《推定睡眠時間:70分》
この映画公開の数日前にソニー製作のマーベル別ユニバースであるところのSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)の製作終了がアナウンスされたようで一応SSUに属していたらしいこの映画『クレイヴン・ザ・ハンター』にとってはなんとも幸先の悪い出だしとなってしまった。いったいSSUとはなんだったのか。『モービウス』も『マダム・ウェブ』も売れ行きが芳しくなかったので『スパイダーマン』シリーズと繋がることなく一作で終わってしまったしSSU最大のヒット作と思われる『ヴェノム』もシリーズ二作目『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のラストでスパイダーマンとのバトルを最大限匂わせていたにも関わらず結局戦うことなくシリーズが終わってしまった。スパイダーマンの名を冠しておいてスパイダーマンと1回も絡まないという謎のユニバース、SSU。まぁ『スパイダーマン』も役者変えてまた来年とかにやるらしいからそれに合わせてユニバース再始動もあるのかもしれないが…もうやめとけ!
という残念感満載のSSUだが俺はどの作品もわりと好きで大作志向の本家マーベルに比べて小ぢんまりとしてるあたりが肩肘張らずに観られてよかった。昔のハリウッド映画っぽいつーか。まだマルチフォーマット上映前提にランタイム3時間が当たり前になる前のハリウッドの娯楽アクションて感じだよね。でそんな中では異色っていうかストーリー的にはアメコミ版『ゴッドファーザー』みたいな感じのシリアス路線の裏社会大河ドラマだし上映時間も『スパイダーマン』以外のSSUでは最長かもしれない127分ってことでSSUよりも本家マーベル映画に近い気がしたのが『クレイヴン・ザ・ハンター』でした。監督はリーマン・ショック前夜の投資銀行の人々の行動を描いた経済ドラマの実に渋い秀作『マージン・コール』が有名な社会派J・C・チャンダー。明らかに畑違いの監督をヘッドハントしてくるあたりも本家マーベル映画っぽい。
いやぁ面白かったですね。これ何が良いかって映像がリアル志向。映画はロシアの吹雪荒れ狂う荒地を囚人護送車が走る場面から始まるが、その後到着する刑務所がアメコミ映画に出てきがちなスーパー未来刑務所じゃなくてリアルな刑務所なんですな。で囚人たちに混ざってそこにやってきた主人公クレイヴンの目的は所長暗殺だったんでバトルになるわけですけれどもそこで人を殴るとちゃんと血が出る! 当たり前じゃろがいと思うがアメコミ映画ってレーティングを全年齢対象にしたいから基本的に血とか出ないじゃないですか。バイオレンス描写とかゴア描写なんてもってのほか。でも『クレイヴン』はゆーて大したものではないわけですけど人を殴ると血が飛ぶぐらいはやる。そこもまたリアル路線で、なるほどJ・C・チャンダーがアメコミ映画を撮るとこうなるのかと納得。
その後は体調不良によりほぼ寝ており所々起きてトータル50分ぐらいは一応観てはいる気配が感じられるものの目が映像を受信していても脳は死んでいるので画面に映っているものがなんなのだか理解できない、ということで実質的には冒頭15分ぐらいとラストシーンぐらいしか観ておらず、あれがどうだったとかこれがどうだったとかまったく語ることはできないのだが、映画は初めが肝心と言うし終わりよければ全て良しとも言う。この映画は序盤はマーベル系のアメコミ映画には珍しいリアル&シリアス路線でラストシーンはマフィア映画の苦さが残って(ここらへんが『ゴッドファーザー』ぽいわけですよ)こちらも大人の味わいでよかったので、よい映画だったんではないでしょーか。これはこれで1本の作品として完成されてると思うので、SSU作品として無理に『スパイダーマン』に繋げられなくてよかったかもしんないね逆に。