《推定睡眠時間:60分》
『カメラを止めるな!』以降の上田慎一郎の長編映画はわりと映画館に観に行ってると思うがとにかく記憶に残っているのは客ぜんぜんいねぇ。たしかに『イソップの思うツボ』(たしか三人の共同監督の一人)も『スペシャル・アクターズ』も正直なところこれはどうなのか、低予算で作っているのだろうがその懐具合が画面に堂々と出すぎなんじゃないかという安っぽさで、仕掛けありきのストーリーもあんま面白くないし結構キツイ出来ではあったが、でも『カメ止め』であれだけ世間に騒がれた上田慎一郎の新作でこれはちょっと薄情というかなんというか…妻のふくだみゆきと共同監督したアニメの『100日間生きたワニ』は上に挙げた作品に比べるとずっと良く出来ていて面白かったのだがこれも映画の内容とは無関係に原作由来の大炎上となってしまい話題作だったにも関わらず驚きの不入り。まぁ映画は水物ですね、移り気な大衆なんか一切信用しちゃいかんと思わされたりしたのであった。
という次第なのでこの『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』、ちゃんとお客が入っているようで関係者でもないのになんかホッとしてしまった。お客が入ることにはたぶんきっとワケがある。どうやらインディーズでの映画制作に思い入れが強いらしい上田慎一郎の映画は『カメ止め』以降も無名役者の起用が多く主演も「誰?」なことが多かったのだが、今回は内野聖陽(すいませんエンドロール見るまで光石研かと思ってました)と岡田将生ということでネーム&顔バリューしっかり。映像に関してもこれまでの上田映画に比べてリッチな感じだったのでたぶん何倍もお金がかかっていたんであろう、映画はお金をかければいいというものではないが、でもやっぱり娯楽映画に関してはお金の有り無しが映像の迫力に直結しちゃうからお金があったほうが基本的にはいい。
そしてダメ押しとばかりに今回は韓国でヒットしたらしいコンゲーム系ドラマ『元カレは天才詐欺師 ~38師機動隊~』のリメイク。捻った構成の脚本が上田映画最大の武器と思われるのでオリジナル脚本ではなくリメイクということはもう今度は絶対に外したくない、本当はオリジナル脚本でやりたいがとにかく外せないから…という思いが企画段階であったのかもしれないな。韓国ドラマ・映画にはとりあえず韓国ものならなんでも観るというような強力なファンダムが付いてるから韓国ドラマのリメイクというだけでかなりの宣伝効果があったはずである。ようするにこれは売れるべくして売れたという感じの鉄板企画だったのである。
そんな風に書けば単に売れただけで中身のない映画みたいだが、個人的にコンゲームものにほぼ全然まったく興味が湧かないタイプなのにそれでも面白かったから、『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』はちゃんとした映画であった。『カメ止め』以降の上田映画の何が一番ダメってこれはあくまでも俺の場合ですけれども茶番感が強かったんだよな。なんか、お子様からお年寄りまでご家族みんなで楽しめますよ~みたいな配慮と演出が過剰でさ、悪い奴が恐くないから騙し騙されの過程に緊迫感がないの。うわ~これバレちゃったら殺されるぞ~みたいに思えないからそうなもんどうだっていいよ勝手にやってろどうせ主人公が騙し勝つんだろって気になっちゃうんだよ。
だけど『アングリースクワッド』は敵がちゃんと悪党に見えて、で、騙す方(内野聖陽と岡田将生)の騙し動機もシリアスだったから、騙し騙されの過程にそれなりの緊張感があった。これまでの上田映画に比べれば設定のリアリティラインがちょっと高くて社会派的な要素があるのもそれに拍車をかけてましたね。だからおもしろかった。主演二人にフォーカスしたシナリオになっているので騙し屋チームの他のメンバーがあまり生かされてない気もしましたけど、でもそのぶん主演二人が魅力的だったからね、トントン。バシッと決まったラストにはハードボイルド的な色気も漂ってたな。こういうのもこれまでの上田映画にはなかったところじゃないだろうか。
あれ、なんかずいぶん薄っぺらい感想だね。まぁそうだよそりゃ、結構寝ちゃったからさははは! いやでもホント、痛快…とまで行くかどうかはわかりませんけど、楽しめる娯楽作だと思います。少なくとも同じ邦画コンゲームものの『コンフィデンスマンJP』よりは全然よいんじゃないですかねと最後の最後で他作のdisをあえて入れる必要はあったのか! すいませんないです。