え、今なの? この記事を読んでいる人はそう思っているかもしれない。なぜならこれを書いている今現在は2024年12月25日の21時30分。すでにクリスマス当日も終わりかけ世間は早くもお正月へと動き出している時である。クリスマスまでにクリスマスのホラー映画を一人で10本観て感想を書くこの毎年恒例の個人企画。これまではなんだかんだクリスマス当日までには記事が出せていたのだが…しかし、今年は間に合わせることができなかった。おそらくこの記事が世に出る頃には日付が変わっているだろう。もはやクリスマスではない。
なぜそんなことになったのか。一言でいえば、ゲームをやっていたからである。マジック:ザ・ギャザリングのオンライン版MTGアリーナをやっていた。おもしろかった。おもしろかったがそれよりも先にやるべきことがあると忘れていた。いや、忘れてはいなかったが、ゲームをやりたい欲に勝てなかったのだ。こんな俺にクリスマスホラー映画10本観る記事を書く資格なんてあるのだろうかいやある当然ある当たり前。だから今からでも書く!
そしてもうひとつ言っておくことがある! 今年中にクリスマスホラー映画を100本集めたレビュー本を出すと春先ぐらいにこのブログで言ったな! あれは嘘だ! 結果的に嘘になった! 来年こそは…来年こそは出るから…! 来年のクリスマスにはサンタさんが悪い子たちの生首と一緒にズタ袋に入れてクリスマスホラー100本レビュー本をみなさんのお宅に強制的に届けるから! それまで震えて待っていただきたい! ひとまずは今年のクリスマスホラー10本を読んでな!
『デモーニック・トイズ/ドールズ2』
サブタイトルにある『ドールズ』というのは説明不要かもしれないが1980年代より低予算SFXホラーやSFを量産してきた旧エンパイア・ピクチャーズ、現フルムーン・リリーシングの看板タイトルのひとつ。「ドールズ2」と銘打っているがこの『デモニック・トイズ』はそれとは直接関係がなく、共通点はエンパイア製の人形ホラーという点のみ。どちらかと言えばその方向性は同社の代表的人形ホラー映画シリーズ『パペットマスター』と近いかもしれず、実際シリーズ何作目かでは『パペマス』の殺人人形たちと『デモトイ』の殺人玩具が戦っている。フルムーン・シネマスティック・ユニバースである(あまりにも夢のない夢のユニバースである)
さてその『デモトイ』第一作目にあたるこの映画はクリスマスが舞台かどうかはわからなかったがまぁなんかほぼ全編夜のオモチャ倉庫が舞台で寒そうな感じがあったしオモチャがたくさん出てくるからクリスマスホラーということにしておこう。「デモニック」というように主題は悪魔との戦いであり殺人玩具はあくまでも悪魔の操る道具という設定。そのため出番は『パペマス』ほど多くないものの、凶暴クマちゃんや悪たれ赤ちゃん人形、レーザー銃を撃ってくるロボット(『パペマス』にもそんなのがいたが…)など、『パペマス』に比べてコミカルで可愛らしいヤツが多く、その活躍っぷりは結構楽しい。
なんだかんだナイスバデーなおねーさんのオッパイは出てくるもの『パペマス』よりも子供向けを意識したのかクマさんが巨大化したり三輪車オバケが出てきたりして最後はくるみ割り人形が正義の化身として登場して悪を成敗。世界の命運を決める善と悪の戦いという意外とスケールの大きなストーリーはその後『バットマン ビギンズ』などを手掛けるデヴィッド・S・ゴイヤーによるもの。なお最大の見所は自動小銃で倉庫のオモチャをバババババッとぶち壊しまくるところだと思います。
『聖夜の惨劇 ニッセやりすぎる』
ニッセというのはノルウェーのノームのことだそうで、ノームというのはアメリカ映画とかで庭によく置いてある赤い帽子を被った小人のあれ。このニッセはちゃんとルールを守ってお世話をすれば家事の手伝いなど良いことをしてくれるが、ぞんざいに扱うと怒って悪さをするのだという。そんなニッセの住むノルウェー田舎に伝統も伝承も知ったこっちゃない世界のどこでも俺ルールを貫く野蛮なるアメリカ人一家が引っ越してきてしまったものだから当然ニッセは大激怒するのであった。
