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苦手なんだよなマイケル・キートン。あの、所作のひとつひとつの記号化されたというか、意味のない動きのない合理化されたというか、思考と挙動の一致だけを目指すかのような、つまり過剰にアメリカっぽい超アメリカを体現したっぽい演技が…わりと生理的に嫌。
でもそれで良かったというのが『ファウンダー』で。マイケル・キートンすごいキモいんですけどいいんですキモい男の話だからな。成功の二文字に目を爛々ギラつかせた思想も哲学もなにもない中年のハッタリ屋がキモくなかったらおかしいでしょ。
芝居を徹底すればするほどキモく白々しく身体が空洞化していくかのようなマイケル・キートン・メソッドがマクドナルド・コーポレーション創業者レイ・クロックの再現を超えてみんな大好きマクドナルドの擬人化になってしまう、これはなんだかやり過ぎの感で面白いそして風評被害的にマクドナルドがキモくなる『ファウンダー』なんである…いや別に風評被害ではないな創業者の話だし。
でもどうなんすかね、創業者もの伝記映画ってなんか知らんけど色んな利害とか絡むから公平な立場で映画にするの難しいじゃないすか。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャル・ネットワーク』とかザッカーバーグからクレームかなんか付いてた気がするし、若かりし頃のスティーヴ・ジョブズとビル・ゲイツが題材の『バトル・オブ・シリコンバレー』とかあれ双方配慮の結果かもしれませんが悪辣に描かれ過ぎてないかどっちも。いや、実際悪辣なんだろうけど。
創業者ものじゃないですが『ザ・ハッカー』ていうケビン・ミトニックと下村努の実録ハッカー対決映画とか…あれ超カッコ良くて大好きですけど(※ミトニック派)下村努の回顧録を原作にしてるから下村サイドに都合良すぎない的なクレームがミトニック側から入るかのと思いきや、原作にクレジットされているのは下村回顧録だがシナリオの大部分はクレジットされていないミトニックの手記から剽窃されていたとかそんな感じの斜め上クレームが発生したとかしてないとか、うろ覚えですが。
『ファウンダー』は原作がレイ・クロックの自叙伝らしく、でもなんかその割にはやたら内容が黒い。クロックに騙された格好のマクドナルド兄弟サイドにも取材はしてるんでしょうがそれにしてもって感じ。読んでないから分からないけど本当にこれ原作自叙伝準拠なんすかね。
いやまぁ映画を見る限りではクロック、これぐらいの事は武勇伝として誇らしげに語ってそうな気はしますが。なんか、もうよくわからんな。壊れた人はわからないのよしょうがないよ。わかれない人をわかろうとして、マクドナルド兄弟はまんまと食い物にされてしまったのだから下手にわかろうとしない方がよいに違いない…これは黒沢清なんかが執拗に描き続ける例のサイコパス恐怖の図式だなしかし。
ほんでその黒いお話はどういうものかと言うと、売れないミルクシェイク用のマルチミキサーを抱えて全米を走り回っていた押しの強いセールスマンのレイ・クロックが高度にシステム化された次世代ハンバーガー店マクドナルドを営むマクドナルド兄弟と電撃遭遇。
ミキサーは食えないがこれは食える! と思ったので巧みかどうかは映画を見る限りではよく分からない話術でもって即刻フライチャイズ展開は俺に任せろ契約(なんて言うんですかこういうの)を結ばせる。これが1954年のこと。
自分たちの天才的アイディアが全米に広がると言われれば、かつては映画ビジネスを夢見ていたマクドナルド兄弟も悪い気はしない。どんどんフランチャイズを拡大して全米をお馴染みのゴールデンアーチで埋め尽くさんとするレイにマクドナルド兄弟も最初はすげーなあいつってなってたが、ふと気付く。なんか俺たち蚊帳の外っぽくない?
ってわけでもう店舗数を増やすことしか頭になく勝手にマクドナルドシステム(現マクドナルド・コーポレーション)を設立して創業者を名乗ったりする暴走レイとそんな彼にお前ちょっと落ち着けよと言いたいが全然聞いてもらえないマクドナルド兄弟の戦争が始まるのだった。
戦争って別にマクドナルド兄弟なにも攻撃してないけどね。映画の中では。
創業裏話ものとしてはテンポが良くて明快そのもの、目と脳にやさしい説明的シーンを機械的に積み重ねる構成がファストフードを感じさせたので内容は体(スタイル)を表すの典型的アメリカ映画という感じある。
曖昧で複雑な『ソーシャル・ネットワーク』みたいのとは真逆よね、と何気なく書いていてふと思いましたがザッカーバーグも依頼主の兄弟と権利関係で揉めていたな。なかよし兄弟と狂った一匹狼、天才エンジニアと豪腕政治屋、の組み合わせがなんか知らんけどアメリカっぽい。
エンジニアというのはマクドナルド兄弟の弟(ニック・オファーマン名演でした)がエンジニア的な役割を果たしてたんである。
どういうことかと言うとテニスコートに実寸大の厨房設計図を描いて、実際の運営に必要な数のバイト君を雇って設計図の上で動かしてみる。それでハンバーガー提供までの時間を測って、問題があったらその場で設計図を修正、また実験というのを繰り返す。
それで出来上がったのがマクドナルドの基礎となる例の超合理的システムだったわけですが、このへん『ファウンダー』のすごい面白いところで、なにかフォーディズムとスピードの時代からそれこそ『ソーシャル・ネットワーク』みたいなシミュレーションとデータの時代への分水嶺としてマクドナルドの誕生を捉えているようなところがある。
店舗の合理化と無駄の削減でスピードを追求した先でシミュレーションによる極限までの加速法を見出してしまったマクドナルド兄弟と、来る日も来る日も自己啓発レコードを聴き続けて(行動速度を遅らせる)マイナス思考を追放した先で成功者のシミュレーションイメージの中に逝ってしまったレイ・クロックのアメリカン・ドリーム泥仕合が示唆するものは案外ふかい。深いなのか不快なのかは各自考えてください。
あと良かったのはローラ・ダーンと老婆ダーンの分水嶺もしっかりカメラに収めているところですね。『ツイン・ピークス』はやくみたい。
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『ファウンダー』のキャッチコピー「怪物か英雄か」みたいな感じだったんですけどなんか『ソーシャル・ネットワーク』もそんな感じじゃなかったですか。
ていうか映画見たら怪物は分かるが英雄要素ねぇだろって思ったんですがユニクロの偉い人とかがレイ・クロック激推ししてんすね。それで怪物か英雄かなんだな。なるほどー(棒)
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