《推定睡眠時間:55分》
考えてみれば『メリーさんのひつじ』がいったいなんなのか全然わかっていない。幼稚園や小学校で歌ったことはあるはずだが覚えているフレーズは「メリーさんのひつじ かわいいな~」だけなので、ここからはメリーさんのひつじがかわいいということ以外なにひとつ読み取れず、メリーさんが何者かは一切不明である。その謎がもしかしたらこの映画で明かされるかもしれない! むろんそんな期待などまったくなく単につまらなそうなホラーだから観に行ったのであった。つまらないホラーは雑に観られて楽だから。
だがいくら雑に観ていい映画とはいえ…80分中55分は寝過ぎだ! 景気よく冒頭からメリーおばさんとその息子でひつじ頭もしくはマスクの大男が残虐殺人行為を働いているシーンから始まるので最低限のホラー成分は摂取できたものの展開と演出に緩急がなくぼやっとした感じで進んでいくのでいつしか脳が羊が一匹羊が一匹羊が一匹…全然増えない! と実際に数えたわけではないのでこれはインターネット用の誇張ウソだがともかく本題と思われるひつじ男の虐殺シーンに入る前に寝てしまい、起きていたとしても別段面白くなかったと思うが、それにしても不完全燃焼、起きたときには既にエンドロールに入っており何がどうなったかもわからないというのはちょっと…まぁでもなんか悲しげな音楽が流れてたからたぶんメリーおばさんとひつじ男の家が主人公の女の人に燃やされるとかして二人とも死んだんじゃないのかな。あるいは主人公が死んだのかもしれないがまぁ別にどっちが死んでてもいいか。
本家「メリーさんのひつじ」の歌詞や成立背景は知らないので『プー あくまのくまさん』に続く本当は怖かった(本当じゃない)あの話の1本と思われるこの映画がどの程度「メリーさんのひつじ」を下敷きにしていてどのへんをどう魔改造したのかはよくわからなかったが、起きて観ていた範囲でいえばかなりめちゃくちゃよくある普通の森スラッシャーだったので、あまり「あのメリーさんが!?」的な面白さはなかったんじゃないだろうか。ちなみに森スラッシャーというのはおもにアメリカのお金はないけど映画を撮って金儲けしたい人たちがセットとか必要なくなんとなくそれっぽい画が撮れることから近所の森でロケして済ませる例を挙げれば『悪霊のいけにえ』(『悪魔のいけにえ』ではない)などのスラッシャー映画のことである。『メリーおばさんのひつじ』はイギリス映画だがメソッド的には典型的な森スラッシャーであろう。
おもしろくないので感想もこれぐらいしかないが、ただ80分の上映時間を考えれば人死には多い方だったと思うし腕とか首とかも定期的にちゃんと千切れるので森スラッシャーとしては良心的な映画かもしれない。あえてムードの近い映画を言うなら『人肉村』か。それなりにホラー的な見せ場はあるはずなのになんか跳ねる感じがなく退屈感が強いあたりが似ている。いや、これは悪口じゃないんだ、良い意味で言っているんだ。観て良し寝て良し観なくても良し、こんなに観客にとって都合の良い映画があるだろうか。おもしろくはないがこういう映画こそ映画館で観たいものだと俺は心から思う。おもしろくないからか観客は1日1回上映なのに4人ぐらいしかいなかったが…。