《推定睡眠時間:0分》
この映画の中でも鳥人間コンテスト出場の二人乗り人力飛行機で人力飛行機部エースパイロット・間宮祥太朗のアシストをしているわけだから土屋太鳳のアシスト能力の高さは理解しているがそれに甘えてアシストさせ過ぎじゃないか!? 映画で見る土屋太鳳、人に気を遣ってばかりいるしオラついたイケメンにオラされてばかりいるし(親が)お嫁さんにした気立ての良い女の子的なキャラクターばかり献身的に演じているが如何なものか、如何なものか! もっと出来るだろ土屋太鳳! 表現の場さえ作ってやれば!
ていうフェミニスト的問題意識から今年もっとも期待していた土屋太鳳ムービー『トリガール!』は予告編で見た土屋太鳳が弾けた芝居をしていたし難病とか涙かせ系の映画じゃない青春コメディというだけで土屋太鳳的異色作なのでこれは来たなついに土屋太鳳がその名の通り羽ばたく映画来たなとテンション上げて全力で見に行ったら記録0メートルで落水した。
でも逆に貴重な映画かもしれないとは思ったよな。これはなんか、今時こういう映画成立すんのみたいな。なんていうかね、結論を先取りガールすると読売テレビ製作の映画で題材が鳥人間コンテストなんだけどこれ見たら鳥人間コンテスト嫌いになるよ! 鳥人間コンテスト目指したくもなくなるよ! ていうかお前ら鳥人間コンテストそういうものとして見てんの!? みたいな。
オープニング、バスに乗って大学(初登校)に向かう土屋太鳳。なにかとんでもない表情をしている。「メガネ…メガネ…メガネ!」。バスに乗っているのはメガネ男子ばかり。土屋太鳳の受かった大学は理系だったのだ。理系=メガネの発想には小疑問符が付くがそれはともかく土屋太鳳はメガネ圧に堪えきれずその場でバスを降りてしまう。
こんなメガネに囲まれて通学なんかできるわけねぇじゃん…素直だが酷い土屋太鳳の前に現れたのはロードバイク乗りだった。彼こそは人力飛行機部の部長にしてパイロットの爽やかイケメン高杉真宙か間宮祥太朗であったがあんまりちゃんと見ていないからわからない。
わからないがまぁとにかく土屋太鳳は一瞬でロードバイク超かっこいい女子と化す。メガネなんかより断然ロードバイク! ロードバイク乗りはメガネ人間たちを乗せたバスを片側一車線道路で追い越すとバスの前に躍り出し(危ない!)両手を離してロッキー的な俺は勝者だポーズを取るのだった。
なんか内容がたかが知れすぎるゲンナリ幕開けだがでもそういう最悪な人間が変わって行くんでしょみたいな映画博愛主義的反論には最後まで土屋太鳳のメガネきもい的な偏見は変わらないしていうか自分が乗る人力飛行機を作ってくれてる技術班のメガネ達とはたぶん一言も会話しないし高杉真宙か間宮祥太朗の危険運転を受け継いで終わりますっていうネタバレはしておきます。
あとこのオープニングがバス通学とチャリの危険運転っていうのはこの間の太鳳ムービー『兄に愛されすぎて困ってます』も同じなのだが一体なんなんだ。流行ってんのか危険運転。
チャリで走りたくなった(あとイケメンに会いたかった)土屋太鳳は人力飛行機部に即入部。「君、良い身体してるねぇ」とかいう高杉真宙のイケメン無罪で押し通せるか微妙なセクハラ発言も土屋太鳳は気にしないし逆に喜んでいたからものわかりのいいひとです。
土屋太鳳は漕ぐことしか考えていないが飛行機は庭に種蒔いといても出来上がらないので自分たちで作らないといけない。作ってくれるのは技術班のメガネくんさんたちなのであったがバスとか教室で見た時は気持ち悪いだけだったし新歓の時は電車部の人が電車ごっこをして走り回っていたりした(どういうこと?)危ない人たちも実は物作りしている時は超かっこよかった!
みたいなことにはまったくなりませんからメガネ達はミニオンズみたいに群れて「ですね」「ですね!」「ですね?」「ですね!?」とかリーダーメガネ矢本悠馬の言ったことを復唱するだけでまともな台詞はおろか人格すら与えられず…ってもういいかな! もうわかったでしょうどんな酷い映画か! 基本これだよ! こういう感じだよ!
それはまぁ人力飛行機のパイロットのみに焦点を当てる鳥人間コンテスト映画というのも? そういう切り口は? 面白いかとは思うが、堪えられないのは切り口ではなくて意識の低さなんだよ。
だって普通さぁ、自分一人の力で飛んでると思ってた傲慢な人が実は自分一人の力だけじゃ飛べないと気付いて人間的な成長を遂げて、それで前よりももっと遠くまで飛べるようになるとか…なんかそういうのやるじゃん。そういうのドラマじゃん。
ましてや鳥人間コンテストでしょ。なんで鳥人間コンテストの映画で技術班の人を完全無視しちゃうの…俺はそこ見たかったよ、どういう試行錯誤があってどういう工夫があってどういう悩みがあって、とか。
別に専門的な脚本にする必要はないわけじゃん。それはさぁ、土屋太鳳がパイロットとしての壁にぶつかった時に黙々と試行錯誤している技術班の人を見て発奮するとかそういうので構わないじゃん。そこで技術班の人と交流して、ちょっとしたお互いの専門分野の話をして、お互い偏見を解くとかさぁ、定番だとしてもそういうのあったらなんかストーリーに厚み出るじゃん。
なんでそれぐらいの体裁を整えようともしないで羽鳥慎一に「琵琶湖のてっぺんを目指す? おかしいですね琵琶湖にてっぺんはないですけどねぇ」とか言わせてお茶濁してんだよしかもスベってんじゃねぇかよそれ…土屋太鳳の親友役の池田エライザとかも全然出てくる意味ねぇしよぉ。
いや、出すなって言ってんじゃないんだって、出すんだったらもうちょっとストーリーに組み込もうとはしろよ、一応見てくれだけでも整えとけよ映画として、っていうのが言いたいの俺は!
なんつーか、全体的にセンスも意識も古すぎ。今時オタクの表現としてメガネとチェックのシャツと『涼宮ハルヒ』って、そんなのある? 反目してた土屋太鳳と間宮祥太朗がゲーセン行ってダンスゲーやったら仲良くなるとか(そして周りの人々も踊り出す)、ダメとは思わないがぜいぜい2000年代前半の感覚だろそれ…。挿入歌がギターウルフとSPEEDとクレイジーケンバンド、これに関しては現代の理系大学生の設定にセンス合わせる気とか100%ないだろ!
なにも時代に迎合すりゃいいというものでもないかもしれませんがー、そういうの意図してやるのと意図しないでやるのとじゃあ全然意味が違うし、俺は後者だと思うんだこの映画は…。
※だいぶスベらされている気はしたが土屋太鳳と間宮祥太朗の掛け合いはおもしろかったです。あと技術部リーダーメガネの矢本悠馬ね。『パトレイバー』の千葉繁みたいなキャラだ。あっはっはー。
【ママー!これ買ってー!】
お子様向けかどうかは分からないがお子様でも見れる人面車アニメでこれぐらいのレベルのお話をやっていると考えると『トリガール!』は胎教用映画ぐらいに対象年齢を下げないといけない。
俺は『トリガール!』をバカにしてるが『トリガール!』も客をバカにしている。深淵を覗き込んだ時に深淵もまた的な。