【ブルース・ウィリス】「ありがとうブルース! 不死身の男フェス」行ってきたぞ感想文(映画4本)

いや~世間はフェスで盛り上がってるみたいですね~! こんなに世間がフェスで盛り上がってるなら俺も飛び込み参加せずにはいられないぜ! え? なんのフェスかって? 決まってるだろ! 「ありがとうブルース! 不死身の男フェス」だよ! 2022年に引退したブルース・ウィリスの晩年の出演作4作を一挙上映するあまりにもアツいフェスだよ! え? そんなの知らない? そうだろうな! なにせこのフェス、告知自体はされ予告動画もYouTubeで配信されているもののチラシの配布などはなく、映画館の人にチラシないんですかと聞いたら配給の担当者と連絡が取れないため今はありませんという想定外の答えが返ってきたほどの知る人ぞ知るフェス! 国内配給は予告編動画を見るとAMGエンタテインメントという結構有名作も配給しているところなのだが映画が始まってもAMGのムービングロゴは出ないし字幕翻訳者の名前も出ないという何らかの訳ありを感じさせる仕様! 不思議に思ってAMGの公式サイトを見に行ったら去年12月に配給・宣伝担当者募集の告知が出て以来更新が途絶えているがそのことと今回の件がどう関係するかは一切不明だ!

まぁそんなことはどうでもいいぜ! ありがとうブルース・ウィリス! 思い入れは実はまったくないがとりあえずありがとう! 貴重な土日をドブに捨てるつもりで全4作観てきたので感想を書く!!! ちなみに上映作のうち3本は『ダイ・ハード』を冠しているが当然ながら『ダイ・ハード』シリーズとは全然関係ないので、わかりやすいように今回は原題も書いておくぜ!!!!!

『ダイ・ハード レクイエム』(原題:Detective Knight: Independence)

《推定睡眠時間:10分》

ブルース・ウィリスがアウトロー気味の刑事を演じる『刑事ナイト』シリーズのおそらく一作目だが一作目にして早くもウィリスの限界が見え隠れし長台詞などなく演技も乏しくとりあえず渋い顔をしてそのへんに立ってるだけみたいなシーンが多発! ウィリスの引退理由は失語症と公表されているがこのシリーズを見るとなるほどそういうことかぁと思わされると同時にお大事にという気分にさせられるのでウィリスの引退に納得のいかない人ならこのシリーズは必見だろう! いやもう無理ですってこれ以上。むしろこの状態でよく頑張ったよ…。

ウィリスの病状もあり基本的には後期セガール映画とよく似た作り。すなわち主人公であるはずのウィリスは画面にあんまり出てくることなく、別の役者がストーリーを回して最後にウィリスが出てきて暴力解決という具合である。その別の役者というのはこのシリーズ一作目では警官に憧れる救命隊員で、そいつが銀行強盗事件の現場で体験した不条理によって不満爆発、半ばヤケクソになって警官コスプレで街を歩くという変態プレイをしていたら暴行事件に遭遇してその犯人を撃ち殺したことから何かが壊れ、やがて自らも銀行強盗を計画するようになる…と実は結構おもしろい感じのストーリーが展開されるのが失礼ながら意外である。

変に社会派ぶってるので盛り上がりには欠くが、暇つぶしに見るサスペンス・アクションとしては悪くないんじゃないだろうか。

『ダイ・ハード THE FIRST』(原題:Detective Knight: Rogue)

《推定睡眠時間:25分》

『ダイ・ハード』でもないしシリーズ初作でもないのにTHE FIRSTのやっつけ邦題が与えられた『刑事ナイト』二作目ではウィリスの病状がますます悪化! もはや一言ずつぐらいしか台詞は言えないし台詞が出てこず言えていないのを「そういうキャラなんだよ」で強引に押し切っているように見えるシーン多数なのでそんな状態の人に無理に仕事をさせるなよ! と思うが一作目を見る限りではウィリスも演技をしているところではしているので本人は現場に立ちたかったのかもしれない。演技をしたい自分とできない自分の板挟みで悔しい思いもしたことだろう…。

