《推定睡眠時間:0分》
とおい昔に読んだスティーヴン・キングの原作はたぶん一巻の中途、キングの別の短編『サン・ドッグ』にストーリー(舞台?)が接続されたあたりで挫折しているので面白くなかった、少なくとも俺の肌には全然合わなかった。
キングが度々やる自作のユニバース展開の中心的ポジションだったはず、ということ以外ストーリーはおろかキャラとか舞台設定とか内容の記憶が丸ごと欠落しているからよっぽどつまらなかったんだろうな…映画で見てこういうストーリーだったのかーって思いましたが参照記憶がそもそも無いから原作がこういうストーリーなのかどうか不明。
映画版に限って言えばあれっぽかったですよあれ、『メイズ・ランナー』の映画版二作目。あれになんか似てた、全体的な印象が。ヤングアダルト向けの健全アクションファンタジーっすね。
なんか時空の中心で宇宙の摂理を支えるダークタワー(エリスン風に言えばクロスホエン?)というのがこの世ならざるこの世のどこかにあって、悪い幻術師のマシュー・マコノヒーはその存在を幻視することのできる特別な資質(シャインとか言ってた)を持った想像力の鋭敏なお子様たちを捕まえては脳力吸引電気椅子にかけていく。
そうすると子どもの想像力がエネルギー弾になってダークタワーに飛んでくのでちゅどーんてなってダークタワー少しずつ傾く。理由なんか知ったことではないが、とにかくそうしてマシュー・マコノヒーはダークタワー=宇宙をぶち壊そうとしていた。
所変わって現代ニューヨーク。キング原作の例にもれず両親が不仲で学校に馴染めない問題抱え少年トム・テイラーはダークタワーの悪夢に日々うなされてたいへん困っていた。彼はスペシャルにシャイニングな少年だったのだ。
トムテが夢に見るのは黒マシュだけではない。詳しいことはまったくわからないが、なんとなく力になってくれそうな拳銃使いも夢に見る。両親は頼りにならない、友達もいない、頼りになるのはあの拳銃使い、イドリス・エルバだけだ。
っていうことで色々あって世界の崩壊を確信した少年は色々あってダークタワーが繋ぐアナザーワールドに旅立って色々あってイドリス・エルバと一緒に世界を救うための戦いに赴いて色々ある。
なんか、短い上映時間の中で本当に色々ありましたよ、色々。アクション色々、敵味方キャラ色々、世界色々。ヤングアダルト映画の範疇でやれることは全部やった(かどうかは知らない)。
特筆すべきはマシュー・マコノヒーの幻術師。これ『ゴッド・アーミー』のクリストファー・ウォーケンの完コピになってた。なんせ天使座りっぽいこともやるぐらいだから確信犯だ。ちょっと額の突き出たところまでよく似てましたよ、ははは。
…つーかやっぱ無茶振り企画だったと思うよ。読んでないけどキングの中でも特に長いやつなわけでしょ原作。どうせ一作じゃまとめきれないし商売にもならないからとユニバース的続編前提の作りを隠そうとしない映画的不実は不問に付すが、シリーズもののエピソード1で普通は説明しておく主人公のキャラとか世界観とか設定とかっていうシリーズの軸の部分がちゃんと描かれないっていう。
もう、なんかさ、こういうもんでしょみたいな。当たり前のようにバケモノがいて、当たり前のように色んな世界(ステージ)があって、当たり前のようにダークタワーが…っていうかダークタワーがまずなんなのかよくわかんないし大して画面に映らないってそれアリなのか。
イドリス・エルバのガンスリンガーもよくわかんなかったな。映画の終盤、一度は銃道(?)を捨てたこの人がついに覚醒して定型的なガンアクション見せ場が始まるが…これがいやに盛り上がらない。
そこに至るまでの内面のドラマがなおざりになっちゃってるから落ちぶれガンスリンガーと覚醒ガンスリンガーの差が見えにくくて、アクション自体はかっこいいのに感情が乗らないって感じだった。
なんか楽しいすけどね、廃墟にオールドスクールな転送機があったり、ペニーワイズが出てきたり(ふふふ…)、ガンスリンガーの『ラスト・アクション・ヒーロー』みたいな世界間ギャップで笑わせたりして。色々やりすぎて色々足りないしとっ散らかってるけどサービスはいっぱい。
『ゴッド・アーミー』の完コピだってあるんだからそれはそれはサービスいっぱいだったよ。そこはかとなくブレラン的な中華系カオスなセットも出てくるし、ガンスリンガーとゴッドアーミーの異能バトルはやっぱ燃える。
クレジットを見ると脚本に四人。筆頭が大作ジャンル映画のベテラン脚本家アキヴァ・ゴールズマンということはたぶん事故案件だろうな。実質的に何人かの共作でもこういうのって大体ベテランの名義になるじゃんクレジット上は。それが四人連名なんだから相当難産だったんじゃない。
こういうサービス精神旺盛な軽いB級は、アキヴァ・ゴールズマン的な子供騙しの大味は、とりあえず飽きずに見れるから嫌いじゃないが、でも『ダークタワー』の映画化とか連作のエピソード1って面では大失敗だろうなぁ。なんか、そういう映画でした。
【ママー!これ買ってー!】
廃墟に転送機といえばぼくが原作『ダークタワー』読んでたのと同じくらいの頃にハマっていた『ペルソナ』の一作目には幽霊屋敷に準ラストダンジョンに繋がる転送機(場)があったなと思い出したので貼るよオリジナルPS版を、アガスティアの木に立ち寄らないとセーブできないからダンジョンで迷うと五時間ぐらいプレイ離脱できないPS版を。
ストーリーもほらなんとなく似たようなものだから…黒マシューと神取も似てるでしょ…それは似てないか。
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