《推定睡眠時間:0分》
年初から監督ピーター・バーグ×主演マーク・ウォールバーグのダブルバーグ最新作! いいですね! これはめでたい! スピルバーグもまだまだ現役ですけどこれからの時代はダブルバーグですよ!
なんたって景気が良い! もう銃弾なんてババババッと撒けるだけ撒いちゃって! 舞台どこの国か不明瞭なんですけどどうせアメリカじゃないからっつってドッカンドッカン市街地で爆発させちゃって! 車だってガコーンのゴツーンのドシーンですよ!
しかも客演が『ザ・レイド』のイコ・ウワイスでしょ!? 超シラットじゃん超シラットじゃん!
護送対象のくせに手錠のまま近づく者みなぶっ殺していくイコ・ウワイス! うわぁぁぁ! 戦闘中に瀕死の部下に駆け寄って気遣うのかと思ったら手榴弾を渡して自爆攻撃を促すウォールバーグ! うおぉぉぉ!
これはもう戦争だ! 女子シャワールームにも平気で侵入する鬼畜ウォールバーグ率いるCIAの影の部隊がアメリカの国防に関わる超重要データを持った亡命希望者を護送してたらまったく無関係の一般市民が500人くらい巻き添えで死傷してそうな市街戦が始まってしまった! さすがユナイテッドステイツはやることが尋常じゃないぜ!
大丈夫どうせアメリカじゃねぇから! ここそういうのやってもわりと平気そうな国だから! これが俺たちのUSA! USA! USA!
そんなわけがあるか、という批判精神をしかし汲まなければいけないような映画だったので絵面の景気の良さとは裏腹にどっしり重い後味が。
そうでしたこれはダブルバーグのシリーズ:現代の戦争、最新作。『ローン・サバイバー』、『パトリオット・デイ』と来て『マイル22』の観ですが、ピーター・バーグ的には出世作『キングダム/見えざる敵』と直結する映画でもあった。
上映時間も95分とシンプルな映画であったから、こちらもシンプルに受け取ればこれは大国の戦争ゲームの犠牲となる個人(ら)のお話であった。
FPSみたいにポンポンと人が死んでいく。遠隔操作のドローン爆撃で攻撃までポンポン軽い。しょせん画面に映し出されるのは戦闘員も非戦闘員も関係なく皆が国家にとっての駒でしかないから、国家の都合でアホみたいに軽々しく殺し殺されていくんである。
そこには何のドラマもないし少しの同情も葛藤もない。これが現代のアメリカがやっている戦争の形なのだとピーター・バーグは冷酷に突きつける。
いやなにもこんな派手にはやってないと思いますがまぁ戯画として…だってこれは、このアメリカを守るためのどこぞの外国でのCIAの戦いは現地の一般市民からしたら9.11的な大惨事でしかないから。
国防のための先制攻撃が逆に国家の脅威を生み出す辛辣なアイロニーは『キングダム』で既に描かれたものだが、そのスペシャルDLコンテンツみたいな大サービス活劇編の『マイル22』は9.11とイラク戦争が、未だその影から抜け出せないでいるアメリカの姿があの架空の国のたった22マイルに凝縮されているのだ。
すべてを知る歴代大統領のバブルヘッド人形がニヤケ面を右へ左へふるふる揺らす。オバマの横には同じ顔したトランプが。
最強にクールな中指の突き立て方だったと思う。ダブルバーグは本気だ。
※2019/1/23追記
ちなみにマシンガンなファッキン台詞が飛び交う会話の銃撃戦がものすごい映画でもあった。銃撃戦っていうかマーク・ウォールバーグが腕のゴムをパチパチ鳴らしながら一方的に無差別乱射してる感じですが。
こんなものは笑ってしまうのでハードコアな破壊映画でありつつ芯の通ったアメリカ批判でありつつコメディ色強し。イコ・ウワイスの無茶な闘いっぷりもやっぱり笑ってしまうのだった。
ところでマーク・ウォールバーグが怒りを抑えるために腕のゴムを鳴らす行為とイコ・ウワイスが精神を落ち着かせるために指を合わせる行為は対応するなと今になって気付く。
その点はたいへん重要なので見落としてはいけなかった。あの腕と指の対応はマーク・ウォールバーグとイコ・ウワイスが同類であること示すわけで、この映画でダブルバーグが言わんとすることの全てとは言わないが九割ぐらいはそこにあったのだ。
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ことあるごとにリンクを貼っている『キングダム』ですが『マイル22』はタイトルバックからして『キングダム』っぽい完全なるアナザーバージョンなのでしつこくまた貼ります。
↓ダブルバーグの戦いの軌跡
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