戦慄のモデルショック映画『ネオン・デーモン』の感想

《推定睡眠時間:5分》

うへぇきもちわるい。美で血を洗うモデル業界ランカーバトル腐乱編なので目玉ゴロゴロ生血ドロォのゴア描写もさることながらフラッシュ焚くストロボ焚く、かなり前の方で見たのですが慢性的な眼精疲労もあってこれに気分が悪くなってしまった。我慢できずに何度か目をつむってやり過ごしたのですが無視して見ていたらポケモンショックのような症状に見舞われていたかもしれないのであぶない。
最近流行りの大音響上映などに関しても…健康被害はないかと心配してしまうんですがストロボ演出、絶対に目に悪いと思うしあともうぶっちゃけ陳腐化してしまっていると思うのでこういうのやめたらどうすかねと何様的な苦言を呈したところで『ネオン・デーモン』感想だもん。

あの本当にですね新興国はどうか分かりませんけど日本を含む先進国ではですねこれから映画人口が増えるなんて考えられないので必然的に客層の高齢化が進むわけじゃあないですかそしたら健康問題は無視できなくなってくるんじゃないすかねやっぱり。
二時間イスに縛り付けられて暗闇の中で明滅する光を眺め続ける、これ健康に良いはずないですよ。っていうか拷問ですよね。『ネオン・デーモン』は映画草創期からの老舗ゴーモン社が製作に入ってるらしいんですけど、そういえばほら駄洒落を頻繁に言うようになったら脳がダメになってきていると言う脳科学者もいるらしく…とにかく映画が健康にどのような影響を与えるかそろそろ真剣に考える時なんじゃないかと思うのですが華麗なるモデルムービーにして加齢により感想が疲労している。とにかく血みどろとストロボに疲れちゃったので…。

それでまぁ俺がまずおもったのはなんですかねなんなのかなあんまりおもしろくなかったな。っていうかあんまり印象に残ってないな。かなり変な映画なはずなんで忘れそうにないんすけどね…。
なんか田舎からモデル志望の女の子がロサンゼルスにやってきて。それがエル・ファニングなんですけど。この人に目とツバつけんのがメイクさんのジェナ・マローンで、こいつ処女だな食っちまおうみたいなことでこの肉食系の人はエル・ファニングをモラル的には堕落させながらモデル的には成長させていくんですがそういえばクーガみたいの出てくる謎シーンがあったから駄洒落みたいな映画なのかもしれない。モデルを食うが。

でエル・ファニングはスター街道を歩み出すわけですが桜の木の下には屍ありということで段々と被害妄想が芽生えてきて恨みとか嫉妬とか買った誰かが自分を殺そうとしてんじゃねぇかと強迫観念に囚われるようになる。
自分が自分じゃないようにも思えてきてウーマン・トラブル、アイディンティティ・クライシス。これらすべてが混じり合ってやがて現実と妄想の境界溶解、妖怪と化したモデルたちの血の饗宴で目玉ゴロゴロ内臓ゴロォと大崩壊エンドになだれ込むのでした。うわぁグロイえげつない。

こうやって書くとこれは濃い明らかに濃いのですがなんで印象薄いのかなぁと考えるに意外とこれだっていう決めカットがなかった(ように俺は感じた)からかもしれない。火花散る楽屋でのモデル会話など目が離せませんでしたし目玉ゴロゴロ、にはうえぇってなりますが…でもそれ最後の最後だしグロ過ぎるわけでもないしなぁ。楽屋会話もすぐ終わっちゃったし。
ていうかあえてそういうものを見せないタイプの映画ではあるらしく決定的な場面や説明をかなり省いてたりする。いや俺は思うのですがそれやっちゃうとさそれやっちゃうと後はもうセンスだけで勝負みたいな話になっちゃうじゃないすか。
だからこういうタイプの映画は結局はセンスが合うか合わないかでしか語れないわけで…つまり俺はちょっとこのセンスは合わないっていうかこれカッコつけすぎてダセェなみたいな感じだったわけです。だいたいエル・ファニングの魅力に最初から最後までピンと来てないので…。

なんか色んな映画オマージュがあるっぽくて『サスペリア』(1977)だダリオ・アルジェントだ、と言われたらなるほどなぁってなります。たぶんあれはこうだろうなと思ったのは腐乱系死体が出てくる場面があったのですがこないだこの監督の『ブリーダー』(1999)っていう映画を見たら悪趣味フランケンシュタイン(3D!)『悪魔のはらわた』(1973)の映像が引用されていた。たぶん今回もその引用もといオマージュじゃないすかね。

画質の粗さ、シンセサウンドなど含めて全体のムードは広く70年代ジャーロ/イタリアンホラーっぽいものを再現しようとしているように思え…ルチオ・フルチの『幻想殺人』(1971)あたりのやさぐれ感なんか取り入れているんじゃないかという気もするのは『ブリーダー』が映画オタク趣味全開の映画でビデオ屋のオタク店員マッツ・ミケルセン(!)がオーソン・ウェルズとかタルコフスキーとか巨匠ネームをただただ読み上げるだけのオタク長台詞、その中にフルチだアンディ・ミリガンだ俗悪巨匠の名も(たしか)ちらほらあったはずだから。
エル・ファニングの心象風景として幾度も挿入されるトライアングルの醸し出す妙なチープ感なんかこういう俗悪映画らしさを狙ったのかもしれない。俗悪趣味の一方でデヴィッド・リンチとかキューブリックのベタなオマージュもたぶんあり。『ブラック・スワン』(2010)は、見てないからわからない。

いやまぁ色々あるのでしょうがそれでおもしろくなるのっていうもんで…でも作ってる本人は楽しかったとおもうのでなんかほっこりしてよかったです。あとこのエンドロールは超読みやすかったのでそこ素晴らしいとおもいましたこれほかの映画でも真似してくれないかなぁ。

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これは…この表現はほぼそのまま『ネオン・デーモン』に当てはまってしまうのでは…ということはオタク的オマージュも全開の『代官山ワンダーランドHORROR』は実質的に予算のない『ネオン・デーモン』なのでは…だとすると『ネオン・デーモン』のキアヌ・リーヴス特別出演は『代官山ワンダーランドHORROR』の蛭子能収ゲスト出演に相当するのでは…!

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