《推定睡眠時間:0分》
ジョニトー映画といえば太っちょラム・シュの食いっぷりと滝本誠か誰かが言っていたのですがなんと今回はルイス・クーに怒られてごはんが食べられなかった!
一大事だ。重症を負った強盗ウォレス・チャンから共犯者の名を聞き出すため舞台となる病院にやってくる刑事の一人が今回のラム・シュだったのですが休憩中に買ってきたマクドナルドを没収されたうえチームから追放されてしまった…そのうえ意識の高そうな知らないデブが派遣されてきて職務を代行してしまった!
そういえば初登場シーンでちょっとした笑いを取ろうとして完全に無視されたりもしてコント「ひとりPTU」をさせられるなどジョニトーのラム・シュいじりが半端なかった『ホワイト・バレット』の感想です。
あのでも思うのですがこれはなんていうか銃撃戦やってるんだから別になんでもいいっしょみたいなジョニトーの開き直りなんじゃないかという。ラム・シュに飯を食わせない今回はカメラの後ろで次はどう遊ぼうか悪だくみしてしているジョニトーの顔が見えるような気がしましたね…。
病院での銃撃戦のキーワードを聞いて『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』が導き出されましたが見たらそんなことはなかったです全然違う方向行ってましたなにこれわけわかんないよ。
でもクライマックスの銃撃戦、というかカタストロフは確かにおおーってなってしまったのでなんか悔しいぞジョニトーちくしょう。
とにかく妙なお話で重症の強盗犯を追って刑事たち病院へと聞くとありがちな感じですし最後に銃撃戦ということはこの強盗の愉快な仲間たちが武器を携え病院にやってくるわけですからそれもありがち。
ところが。強盗VS刑事の構図は病院大騒動の一面に過ぎなかった。むしろ話のコアはちょっとだけ柴咲コウっぽいヴィッキー・チャオのエリート女医にあって、あやしい患者どもを通して職業倫理が云々みたいな展開になったりするので犯罪アクションていうより医療群像劇とかそういう感じ。
いやこんなシュールな状況設定で医療ドラマと言われても困惑するが『奪命金』だってジョニトーにとっては金融ドラマなんだから…あれも最後に銀行強盗でも出して銃撃戦やっとけばよかったのになぁと思いますねそういえば。
押井キャラばりの引用台詞を垂れ流すウンチク強盗と刑事たちの奇妙な心理戦の傍らで退院間近のためハイになった患者ロー・ホイパンがひとり大爆笑してる。同じ病室には手術の失敗で執刀医のヴィッキー・チャオを劇的に逆恨みしている患者もいてよく暴れる。手術を前に死を覚悟する患者がいる一方で片時もPCから離れようとしないゲーム中毒の患者が充電のためのコンセントを探してうろついて、そりゃあこんなの相手にしてたらおかしくなるよなと思うんですがヴィッキー・チャオの葛藤と混乱が頂点に達したときに病院は崩壊するのだ!
これはちょっと要約が難しいな…。
伏線というか伏流。お話の大事そうな部分が表面から取り除かれてしまっているようではあるのですがなにやら脈々と水面下を流れるものはあるらしく時折それが顔を出して連鎖し論理の外側で密かにカタストロフを暗示するまるで謎かけのようなこれはなんだかいかにも意味ありげなナンセンスの具合からしてルイス・キャロルみたいなものかなぁと思いつつ空気感に西洋皆無。
あのウンチク強盗を見ていたら故事なんじゃないか感がでる。教訓めいてはいるがなんの教訓なのかは最後まで見ても全然わからないので荘子のようなものなんだろうか。
あとロバート・アルトマンの『ショート・カッツ』とか語りが似てるなと思いましたがあの雑多散漫冗長な3時間をほぼひとつの病室だけに凝縮して2時間弱で展開することを考えたらすごい映画です?
前衛舞台劇の如しですがそういえばアルトマンも舞台劇と親和性ありますしアルトマン『三人の女』に対してジョニトー『MAD探偵』という感じで…意外と共通するものがある。意外と。
これから開頭の怪盗ウォレスが手術室で(麻酔したのに)大立ち回り。おそろしい男だったが医師看護師ひるむことなく抑え込みにかかったので香港人ファンティング気質を見た。
「キー」を集めるロー・ホイパン。口笛に誘われるラム・シュ。マックの袋のイメージ転移はちょっと鳥肌。そして唐突な銃撃戦カタストロフとこれはなんだか夢うつつのお戯れおもしろ映画。
ちなみにラム・シュの代理を務めた意識高いデブですが短い出番ながら破壊力の高い顔芸を披露していてぶっちゃけマンネリ気味のラム・シュより面白かったですし役柄的にもラム・シュよりストーリーに貢献していましたね…どうなるラム・シュ。
【ママー!これ買ってー!】
でももう正直どんな映画だったか覚えてないんですがなんかとにかく病院を壊す、壊す。
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