カナザワ映画祭2024ちょっとだけ行ってきた感想文①

カナザワ映画祭! それは日本でもっとも云々とカナザワ映画祭の説明をしようと思ったが今回は観てきた映画の本数が多くて感想を書くのが大変なので省く! 興味がある人は「カナザワ映画祭」でいろいろ検索してみてね!

まぁでもチラッとだけ書きますとここは前はカルト映画とか日本未公開だけど面白い昔の映画とか流す映画祭だったのです。後に期待の新人グランプリといって日本のインディーズ映画のコンペもやるようになりこれが今をときめく『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督が入選するなど若手監督の登竜門化、スカラシップ作品製作も始まった。攻めのカナザワ映画祭は2023年より国外の主にインディペンデント系新作映画の募集・上映も開始。それに手応えを感じたのか例年シルバーウィークに合わせて2~3日の開催だったのが今年は一気に5日開催に拡大、旧作上映は一切無く得体の知れない世界各国(全大陸の映画が揃ったらしい)の新作映画が短編長編入り乱れて大量上映されることとなった。というわけで本数が多く書くのが大変…とこういうことなのだ!

お金がないので5日間の会期中俺がいたのは2日だけで観たのは8プログラム。その中から今回は長編映画の感想を書いていこう。短編は計12本とかあるのでまた次の機会を待て!

『アシュラ師団指揮官メフディー(The Situation of Mahdi)』(2020)

《推定睡眠時間:85分》

挑戦や意外性を核とするのがカナザワ映画祭。日本で公開されるイラン映画といえばほとんどすべてがキアロスタミに代表されるアート系のヒューマンドラマだが、このイラン映画『アシュラ師団指揮官メフディー』は大規模な戦闘シーンが見所の戦争映画。イラン映画はヒューマンドラマだけじゃない! 考えてみれば実に当たり前なのだが、ふだんイランの通俗娯楽映画みたいのを日本で観ることはまずないので、なんだか新鮮である。

そんなわけで結構楽しみにしていた映画なのだが俺はカナザワ映画祭には基本的に深夜高速バスで行く人なので金沢到着は朝5時過ぎ、高速バス車内で熟睡なんか不可なので一眠りしたいところだがホテルのチェックインは午後なのでそれもできずとりあえず東金沢にあるスーパーなスーパー銭湯・和おんの湯で1時間半ぐらい最高な湯に浸かり万全の体制で朝10時の上映に向かった! …ところ、逆に気持ちよくなってあまりにもスヤスヤと眠ってしまった。したがって残念ながら詳しい内容はまったくわからないが、断片的に観た戦闘シーンはたしかに本格的で迫力があったとおもう!

『ルタ・デ・ラ・フエラ・フロンテーラ(Ruta de la fuera Frontera)』(2019)

《推定睡眠時間:15分》

カンザス州カンザスシティのアンダーグラウンドで生きるたぶんメキシコ系の麻薬ギャングの内情を潜入捜査官の目を通して描いたアメリカ映画。潜入捜査官を演じるのはやっぱりカンザス州カンザスシティを地獄巡りする『キック・ミー 怒りのカンザス』に出演したカンザスの星サンティアゴ・バスケス。この人は詳しくはわからんが実際に副保安官かなんかで警察業務に長い間携わっているらしい(カナザワ映画祭らしいジョークかと思ったがIMDbを見てもたしかにそんな感じのことが書いてあった)

警官としての職務と潜入先で芽生えた信頼関係の間で揺れる潜入捜査官というプロットは平凡だし撮影もベタっとした画が多くいろいろ人が死んだりなんかするわりには迫力に乏しいが、それがセミドキュメンタリー的な効果を上げていて、アンダーグラウンドのザラついたリアリティが画面に漲っていたので面白かったし好き。妙に映えない役者の人が多いのもあれがリアルなギャングということなのかもしれない。チラシの解説文にはホンモノも多数出演とあった。

『オール・ユー・ニード・イズ・ブラッド(All You Need Is Blood)』(2023)