妖精版の『グレムリン』とでも言えばいいのだろうか、ギズモと違ってニッセは小さいオッサンなので全然可愛くないが、ついにブチキレたニッセが秘技仲間を呼ぶを発動、ニッセ軍団が大挙してアメリカハウスに押し寄せる終盤は『グレムリン』的パニック感。アメリカ一家がお約束的にニッセルールを一つ一つ破っていくくだりには笑わせられ、終盤のパニックではまぁ爽快なアクションと軽いゴアもありと、なかなか楽しい一本。
『エネミー』
クリスマス・イブの夜に警察署を訪れたのは殺人を犯したと語る謎の男。署に残っていた数人の警官は事情が飲み込めないままとりあえず尋問を始めるが…というお話だがこの謎の男がヴァル・キルマー、そして開始15分ぐらいで明かされてしまうので書くがこいつの正体は幽霊である。ということで、なんとヴァル・キルマーが幽霊役! こんなに幽霊の繊細さを欠いた幽霊がクリスマスホラー史上に存在しただろうか? クリスマスホラーじゃなくても存在しないと俺は思う。
意表を突かれる配役だが、やはりヴァル・キルマーが主演だからなのかどう見てもアクション映画風の日本版DVDジャケットから受ける印象と違い、内容的にはストレートにホラーというのも意表ポイント。幽霊だがヴァル・キルマーなのでその殺しは徹底してフィジカルであり、スラッシャー映画の殺人鬼を幽霊に置き換えたものと考えてもらえばいいです。ゴア描写も意外なほど激しく臓物があっちゃこっちゃに散乱。ヴァル・キルマー×幽霊×ゴアという実に妙な組み合わせが鈍い輝きを放つクリスマスホラーの隠れた佳作だ。
『ブラック・フライデー!』
ブラックフライデーといえば本来は11/29の感謝祭(サンクスギビングデイ)商戦だが、最近では時期も近いしクリスマスも合わせてのセール期間となったりしているらしく、この映画でも舞台となるいろいろ量販店にクリスマスの飾り付けがされていたりする。そのブラックフライデー開始直後の量販店に人喰いエイリアンゾンビ侵入、店員も客も次々と寄生されてエイリアンゾンビと化す中、店内に閉じ込められた店員たちに活路はあるのだろうか!
人が死ぬ工具がたくさん置いてある量販店という舞台、いっぱい出てくればそれだけでとりあえず楽しいゾンビという敵、そして店長がブルース・キャンベル! あまりにも面白そうだがそれほど面白くないのは対ゾンビ・サバイバルよりも店員たちの関係性やそこから生まれるユーモアを無駄に重視してしまっているから(しかもだいたいスベっている)。最後もエイリアンゾンビが合体して巨大生物と化すのにそのシチュエーションを生かせているとは言いがたく、どうにも盛り上がらない。ブルース・キャンベルが店内のチェーンソー持って巨大生物に特攻かけるだけで超面白くなるのになんでそういうことをしないのだろうか。せっかくエリアンゾンビのメイクはよく出来てるのにもったいない映画である。
『エイリアン・レイダース』
こちらはクリスマスの夜のスーパーマーケットにエイリアンが侵入する映画。だがエイリアンが侵入といってもこのエイリアンは『遊星からの物体X』型、外からは人間なのか人間に化けているエイリアンなのかわからない。謎の武装集団が深夜のスーパーに突入する序盤は犯罪アクションだが、こいつらの目的は店内に潜伏していると見られるエイリアンを狩り出すことにあったということで、途中からはサスペンス、そしてSFホラーへと変貌していく。
ジョン・カーペンター風の無駄のないタイトなアクション演出が何より光る一本で、何が起こっているのかわからない序盤の緊張感はかなりのもの。その後やや中だるみしてしまうのは残念だが、いったい誰がエイリアンなのか、そもそもエイリアンなど本当に存在するのかというミステリアスなムードは良く、あっさりと人が死んでいく無情さも良い。ノイズの入ったビデオカメラ映像の挿入も効果的な、低温クリスマスホラーの良作だ。
『PSYCHO SANTA』
