素は大体揃ってる。D&Dはやったことがないので原作と比べてどうのとかは言えないが、これが午後のロードショーでやっていたらなんか得した気にはなるんじゃないだろうか。

でも思ったのは、俺はD&Dはやらないんですけどマジック:ザ・ギャザリングは長年やってて、マジックの方も実写映画化企画が進んでるらしいなんて話を時折聞いたりしますけど、マジックの映画もこんな感じになったらイヤだなぁ…っていう。マジックとD&Dって作ってる会社が今は同じで、そのウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の親会社は『トランスフォーマー』とか展開してるハズプロですけど、これ映画の冒頭にハズプロのムービングロゴが入ってたからまぁ当然かもしれないけどハズプロも単にD&Dの実写映画化の権利売ったとかじゃなくて内容に関してもある程度口出してるんですよねたぶん。

で、それでこういう感じ…家族愛が物語の中心にあって軽妙なトーンでみたいな…が通ってるってことはマジックの映画もこういうトーンになるかもしれないわけじゃないですか。俺にとってのマジックってユーモラスなところもありますけど基本的にはシリアスだったりダークだったりするものだから、なんか、観客の最大公約数に媚びて家族愛がどうのユーモアがどうのみたいな感じにされたらうーん…ってなる。

この映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ』が意外と面白かったけど「意外と」より先には行かなかったのはそういうところで、せっかくハイファンタジーの広大な世界を作ったのにそこで展開される物語は家族愛を核心に据えた軽い味わいのケイパーものだから、なんかそうなると世界観がギュッと小さくなって勿体ないなぁっていうのがある。好き好きでしょうけどねこのへん。でも俺はうーん…ってなる。家族愛とユーモアもソニックの実写映画とかピカチュウの実写映画でやるんならそれほど違和感はないけど、D&Dでそれかぁっていうね。D&DやったことないしTRPGだからこれぞD&Dみたいなストーリーもないんだろうけど、でもこんなシナリオで遊ぶユーザーってそんなにいないでしょ知らんけど。

っていう感じだね『ダンジョンズ&ドラゴンズ』。観に行くかどうかはわからないけど続編あるんならもっと冒険っぽいことしてほしいとおもいます。

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『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』はシットコム的な言葉とか間による笑いが意外に多かったりするので家族愛のテーマを伝えるためというのもあり序盤なんかわりと台詞による説明とか回想とかが長く立ち上がりが遅く、結果上映時間2時間超えなのだが、その点『モンスターハンター』は説明は最小限で人間と巨大モンスターの死闘に絞って2時間以内というシャープさで巧かったし面白かった。でもこれはこれでそのハードな世界観に「こんな殺伐としてるモンスターハンターじゃない!」と原作ファンから顰蹙を買ってたので、ゲームの実写化って難しいですねとおもう。

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匿名さん
匿名さん
2023年4月4日 5:39 PM

ダークな世界観、ハードなシナリオってTRPGだと割と地雷で、やりたがってる言い出しっぺは楽しいけどつきあわされる方は白けてるか自分のキャラがひたすら酷い目に遭って萎えるかになりがちなんすよね
その辺はカードゲームでふわっと想像してるか小説読んでるうちが華かなと
メンバーがワイワイやってるシナリオのほうがなんだかんだ普通に楽しい パーティゲームですし

匿名さん
匿名さん
Reply to  さわだ
2023年4月4日 9:05 PM

もちろんそういう雰囲気で楽しいゲームをする場合もあるんですが(クトゥルフなんかはおっしゃるとおりそっち系)ありがちな落とし穴として、

・ハードな世界でダークです、だから明るい要素は何もなくプレイヤーにとって良いことは起こりませんしプレイヤーの行動で何も良い結果はありません
→カードゲームで言えば戦略の余地もなく負け確デッキに挑まされるようなものでゲームにならない
→単なる読み聞かせならまだいいんですが主催者(ダンジョンマスターとかゲームマスターとか言います)がひたすらプレイヤーにマウントとってやりこめて気持ち良くなるだけの酷い場になりがち
→あんまりスタート状況がハード過ぎてプレイヤーが萎縮し、何をすればいいか分からなくなって場がダレがち(コンピュータアクションならレベル上げして練習すればなんとかなるかなあとなるんですが)

という感じで意外に滑りやすく、主催と参加者の信頼関係と認識合わせが大事な趣向だったりします。

匿名さん
匿名さん
Reply to  匿名さん
2023年4月4日 9:08 PM

プレイヤーがキャラを動かしやすく、やる気も出やすい方向性として家族(恋人、娘、親友その他)を助けるというのは分かりやすい方向性だったりして割とよくやります。
主人公格以外がお話に絡みやすいように仲間キャラ(そのキャラのプレイヤーにとっては主人公です)もヒロインと関係のある設定にしたりして。
特に戦士は作戦立てたり情報収集したりする戦闘以外の場面が暇なので、キャラの人間関係に絡みやすいっていうのけっこう大事で、映画みたいな関係性はあるあるだったりします。

あとクトゥルフは一般人が怪物にキャーキャー言わされるのを楽しむゲームとしてユーザーも相互認識がとれてるんですが(詰み状況は当然ゲームにならないのでそっちはそっちなりの工夫がありますが)、D&Dはなんだかんだで「ヒーロー」を遊ぶゲームなので……