そんなわけでますます画面に占めるウィリス比重が軽くなり一部シーンではフルフェイスのマスクを被って軽いアクションをこなしていたのでいやこれ『プラン9・フロム・アウタースペース』の時に撮影途中に出演者のベラ・ルゴシが死んだから代役に顔を隠して演技をさせたあれ的なやつじゃない!? という疑惑も噴出するが、元アスリートによる現金輸送車襲撃事件から始まる物語は適度にキャラが立っていて適度にアクションもありどうでもいいとはいえ適度に意外な黒幕もありでこれまた90分飽きさせないなかなかのB級映画、飽きないのはそもそも最初から大して面白くないためでもあるが、暇つぶしには悪くないぞ!

『ダイ・ハード 最後の戦場』(原題:Detective Knight: Redemption)

《推定睡眠時間:0分》

一作目が銀行強盗で二作目が現金輸送車襲撃(その後銀行強盗)から始まる『刑事ナイト』シリーズ最終作はクリスマスシーズンのニューヨークでサンタ姿の武装集団による銀行強盗から始まってまた強盗かよと思わずにはいられないが実はこの強盗単なる金目当てのチンピラではなくアメリカ転覆を企むテロリストだったというのがサプライズ、なにせ敵の目的がビッグなので前二作に比べて物語のスケールもビッグになっており、雪のパラつくニューヨークでサンタが爆弾プレゼント箱を投げつけたり片っ端から銀行を襲って思想を説いてはその場に居合わせた人々を爆殺していく凶悪っぷりに気分がアガる。群像劇的なシナリオになっているのでパッパッとシーンが変わってテンポもいい。

相変わらずウィリスの病状はよろしくないのでもはや喋ることもあまりなくなってしまっているが、いささか苦しいとはいえそのことで何を考えているかわからないが強盗犯の行くところにはやたら現れるというイーストウッド的な亡霊性を獲得しており、なにやら異様な迫力がないとは言えない(あるとも言わない)。雪降るクリスマスのアメリカ大都市…といえばやはりウィリスの出世作『ダイ・ハード』。その街に消えていく刑事ナイト=ブルース・ウィリスの背中を捉えたラストシーンはまさに「ありがとうブルース!」の観で、ウィリス生前葬映画としてちょっとグッと来てしまったのがなんかムカつく。

『ラスト・ブラッド 不死身の男』(原題:Assassin)

《推定睡眠時間:0分》

ウィリスのフィルモグラフィー上では今のところこれが最後の出演作品になっているらしいがエンドロールには2022年と書いてあった気がするので公開が遅くなっただけで作品の完成はもっと前だったのかもしれない。そのためかウィリスが限界だった『刑事ナイト』シリーズに比べてこちらでは結構ちゃんと芝居をしており、隠密部隊を率いる謎の男として出演場面こそ少ないもののきっちりと存在感を発揮しているのが嬉しい。

内容はブランドン・クローネンバーグの『ポゼッサー』をパクった頭脳ハッキング暗殺もので、主人公のハッキング暗殺者は女の人なので「不死身」はともかく「不死身の男」の邦題は完璧に嘘だが、まぁそんなことを気にする人は日本全国に3人ぐらいだろうしこの映画を観る人の総数も30人ぐらいだろうから別にどうでもいいだろう。ファッショナブルでアーティスティックな『ポゼッサー』に対してネタは同じでもこちらはあくまでB級SF、サスペンスやアクションやロマンスといった俗な見せ場の連続で飽きさせないし、低予算は見え見えとはいえカメラワークやシチュエーションも結構工夫していて面白く、最後のどんでん返しにも無邪気なので素直に驚いてしまった。

ブルース・ウィリス主演作と勘違いして観ればカスだろうが、あくまでもブルース・ウィリスをスパイスにしたB級版『ポゼッサー』として観れば、これはウィリス晩年の作の中でも突出して完成度の高い作品じゃないだろうか。もう少し大きな盛り上がりどころが欲しかったとは思うが、おもしろかった。

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