【アマプラ】お気楽北野映画『BROKEN RAGE』感想文

《推定ながら見時間:2分》

北野武最新作はアマゾンプライム会員限定ということでマケプレの古本以外に通販も利用しないし映画もU-NEXTか物理メディアで観ているため昨年アマプラ会員を解約した俺はよくわからんけど有料レンタルの形で500円ぐらい払えば観れるのかなと思って配信ページを開いたのだがそこで再生ボタンを押したら普通に再生できてしまった。あれおかしいなアマゾンが急に改心して非会員にも無料で開放してくれたのか? もちろんそんなわけはないのでアカウントページを確認したところしまった、どうやら解約手続きがちゃんとできておらず、知らん内に会費を払って会員を継続していたらしい。

サブスクとかいう罠のシステムが広く普及した昨今、どこの会社もサブスクを解約させないためにあの手この手と必死である。アマゾンプライムも例外ではなく解約までに何度もボタンをクリックしないといけない仕組みになっているので、どこかで押すボタンを間違えたかなんかして実際は解約できていないのに解約したつもりになっていたのだろう。まったく詐欺じみたビジネスモデルである。こういうのを野放しにしておいて良いのだろうか。ともあれ、そのことに気付かせてくれてありがとう『BROKEN RAGE』。『BROKEN RAGE』があったおかげで今度はしっかりと解約をして無意味な出費を抑えることが出来たので『BROKEN RAGE』はイイ映画である。

こんな前振りじみた書き出しだとそんなわけねぇだろクソ映画だよ! とこれからキレが始まるのだろうと謎の期待をする人もおられるかもしれませんが、そんなことはないのである。まぁイイ映画とまでは言えないにしても悪い映画ではない。てかむしろ好き。観ながら何度も笑った。ただしその感覚が多くの人には理解できないことはわかってる。世間一般が頭に浮かべる北野映画といえばやれ『その男、凶暴につき』だのやれ『ソナチネ』だのやれ『アウトレイジ』だのというあたりじゃあないかと思われますが、俺の場合は初めて観た北野映画が『TAKESHIS’』、その次に観た北野映画が『監督・ばんざい!』である。一般的に北野映画の中のカスと思われているであろうこの2作が、まぁ雛鳥の刷り込みのようなもので、しかし俺には結構面白かった。

むろんその後レンタルビデオや名画座などで初期の北野映画を観ていずれも大変な傑作であることを知り、北野映画の中では『TAKESHIS’』や『監督・ばんざい!』が相対的にしょうもない映画に分類されることは理解したが、まぁとはいえ、しょうもないイコールつまらないではないからな。この『BROKEN RAGE』もしょうもない方の北野映画ではあるが、そんなわけで、しょうもない方の北野映画に慣れ親しんだ俺には大いに楽しめたんである。

映画は前半30分が北野武演じる殺し屋のノワールドラマ、後半がそれをセルフパロディにしたコメディということで、既にその概要からして北野武自身による北野映画のパロディないし分析であった『TAKESHIS’』や『監督・ばんざい!』臭は濃厚である。頭をどこかにぶつけるとか大勢の警官が漫画みたいに群がるとかギャグの昭和的素朴さで言えば北野映画のギャグ路線第一弾であった『みんな~やってるか!』も思わせなくもない。しかしこれらの作品と異なるのは前作『首』でも部分的に取り入れられていたアドリブによる笑いが今回は大々的に用いられ、芸人ビートたけしはもとよりこんな映画にはもったいない名優たちの寄席コント的掛け合いが見られるという点。とくにビートたけし×中村獅童×宇野祥平の掛け合いはノリノリのたけし&獅童に対して受けに徹する宇野祥平の平熱装いっぷり(内心めっちゃ焦ってたと思う)が可笑しくて大いに笑った。

まぁ上映時間63分とかしかない映画だしストーリーがどうとか演出がどうとかそういう話じゃあなく、これはなんか作業でもしながら適当に観て雑に笑う、そんなような作品なんだろう。だからギャグはパッと見て誰でもわかる単純なものだし、ストーリーの流れを寸断するお笑い的なアドリブ合戦も全然使う。そのへん配信限定(そしてアマプラ会員なら無料視聴)という前提をきっちり踏まえて作られた映画と見えるので、腐っても北野武、やはりクレバーな映画作りをしているなと思う。まぁ本人が気楽にふざけながら撮りたかっただけという可能性もありますが。

とはいえ、じゃあゆるゆる映画なのかといえばそういう感じでもなく、前半30分のノワールドラマパートに見られる血の通わない殺人描写の数々には北野武の映像美学がしっかり刻印されて、脚本はおそらく意図的にチープであるにもかかわらず、あくまでも前半のノワールドラマパートに限ればなんだかんだ部分部分で強いサスペンスが宿っていたりする。とくに錦鯉の長谷川雅紀を殺すシークエンスはよくできていた。あんな良い殺しがまだ撮れるんならこんなんじゃなくてまた『3-4×10月』みたいな体温ゼロのヤクザ映画撮ってよとか思ってしまったので、センスが良いというのは必ずしも映画にとってプラスにはならないのかもしれない。なまじそこが良くできているものだから笑うに笑いきれなかったという人もいるんじゃないでしょうか。

ま、こんな映画は長々と感想を書くもんじゃありませんな。適当に観て適当に楽しむ。これはただそれだけの映画。ただそれだけの映画として、俺は面白かったです。

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