《推定睡眠時間:15分》
これ見た後に話題の『ジオストーム』も見たんですが気象管理衛星が暴走してスーパー異常気象が地球を襲うというお話でそれはみんな知っていると思うが『ガーディアンズ』のラスボスは超リモコン“モジュール1”によってありとあらゆる電子機器を遠隔操作する怪人、ボタンひとつでミサイル誘導を狂わせたり地上から衛星を操作したりするのであった。
お、お前か! お前だったのかジオ衛星を狂わせたのはッ! 終わったはずの冷戦が映画の中で再燃していた。名画座二本立てを期待したい。
冷戦期の極秘実験によって生み出されそして見捨てられたソ連のスーパー超能力を持つ四人組“ガーディアンズ”がお国のために再結集というのが『ガーディアンズ』のおはなし。
去年のちょうど今頃YouTubeで予告編見てやべぇ超おもしれぇとおもったのですが、いざ実物を見てみたらこりゃあ面白い、予想を上回る面白さだったが予想を上回るチープさだったし予想していた面白さの方向とは全然違っていたな。
予告編でも大々的に使われていたオープニングが超琴線に触れる。在りし日の痛みきったフィルムフッテージ、放棄されたソ連時代の軍事施設、朽ちたレーニン像、からの人体実験イメージ連打。
歌がいい歌が。そこで流れる歌がいい。なんかわりと世界的に売り出されてる映画っぽいのにIMDbでもサウンドトラック情報をカバーしてくれてないしスタッフロールもキリル文字だからなんていう曲かわかりませんでしたがベタに切なくていいんです。
悲しいなぁ、お国の都合で改造されてペレストロイカ以降は封印されたヒーローだ。予告編で見たときよりだいぶベタで安っぽく見えたけどオープニング100点。100点でしょ! おれは今ベタを求めているんだ。
シーン変わって今度は現代ロシアの軍事演習場、なにやら最新鋭の三脚歩行自律戦車のテストをしているがこれがまたレトロフューチャー的でもサイバーパンク的でもあるようなかっこいいデザインで…敵機とかミサイルの接近を察知すると三脚をくるるっと輪状に変形、転がるように緊急回避! か、かっこいい! 強いぞ!
触れに触れてびんびんの琴線をついにブチっと断ち切ったのはそこに突如として現れた謎の男であった。マッチョだ。ハゲだ。上半身裸だ。
マッチョでハゲで上半身裸で背中に着けたバックパックみたいなやつから伸びた伸縮パイプが胸部に繋がっている。なんとなくベイン的な感じだが、男がおもむろに腕を伸ばすと指先から電流が! わぁ! メタルギアのヴォルギン大佐みたーい!
なにかいろいろと既視感があるがかっこいいに既視感の有無は関係ないから。かっこいいは既視感よりも正義だから、映画では。
指先から電流ビリリが出るのは超リモコン・モジュール1の効果であった。ベイン的に背中に背負っていたのはこれである。軍事演習場に突如現れ将軍を含む兵隊どもを皆殺しにしたのち新型三脚歩行自律戦車を強奪して何処かへ消えていったこの男の正体はガーディアンズの生みの親にして実験失敗によりマッチョ怪人化したマッチョサイエンティストであった。
なにかネタバレのように思われるかもしれないが、以上の事情は全部台詞で説明されていたからネタバレじゃない。開始8分ぐらいで教えてくれるから早い。ランタイム89分とかだからそのへん悠長にやってられないんだろうな。
暴走マッチョサイエンティストを倒せるのは今は行方知れずのガーディアンズだけだ。事態の収拾を命ぜられたKGBだかなんだか知らないけどロシア的に強そうな女の人はメトロの奥深くに隠された、察するにソ連時代の遺物を転用した秘密組織パトリオットの本部に向かう。さらりと書き流してはいるがこの地下鉄に乗って秘密基地に行くシーン、切れたはずの琴線またびんびん鳴ってますから。地下鉄の奥に秘密基地だなんて。ロマンの塊か。20人ぐらいしか職員いなかったからしょぼかったけど別にいい。
さてまずはガーディアンズ探しだ。ティアドロップのサングラスが激似合いすぎな強そうな女の人は溌剌として部下に指令を出す。情報を集めろ! 雑誌でもネットの噂でもなんでもいいぞ!
パトリオットの部下たちは優秀なので即座に上司の望む物を見つけてくる。見つかりました! 石男の目撃情報です!(ガーディアンズのリーダーは石を操る能力を持つ)。こっちも見つかりました! 老婆が世界の破滅を予言!
部下たちの働きにうむと頷く強そうな女の人だったがええそれでいいのかよ!? それパトリオット本部じゃなくてもできるだろなんなら家で!
