《推定睡眠時間：50分＋10分遅刻》
これは悔やまれる出来事だが渋谷TSUTAYAでジョン・マクティアナン版の『ローラーボール』が観たくてソフトを探していたら予想以上に時間を食ってしまいその後に行く予定だったこの映画の上映開始時刻に10分ほど遅れてしまった。名作ならわかる。黒澤明の『生きる』を探して10分遅れるなら悔いはないが（あるが）よりによって駄作の誉れ高い『ローラーボール』なのか。いや、しかし、俺はまだ『ローラーボール』を観ていないから…観たら面白い可能性はかなりあるんじゃないかと思っているからな…みんな観ようぜ『ローラーボール』！
それで10分遅れて場内に入りましたところ主人公と見られる男がホテルの一室で不安げな表情をして立っておる。なんだろう、目覚めたら全然知らないところにいたとかかな…と思った次の瞬間、主人公バスルームに倒れた恋人を発見。なんとか！ このなんとかには恋人の名前が入るが忘れてしまった。とにかくそのなんとかに駆け寄るとどうも既に事切れている。死体の下には札束がバラバラとある。部屋の外には隣の人かなんかの通報で駆けつけた警官が来ており開けてくださーい！ ドンドンドン！ という状況。
10分遅れてきた観客の目から見ればこの主人公が恋人殺人犯でないことは明白である。しかし劇中のドアドンドンドン警官にはそうではない。殺人犯に間違われちゃいかんと窓から逃げるのかと思いきや主人公逃げず。やがて警官が部屋に入ってきて主人公は「違う！ 誰か別の人がさっきここにいたんだ！」と弁解するもあっさり殺人の被疑者として捕まってしまうのであった。まず考えるべきは俺が見逃した空白の冒頭10分間に何があったかということである。その後すぐに弁護士に状況を説明するシーンへと移ったのでおそらく俺が観ていたホテルでの一幕は主人公の回想、最初の10分間では既に逮捕済みの主人公が弁護士に状況を説明するシーンが描かれたのではないだろうか。
そうかどうかは知らないがともかく映画は回想形式で進む。とりあえずすぐに明らかになったのはさきほど死んだ恋人と書いたがホテルの一室で死んでたのは主人公の恋人ではなく不倫相手らしいということ、主人公はだいぶエリートエンジニアみたいな人で自分の会社もビルの高層階に持ってるし金とかめっちゃあるっぽいということであった。それ以上のことは…まぁこういう作りの作品だから言わない方がいいだろう。こういう作りとは、サプライズ展開に次ぐサプライズ展開ということである。
まー最近のエンタメ韓国映画こういうの多いからなー。サプライズ展開に次ぐサプライズ展開、どんでん返しに次ぐどんでん返し。すなわち全編是見所。最近のだと『オオカミ狩り』もそのパターンだった。『オオカミ狩り』、インターネット世間では血がスーパー出まくるので大好評なのだが、俺も血がたくさん出てゲームみたいで楽しみはしたものの、ぶっちゃけなんか眠くなった。というのも全編是見所とは逆に見所がない平板な作りということ。時間毎の面白ポイントが10～20ぐらいで推移する映画で一箇所だけ面白ポイントが90に跳ね上がる時間があるとすればそれはまさしく映画の見所。しかし常時面白ポイントが90前後で推移していて一箇所だけ飛び抜けたところがないとすればこれは見所がないということになろう。つまりそういうことなのだ。
『告白、あるいは完璧な弁護』もさ10分毎に展開がひっくり返るから面白いんだけどなんかどうでもよくなっちゃうんだよ。だってそんなに頻繁にひっくり返るとこれが新たな事実ですって見せられても「どうせひっくり返るんでしょ？」って思っちゃうじゃん。どんでん返しのために偶然を多用するからなんか知らんがなんとでもなるんだろ偶然パワーで、みたいな感じにもなるしな。いいよもう結果だけ見せてよ、最終的にどうなったのかだけ教えて？ まぁ俺はエンドロール直前まで寝ていたので最終的にどうなったのかはわからないのだが…。
あれだね、映画ってのは面白いシーンだけ並べれば面白くなるってもんでもないね。ことにミステリーなんかはやっぱりここまではアリでここからはナシっていうリアリティラインをちゃんと設定しておかないとコメディになったりしてしまう。これもコメディすれすれな感じで、でもコメディに振り切れているわけではないからそう笑うこともできずで、面白いけどイマイチって感じでしたねぇ俺には。
【ママー！これ買ってー！】
とくに関連性はないが最近（最近か？）話題になった韓国エンタメ映画といえばということで。続編は微妙な評価のようなので想像ですけどたぶんこれも一作目は見所は少数だけどそれゆえに見所が見所として機能してて、「今度は戦争だ」的な二作目は全編見所だから逆に見所がないという映画なんじゃないだろうか。