サイコサンタというからサイコなサンタが人を殺して回るだけの終わった映画かと思ったら映画の半分以上が回想シーンに費やされていて別の意味で終わってた。残りの部分のほとんどは家の中でのクリスマスパーティの場面とそこに車で向かう主人公カップルの場面。回想の内外で一応サイコサンタも殺しはするが、それにしても薄味の粗食のような映画である。ちなみにこのサイコサンタの正体は長年家に監禁されていた虐待児であり、母の面影を求めて(?)サンタコスで殺人を繰り返すあたり、なんとなく『悪魔のいけにえ』風味が感じられないでもない(『悪魔のいけにえ』のように面白いという意味ではまったくない)
『PSYCHO SANTA 2』
なぜあの面白くない上にネタも散々使い尽くされて新味のない『PSYCHO SANTA』の続編をわざわざ作ろうと思ったのかよくわからないが、それを言ったら一作目の時点でなんで撮ろうと思ったのかよくわからなかった。なんで撮ろうと思ったのかよくわからない最底辺自主制作ホラーが普通にDVD化されてAmazonで売ってるアメリカはどうかしているけれどもすごい国だなと思う。
さて『PSYCHO SANTA 2』だがこのタイトルにも関わらず主役はサイコサンタではなくサイコサンタと関わりがありサイコサンタに人生を狂わされた人たちである。人はサイコサンタに生まれるのではない、サイコサンタになるのだ…というわけでスラッシャー映画よりもサイコホラーに近いのかもしれない。ただし殺しの分量は前作からだいぶ増量、ゴア描写にまぁまぁ力も入り、いろんな撮影手法を試みたりしているので、映画としては前作より面白かった。近所のショッピングモールのクリスマス飾りを撮ることでクリスマス感もややアップ。シーンの繋がりがよくわからないなどまだ改善の余地はあるので、『PSYCHO SANTA 3』、行けるぞ! いや、行かなくていいか!
『CHRISTMASSACRE』
CHRISTMAS+MASSACREで「クリスマス大虐殺」。誰もが思いつくがゆえにこれまで誰もやらなかった力の抜けるダジャレタイトルの時点でダメな映画なのであろうと察せられたが、観たら思ったよりもしっかり撮れてる面白くないダメ映画だったので意外だった。主に1980年代のスラッシャー映画にオマージュを捧げているらしく目出し帽の殺人鬼の風貌は『プロムナイト』か『ツールボックス・マーダー』(オリジナルの方)。それはいいが中盤は延々と大学生たちのつまらないクリスマス模様をつまらない脱力ギャグを散りばめて見せる展開になり、そんなところまで80年代スラッシャーっぽくしないでいい。
一人と思われた犯人が実は複数犯と判明する終盤は『スクリーム』のパロディ。殺人鬼の一人が殺人の動機を「あれは1987年のことだった…」と語り出したら全然話が終わらず数時間経過しその間に腹を刺された殺人鬼その2が死亡とかちょっと面白いところもあったので悔しい。ゴア描写というよりもスプラッター描写という感じの景気の良い血の噴き出しっぷりも悪くなかったので、学生たちのドラマ部分を全部カットしたらわりかし良いスラッシャー映画になるかもしれない。ただでさえランタイム78分なのでそこ削ったら10分ぐらいになってしまうかもしれませんが。
『CHRISTMAS CRAFT FAIR MASSACRE』
「クリスマス・クラフト・フェア」というのはアメリカのバザーみたいなものだそうで、地域の人が各種のクリスマス飾りやクリスマス服などを作ったり押し入れから引っ張り出してきたりして学校の体育館とかで売るらしい。そのクリスマス・クラフト・フェアで大虐殺が起こるとしか思えないタイトルだが起こらなかった。それ以前に映画の9割は台詞を喋る人物をカットを割ることなく(そのため途中でカンペを読んだりしている)正面から撮ったあまりにも芸の無いショットで構成されていたので、そのスーパー素人映画っぷりにスーパー素人映画など何十本と観てきているはずなのにまだ驚く。いったいスーパー素人映画に底というものは存在するのだろうか?
