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中条あやみは演技力の伸びしろがかなり少ない人だと思うが『3D彼女 リアルガール』とかこれとか現実離れしたコミックな世界観の中でフィギュア的なキャラクターを演じるとそのマネキン芝居と化学反応を起こしてなんとなく良い感じに見れる。
劇中で学園祭演目「ロミオとジュリエット」のジュリエット役に起用された中条あやみ演じるギャングの一人娘・桐崎千棘が、これは演技超下手という設定なので演技超下手な人の演技をするのだがその演技が下手という下手の多重構造には唸らされた。
バカにしているだろ、と思われるかもしれませんがいやバカにしているんじゃないですよヘタウマな味があっていいですよねって言いたいんですよ、それがバカにしているということなんじゃないかとは自分でも僅かばかり思わなくもないが…でもいいじゃないですか! こんな現実離れした役は中条あやみぐらいにしかできませんからね!
ギャングの金髪ハーフ一人娘設定はともかく殴ると5メートルぐらい人を吹っ飛ばす、助走をつければ校門を飛び越すぐらいのハイジャンプが可、かつツンデレ可憐な戦闘美少女! その設定をまぁそういうものかと強引に納得させることができるのは中条あやみぐらいなものです!
その中条あやみ、いや桐崎千棘と家の事情で政略恋愛させられることになる出自はともかくキャラ的には平凡な高校生男子・一条楽を演じる中島健人はもっと綾のあるこなれた演技で中条あやみを引っ張る。
なかなか良いコンビ感あったよね、その芝居の関係性が物語上のキャラクターの関係性に上手いこと乗っかってて。
…などと、分かったようなことを真面目な顔で書くような映画だろうか。いやそんなことは断じてないと思います。スナック感覚の学園ラブコメでした。
一条楽はヤクザ一家“集英組”親分の一人息子。当然跡継ぐっしょと組員たちに思われているので坊ちゃん坊ちゃんと玉のように可愛がられているが本人は大迷惑。あぁ、普通の高校生になりたいなぁ。
と、そこへ外資系ギャング“Beehive”のシマ進出の報。楽の知らないところで小競り合いがあったらしく既に何人かの組員が血まみれでギャー。
このままでは抗争になってしまう。それじゃあいかんというので楽の父親で親分の一条一征(宅麻伸)が一計を講じる。
お互いの組の子ども同士が付き合ってることにすればまぁ双方ともに若い衆も矛を納めるだろう…ということで楽ちゃんは彼の言うところの金髪暴力ゴリラ女こと桐崎千棘と付き合わされることになるのでした。
しかし集英組に抗する暴力組織ならBeehiveとかではなくやはり秋田組とか講談会とかではないのか。秋田組と講談会は絶対武闘派で強いと思うんですよ。
そこは漫画の設定だろうから映画に言っても仕方がないがBeehive名前からして強そうじゃないから抗争危機の説得力がないよなぁ説得力が。
いや、ぼくはいちおうこの映画がそういう映画じゃあないこともわかってはいるんです。はい、わかってはいるんです…。
ラブコメとしては週刊少年ジャンプ最長連載らしい原作はたまに床屋とかでチラ読みする限りではもうちょい読者年齢高そうな(3歳ぐらい)気がするが、映画の方はだいたい小4ぐらいから見れそうな感じのマイルド編。
そもそも原作にだってそういうのは基本ないだろうが抗争とかヤクザがどうのとやっているのは最初だけ、千棘が殴ってドーンとかなるのも楽くんと出会う前後のことで後は単にツンデレ化、お色気的な場面は女性タレントの温泉レポぐらいなレベル。
一応高校生の話ではあったが高校っぽいキャラクターも会話もイベントも文化祭を除けば出てこないのでもっと低年齢層にも通じるように的な配慮と邪推。その文化祭だって別に高校特有の…とかそういうことではないのだ。
キラキラにデコったテロップの多用はどちらかと言えばライトコメディ系の少女漫画原作映画の趣。作った人が劇場版『兄に愛されすぎて困ってます』とか『俺物語』の人らしいのでその延長線上の映画なんだろうな。
展開的には楽くんこと中島健人にタイプの異なる美女が次々と寄ってくる「ときメモ」的男子ドリーム感だったがそういうわけで劇場、ヤング女性客が多かった。
美女連中の間でオタオタする可愛い健人くんと中条あやみのファッションショーでしょ。それをキラキラテロップでデコって、島崎遥香とキンプリの人を添えて…みたいな。女子映画だよね。
その島崎遥香の橘万里花、「ときメモ」で言うところの古式さんをちょっと押しを強くしたようなお嬢様キャラだったが、楽くんと千棘そして楽くんが思いを寄せる小咲さん(池間夏海)が形成するトライアングルの外に追いやられて完全なる噛ませ犬化。
原作の人気キャラを可能な限り網羅しつつ強引にまとめたような薄味展開で、だいたい主要三人が押したり引いたりしているだけなのでお話的には起伏に乏しく面白くない。
だから可愛い健人くんと中条あやみのファッションショーが見れたらそれでいいじゃんっていう、結局それに尽きるな。
なんかおもしろかったですよキラキラしてて。あと青野楓は超イイ役なのにほとんど出番が与えられずクソもったいない。
【ママー!これ買ってー!】
そうだ! 歌だ! 何かが足りないなぁと思ったら中条あやみ歌唱の主題歌がない! 『セーラー服と機関銃』みたいにアイドル映画といえばやっぱ本人歌唱の主題歌エンドロールではないのか! 中条あやみの歌声が聞きたいかどうかは別として!
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