ジェネリック・ダルデンヌ映画『Playground/校庭』感想文

《推定睡眠時間:0分》

小学校に入学した7歳女児の学校での不安だらけの日々とそこで彼女が目にする社会の残酷さを描くベルギー映画ということでかなり面白く見応えがあったのだが困ってしまうとても困ってしまうどうしよう。監督のローラ・ワンデルという人はどうやらこれが初の長編映画らしいのだが…いやあまりにもダルデンヌ兄弟テイストすぎないか!? 手持ちカメラのTPS的カメラワークにしても劇伴をつけずに効果音を強調するサウンドトラックにしてもリアルでドライな人間社会を捉えたシナリオにしても過度な芝居をつけないナチュラルな演出にしてもそれら全体から醸し出されるドキュメンタリーのタッチにしてもとにかく随所に感じるダルデンヌ既視感、しかもダルデンヌと同じベルギーの映画とくればこれはジェネリック・ダルデンヌと言われても仕方がない。それほどまでにこの映画『Playground/校庭』、ダルデンヌなのである…。

そりゃまぁダルデンヌに比べれば扱う問題は学校内でのイジメということで小さい話と言えるし全編を主人公女児の目線の高さに合わせたカメラポジションにキープして子どもの見る世界を観客に体験させる点は基本的に大人を主人公とするダルデンヌ映画にはあまりなかったこの監督のオリジナリティと言えなくもないのだが、そうだとしてもその他の部分が本当にダルデンヌ映画に似すぎだし、ダルデンヌだって今のところの最新作『トリとロキタ』は小学生ぐらいの子供二人を主人公としていたからその数少ないオリジナリティもかなり危うい感じである。本当の意味でのオリジナリティなんか存在しないことぐらいわかってるし、オリジナリティなんかなくたって面白けりゃ良いっていうのはそれはそう。だがしかし…いや、ホントにめっちゃ似てるんだって! ホントにめっちゃダルデンヌだからなんかすごいモヤるんだよ! これが新人監督の初長編映画でなんとか映画祭で評価されましたみたいなことを言われたりすると!

しかしそんなことばかり言っているのも芸が無い。うわー知識自慢したいシネフィルのいちゃもんだ~とか思われたくないので(そう思うやつはダルデンヌの『息子のまなざし』とか『ある子供』とか観ろって! マジで超スタイル似てるから!)もう少し建設的な話をすると、そうだなぁなんていうか、これベルギーの学校のお話ですけど、映画を観る限りでは教師の管理とか関与は最小限で子供の自主性を尊重する教育スタイルっぽくて、でもその中で結構深刻なイジメが教師に見えないところで起きてたりして、よくイジメは同調圧力によるものだから日本の学校はイジメが多いみたいなこと言われたりしますけど、同調圧力がなかったらなかったで弱肉強食の世界になって結局イジメが発生するんだよな、子供って残酷だから。

最近『小学校 それは小さな社会』っていう日本の公立小学校のドキュメンタリーが海外の映画祭で話題を呼んだみたいな話あったじゃないですか。『Playground/校庭』観たらさ、なんかその理由がちょっとわかった気がした。『小学校 それは小さな社会』にこの映画みたいな個人主義に根ざした弱肉強食型のイジメって出てこないんですよね。撮ってないだけでたぶん実際には同調圧力型のイジメも弱肉強食型のイジメもあるんだろうけど、まぁたぶんここまで深刻なレベルではない。だから日本の学校に比べて個人主義を取っているが故に発生する頻度や深刻化の率が高いかもしれない弱肉強食型のイジメであるとか生徒間の不和がおそらく大きな課題となっている欧米の公立小学校にとって、『小学校 それは小さな社会』に出てくる日本の集団主義に基づく協調型教育はだいぶ魅力的に映ったんじゃないか。もちろんそれは幻想って面も強いわけですが。

そういうことを考えさせてくれる映画でしたね『Playground/校庭』。子供目線で見る世界の巨大さとわけのわからなさ、その怖さと不安。連鎖していくイジメと刻一刻と加害者と被害者が移り変わっていく不安定な人間関係。ここまでのものではないが、あぁでも、小学校入りたてぐらいの頃って学校がこんなふうに見えたかもな、こんな感じの緊張があったかもと思い出す、過酷でリアルな子供映画として良かったとおもいますただすごくすごくダルデンヌ…!

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