とにかく面白くないので面白くないとしか言えないが、英語がよくわからない俺の耳にも明瞭に聞き分けられる素人役者(たぶん近所のおじさんおばさん)たちのド棒読みっぷり、スーパーナチュラルな能力を持った地元の人たちがテレパシーで繋がって悪魔の誕生を目論む地元の邪教集団と戦うというスティーヴン・キング作品みたいな壮大なプロット、最後になって急に邪教集団の人々の頭がサイキックパワーによりCG爆発し悪の巣窟がCG核爆発を起こして消滅するのでびっくりするラストなど、スーパー素人映画ならではの見所は少なくない。ちなみに邪教集団が使役する殺人鬼は作業ツナギに白仮面というマイケル・マイヤース風スタイルだったがそれはクリスマスじゃなくてハロウィンだろ。
『INFINITE SANTA 8000』
人類文明が崩壊してから早数千年…もはや地上に人類の姿はなく、荒廃に荒廃を重ねたマッドマックスな世界はロボットとミュータントが支配していた。そんな世界の片隅でやさしい心を持ったロボ少女と慎ましく生きていたロボサンタを、悪のマッドサイエンティストが操るイースターラビットが襲撃。マッドサイエンティストの目的は不死の生命を作ること、そしてその秘密はロボサンタにあったのだ。マッドサイエンティストにロボ少女を攫われたロボサンタは彼女を取り戻し世界に再びクリスマス精神をもたらすために、ジェットロボトナカイと共に立ち上がる!
どのへんに需要があるのかよくわからないのだがゾンビ映画界隈では細々とFLASHアニメ映画が作り続けられており、ゾンビ映画ではないのだがこの『INFINITE SANTA 8000』も血がたくさん出るFLASHアニメ映画、メタル音楽をバックにロボサンタがマッドサイエンティスト軍団を血祭りに上げていく。こう書けば悪趣味系映画っぽいのだがクリスマス精神の大切さを説くメッセージ性がこんな世界設定なのに中核を成し、ストーリーは擦れたところのない今どき素朴な勧善懲悪。マッドサイエンティストの手下の殺人ロボたちにサンタがオモチャのプレゼントを渡すと殺人ロボたちがニッコリ笑顔、コピペで100体ぐらいに増えた改心殺人ロボ軍団がマッドサイエンティストに突撃しロボサンタが「これがクリスマスの力だ!」と叫んだりする。ヘタウマな絵柄と稚拙な動きも相まって「この設定でそれやる!?」という食い合わせの悪さがだいぶ異様である。
基本的に絵は下手だがロボトナカイや殺人ロボは結構可愛らしくロボサンタとのやさしさ溢れる交流はクリスマス的ハッピー感ありあり。ミュータントに関してはロボサンタは慈悲の心を一切持たないのでシュワルツェネッガーみたいにぶち殺しまくり血が乱れ飛ぶが、巨大イースターラビットロボも登場したりしてオモチャ的な楽しさもあるので、エロとかも一切ないしこれは一応子供向けなんだろうか? 原画の枚数は少ないのでFLASHアニメというか紙芝居に近い感じだし。手法、題材、主題、演出、絵柄、設定…すべてが噛み合っていないクリスマス映画の怪作であった。あとロボサンタがマッドサイエンティストのアジトに潜入するところで2D見下ろし型アクションみたいな画面になってなんかすごかった。