《推定睡眠時間:20分》
アブダクションは記憶の欠落を伴うと言いますがLAに襲来した謎のブルーライトで人類を吸引しまくるジェノサイド宇宙船に主人公のフランク・グリロが吸われたか自分から乗り込んだか、方法はともかくちょうど宇宙船に乗ったあたりから記憶がないのでこれはアブダクション体験。
目を覚ました場面、フランク・グリロと明らかに知らないアジア人がどう見てもLAではないしアメリカ国内でもない異境でバキバキ戦っているところ。
衝撃でしたねいや、確かにインドネシアの闘神イコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンの『ザ・レイド』コンビが宇宙人と闘う映画だとは聞いていたが、聞いて(どんな映画だよ…)と思ってはいたが、その意味では心構えは出来ていたつもりではあったがでもそれどんな映画だよっていう…やっぱ実物見たらガツンと頭殴られるような衝撃あったな。
明らかに知らない戦闘アジア人はもちろんイコ・ウワイスで、俺の中では宇宙船乗った次のシーンがアジアン密林地帯でフランク・グリロと殴り合うイコ・ウワイスということになるので状況の把握できなさがやばいことになっていたが後からストーリー解説を読んでみるとフランク・グリロのせいで宇宙船がラオスの反政府ゲリラのアジト付近に墜落したとか書いてあってどんな展開なんだよ!?感はむしろ増す。
わけはわけらないがしかし脳内はエキサイティンだ。フランク・グリロには一緒に宇宙船から逃げてきた連れがいてそれが赤子を抱いたボヤナ・ノヴァコヴィッチという女優の人なのですがそのボヤナ・ノヴァコヴィッチもフランク・グリロの横で知らないアジアンウーマンと闘っていて(なんなの…)、役柄的にはゲリラ闘士イコ・ウワイスの妹で同志とかそんな感じらしいがこのPamelyn Cheeという人! 読みがわからないがPamelyn Cheeとかいう女優の人!
超好きじゃん。もう、こういうの超好きなんですよ。くノ一みたいなノースリーブで闘ってたもん。民族衣装的なものかもしれないがノースリーブで背中に弓かなんか背負って闘う反政府ゲリラ女闘士とか超好きになるじゃん…。
いやもう正直言えば宇宙船がLAを大掃除する最初の30分ぐらい面白くないんですよ前作でそれ見てるしね大体、それで前作も別に面白くなかったしね…でもラオスに墜落してからの高揚感おかしいだろこれ!
イコ・ウワイスがシラット的なやつでバシバシ闘ってよ、「俺たちが侵略されるのは初めてじゃねぇさ」みたいな素敵な不敵台詞があってよ、それでくノ一的なPamelyn Cheeが颯爽と地雷原を駆け回ってよ、どさくさに紛れてヤヤン・ルヒアンが対エイリアン戦に投入されて…もうなんかわからんが、なんかわかりませんがアガったよ!
いやすごかったですね、PS版『バイオハザード2』の裏編に出てくるタイラントみたいな感じで画面に入ってきたからなヤヤン・ルヒアンとか。
ゲリラの狩り出しに駆り出されて逆にゲリラに捕縛される武装警官役だったが台詞とか二言三言、普通こういうシチュエーションだとゲリラと警官のちょっとした友情の芽生えドラマの一つや二つありそうなものですが一切ないというかいやこれは、拳こそが俺たちの言語だ的なことなのかもしれないが、とにかくエイリアンを殺すためだけにヤヤン・ルヒアンは戦闘現場に投げ出される。
そんな映画はどうかしている。LA住民がまったく歯が立たなかったエイリアンどもをナイフ二本と拳骨でテキパキと捌いていくヤヤン・ルヒアンとイコ・ウワイスとかギャグ路線から格闘路線に転向したジャンプ漫画のパワーインフレで収拾がつかなくなった連載末期を見ているみたいでどうかしていたが、でも作者が筆を投げ始めたそのへんが一番狂っていておもしろかったりするとかそういうのあるからな…これはそのパターン。
なんかもうどうでもいい感じだ。どうせ連載これ以上続けられないからやろうと思ってたこと全部ぶち込んじまえみたいな闇鍋(ダーク)エネルギーがテンションのブラックホールを生み出した。
ここにあるのは事象の地平線ではない。理性の地平線だ。侵略宇宙人と生身で闘うヤヤン・ルヒアンとイコ・ウワイス、宇宙兵器サイコガン(怒られるぞ!)、炸裂する地雷、破壊される寺院、巨大化するこども。正直なところそんなものはどうでもいい宇宙人の正体。
くノ一Pamelyn Cheeに触発されたボヤナ・ノヴァコヴィッチもカーキ色のタンクトップに着替えて闘えば(タンクトップ万歳!)、宇宙人の側だって負けてられんと巨大ロボットで人類側の巨大ロボットと闘う。ロボバトルまであんのかよ! 『覚悟のススメ』かっつーの。何だか知らんがとにかく良しだ。
一応前作と設定を共有しているもののストーリー的な繋がりはない。前作のプロデューサー兼シナリオライターだったリアム・オドネルが前作のストラウス兄弟に代わって監督を務めているから(逆にストラウス兄弟は製作に回った)よっぽど何かが溜まっていたのか。
たぶん本人以外は誰も望んでなかった執念の7年ぶり続編は続編というかセルフリメイクみたいなところがあった。そうかこういうことを前作でもやりたかったんだなぁきっと。
最後はジャッキー映画とかよりもむしろタイ製アクション映画の影響を感じさせる微笑ましいNGシーン集でジャイアントさらば。アツイ。
【ママー!これ買ってー!】
覚悟を完了して原題『BEYOND SKYLINE』そのままにビヨンドに到達してしまったリアム・オドネルと映画に関わったすべての人に。
↓少しも面白くない前作