《推定睡眠時間:0分》

こちらもアメリカ映画。母親の遺骨と会話する映画大好き中学生男子の家の庭に落ちてきた隕石にはゾンビ菌がついてて触った父親ゾンビ化、母は死に父はゾンビと絶望の淵に立たされるかに見えた中学生男子だったがそこは映画大好き人間なので「これ使えばリアルなゾンビ映画撮れるじゃん!」と悲しみもそこそこにポジティブ発想転換、映画祭に応募するために友達と一緒にホンモノのゾンビの出てくる自主映画を作り始めるのだった。

要するにゾンビ版『SUPER 8』と言ってしまえば身も蓋もないがこちらは低予算映画なので舞台はほぼ主人公の住む小さな家のみ、『SUPER 8』のようなスピルバーグ的スペクタクルはなく、基本的には同じようなゾンビギャグや自主映画ネタを何回も繰り返すゆるいコメディなのであんまり面白くはない。設定は『SUPER 8』だが内容は『ゾンビパパ』の方が近いかもしれない。

だがしかし、ラスト20分ぐらいでそれまでのゆるいゾンビコメディが突然『死霊のはらわた』みたいなグシャグシャ系スプラッターに変身、ミュータントタートルまで何の前触れもなく出てきて暴れ回る! そこからのオチもなかなかドリーミンで良いので、なんだかんだ悪い映画じゃなかったです。劇場公開は微妙だが配信ならそのうちNetflixとかでされそう。

『ポヤモジ(POYYAMOZHI)』(2024)

《推定睡眠時間:20分》

マラヤーラム語という聞き慣れない言語で撮られたインドのネイチャー・サスペンス。寝ていたので導入部の理解が怪しいが誰かを探して山間部の村にやってきた都会の若い男がその誰かを知っているらしい村の牛飼い中年男と共に山へと入るが、行けども行けども目的の人物が現れる気配はなく、次第に牛飼い中年男は奇妙な言動を取るようになる。

個人的な今年のカナザワ映画祭の長編ベスト作。延々と森を彷徨う二人の男の関係が徐々に破綻し、見慣れた森が次第に神話的迷宮へと変貌していく点が『眼には眼を』『脱出』(ブアマンのやつ)を彷彿とさせ、日常世界の倫理や道徳といったものが圧倒的な大自然の中でどうでもよくなっていくあたり、美しくも恐ろしい映画だった。牛飼い中年男の怪演や現代インド社会のレイシズムを抉ったシナリオもかなり見物。これイメージフォーラムとかで一般公開しないかなぁ。

『犬神の血族(Crimson Snout)』(2023)

《推定睡眠時間:10分》

今年のカナザワ映画祭の長編部門グランプリ受賞作。犬食を生業とする片田舎の一族の親父が怪死を遂げて葬儀のために都会に出ていた長男が恋人とともに渋々帰還、田舎らしく不穏で湿った空気が立ちこめる中、一族と長男カップルを次々と怪現象が襲うという感じのベトナムのオカルト・ホラー。

最近台湾の『呪葬』という映画が日本でも公開されこれも葬儀で実家に帰った人が嫌な思いをしたり怖い目に遭う実家嫌ホラーだったので、今、アジア圏では実家が怖い。おそらくその背景には世界中で一段と進行する人口密集地の都市化と変化のない田舎の社会的分断があり、この映画『犬神の血族』も現在のベトナムでは一般的に廃れた犬食の食習慣がまだ残っている田舎では…という、都市部と田舎の価値観のズレから生まれる恐怖が描かれている(そういえば少し前に日本公開されたタイのオカルト・ホラー『フンパヨン 呪物に隠された闇』もわりとそんな感じだった)

不穏なムードやドロドロした人間関係は良いがホラー描写の方はそこまで多くはなく、オカルト・ホラーといってもストーリー的にはミステリー色の方が濃いかもしれない。最終的にあんまり犬食関係なくなるし作りに甘いところはあるが、今のアジアンホラーを象徴するような作品ではあるので、アジアンホラースキーなら機会があれば必見。知らんけどたぶんシネマートとかでそのうち一般公開されると思います。

カナザワ映画祭2024ちょっとだけ行ってきた感想文②へと続く…

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