果たしてそれでいいのであった。本人はロシア国外(旧ソ連圏)に隠遁していたつもりらしいがネット情報によって凄まじい早さで発見された石男がリクルートに訪れた強そうな女の人に告げる。俺はもう戦わない。返す刀で強そうな女の人も言う。ヤツ(マッチョサイエンティスト)は生きている。その一言で石男は引退を撤回した。決断が早い。
次なるメンバーはカザフにいた。事情はなにひとつわからないが荷台に機関銃を積んだギャングらしき男たち(一言も台詞がなかったので本当に何者かわからない)と一戦交えた元ガーディアンズの俊足の刀使い(これも何刀というのか知らないが、半月型の湾刀で超かっちょいい)が振り返ると強そうな女の人と石男がいる。一緒に戦おう。よし。早いな!
その次に会いに行くクマ男に至ってはもう強そうな女の人も石男も事情説明すらしない。お前らそれぐらいの軽いノリで再結集できるんなら離散しなくてもよかったんじゃないのか…なんか普通にロシアで暮らしててもよかったんじゃないの…。
その頃マッチョサイエンティストの方はといえば無人戦車軍団を率いてモスクワを制圧していた。いや早いよ! みんなやることが早いしノリが軽いよ! ニュースキャスターのモスクワが制圧されましたって台詞で状況説明終わらせるとかすごくない!? それハリウッド映画でやったら街が壊滅していく様子と市井の人々の危機一髪を細々と描くところじゃん絶対…ざっくりしてるなロシアンヒーロー!
それから5分後ぐらいにはもうマッチョサイエンティストの本拠地にガーディアンズが襲撃をかけているしもうマッチョサイエンティストに捕まっているのでなにもかもがあまりにも早いし計画とかなにもない。
意識を失っている間に結構展開が進んでいた気がしたので15分ぐらい寝ていたかと思ったが、この感じだと本当は5分ぐらいだったのかもしれない。寝ているか意識が朦朧としている間にマッチョサイエンティストのライバル博士が登場、あまりにも早くマッチョサイエンティストの隠れ家から解放されたガーディアンズにムチ状の石とかクマが使う背中に背負うガトリングとかの新兵器を授けて死ぬ。
死ぬ前に博士は強そうな女の人に言い残す。「四人が力を合わせたとき…ガーディアンズの真の力が…」ガクッ。伝統芸能のようなフラグを立てて、他方マッチョサイエンティストの方はモジュール1の電力供給用にいかにも最終決戦の舞台っぽいかっこいい塔をおっ立てて、最終決戦の火蓋が早くも、早くも、早くも切られてしまうのだった。
ランタイム89分はダテではない。映画クレヨンしんちゃんとか映画ドラえもんよりも短いランタイムである…。
ところで結局ガトリング使うんならクマに変身する必要あるのかとか思ったがそもそもクマってなんだよ。目の前にクマいたら怖いけどクマじゃん。他の能力者は超俊足とか透明化とか石を操るとかなのに。ていうか石を操るっていうのもなんだよ。石限定なのかよサイコキネシスとかじゃなくて。
モジュール1で人工知能を乗っ取るとかはわかるがフォークリフトを思いのままに動かすとかどういう仕組みなんだよ。なんか…なんかわりとよくわかんねぇななんだこれ! でもいいんです四人が博士の遺言通りに手を重ね合わせたらスーパービームが出て電力塔もろともマッチョサイエンティスト倒しましたから!
感動したよ。率直に感動したよ、この屈託のなさ。マッチョサイエンティストの「俺は死なないぞー!」っていう捨て台詞に万歳三唱。
これパンフレット買っとけば良かったな。ちょっと情報がなさすぎて本編見ただけじゃ諸々わかんねぇ。なんか元になったアニメとか漫画とかドラマとかあって、その劇場版としか思えない大胆極まる情報の取捨選択っぷりなのに英語クレジットとか見ても原作とか書いてない。なんなんだ。単独作品としてこの作りだったら逆にすごいぞ。
わけわかんないしチープだしツッコミどころは満載。IMDbでもトマトでも壊滅的な評価。はいその通りもうまったく、その通りでございますがぼくは大好きだよガーディアンズ!
マッチョサイエンティストがモジュール1起動しながら軍の車庫を歩くとピコーンピコーンて車両のヘッドライトが点いていくんです! かっこいい! かっこいいだろ! シナリオは落書きみたいなものかもしれないが、いちいちかっこいい画を作ろうとする心意気に溢れてる!
『AKIRA』のスタジアムみたいな感じに無数のコードでデコレートされた決戦電力塔とか最高だ! 敵地にステルス潜入した透明女がサーマルビジョンで見つかって液体窒素で氷像に! 超かっこいいけど100%こどものはっそう!
たぶん! この監督か製作者か脚本家かあるいはその全員、バカなんだとおもう! バカなオタクなんだとおもうよ! いいじゃないですか、バカなオタクの邪気のないB級ヒーロー映画! 続編期待!
【ママー!これ買ってー!】
ウィリアム・H・メイシーがシャベルマンというシャベルで人を叩く恐妻家ヒーローを演じているのでもうそれだけで100点花丸なバカB級ヒーロー映画。