《推定睡眠時間:15分》
原作の『銃夢』は読んだことないのでその意味では感慨もなにもないのですが、『ファイナルファンタジーⅦ』直撃世代、宙に浮かぶハイソ都市とそこに供給パイプで接続された地上のジャンク都市のビジュアルを見て『FFⅦ』のミッドガルとかゴールドソーサーのモデルはこれだったのかぁと感慨があった。
そうか『銃夢』がやりたかったんすねぇ『FFⅦ』のスタッフは。『ブレードランナー』とか『AKIRA』とか色々パクっていやオマージュしたのがあの世界観なんだろうとは漠然と思っていたが、その中核には『銃夢』ありと今更わかってなにか欠けていたピースがピタリとハマった感じだ。そうかそうか、そうだったか。
それぐらいなものなので俺にとっては普通に面白いサイバーパンク系アクション映画でしかなかった『アリータ:バトル・エンジェル』です。
なんか棘がある書きっぷりだが全然悪い意味じゃないですから、もう全然。普通に面白いって普通に出来ることじゃないもん。
いやー2時間ずっと飽きさせてくれないのはすごいですよ。バウンティハンター云々の話があって、ローラーボール的なやつの話があって(結局まともにやらないけど)、アリータの出自の話があって、なんか色々あってね。
原作の良さだろうとは言えサイバーパンク下町やサイボーグ・バウンティハンターたちのビジュアルもすばらし、クリストフ・ヴァルツの演じるアリータ拾ったサイボーグ医とかもかっこいいっすねー。
夜な夜なレーザーハンマーみたいの持って連続殺人事件発生中の街に繰り出すんですがその格好ときたら『クロックタワー3』の殺人鬼みたい!
なんで、よりによって『クロックタワー3』を引き合いに出したかね。でもキャラデザはカッコいいから『クロックタワー3』。キャラデザは雨宮慶太だからカッコいいんですよ…ただゲームとして糞並につまらないというだけで…。
そんなことはどうでもいいのですが『アリータ』の感想大体以上の感じ。これはあれだな今の人が鳥山明とか大友克洋の絵を見てもふーんとしか思わないが当時は革新的ですごかったんだ的な、なんかそういうやつじゃないすかね。
もう、そういうのが当たり前になっちゃったから。原作に思い入れがある人はともかく、そうでない人には普通におもしろかった以上にならないのかもなぁっていうか。
サイバーパンクもののハリウッド映画っていうのもサイバーパンクが股間を直撃した世代が金も人も動かせる歳になってきたせいか近年バシバシやってますしね。もう『JM』とか『マトリックス』の時代じゃないよねぇ。
製作ジェームズ・キャメロン、監督ロバート・ロドリゲス。キャメロン『銃夢』のファンだそうですが映画のトーンはロドリゲスな感じ。竹をぶった切ったようなラテンノリは弱肉強食のサイバーパンク下町デンジャラスになんだかぴったり。酒場の乱闘シーンはどことなく『フロム・ダスク・ティル・ドーン』だ。
そういえば『フロム・ダスク・ティル・ドーン』には股間に特製ミニマシンガンを装着したトム・サヴィーニが出てきたが、あれも無理矢理『アリータ』と結びつけようとすればサイバーパンクっぽいなにかであった(なにかはわかりません)
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タランティーノ×ロドリゲスのある意味『グラインドハウス』前哨戦。
↓原作
仰る通り『FF7』はブレランでありAKIRAでありエヴァでもあり銃夢でもあり、主人公の大剣はベルセルクでありと当時の格好いいものを貪欲にパク…詰め込んだうえで今までのFFシリーズとは全く違う世界観を提示した金字塔でしたねぇ。俺は無印銃夢の中盤辺りから単行本で追いかけてた原作ファンなので今回の映画はもう感慨ひとしおです。
正直期待と不安が入り混じってたけどなんかもうね、まともな精神状態では観れなかったね。映画としての出来がどうとかそういうのを考える余裕もなかった。主人公が拾われてボディを与えられて動いて喋るようになってからは「ガリィだ!ガリィがそこにいる!」と何か終始気持ち悪い笑顔のままで観ていましたよ俺は。もうこれは10代の頃に、もっと言えば押井監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を観る前から原作を読んでブレランくらいしか知らなかったサイバーパンクの世界に導かれた者としてはちょっと言葉にならない。映画を観ながら楽しいとかつまらんとか上手いとか下手とかじゃなくてうれしいという気持ちが前面に出てくるのはいつ以来だろうか。無限の住人とかジョジョとか原作大好きで映画も良かったけど別に映画の中でうれしさに浸ることはなかったな。
愛だけでもいい映画は撮れると思うし、技術だけでも金だけでも出来のいい映画は撮れると思うけど愛と技術と金と、さらにそこに原作付きの場合俺のような原作好きな観客が加わればこういう映画体験になるのかと。ありがとうキャメロンとしか言いようがないですね。『アバター』の宣伝のときに銃夢のTシャツを着ていたんだけど誰も突っ込んでくれなくて自分で「これは日本の超クールなコミックのTシャツなんだぜ」と言ったけど苦笑されて流されたキャメロンありがとう。彼はオタクの本懐を遂げたなと思います。
あと攻殻と比べると攻殻は大企業の巨大なサーバールームとかを連想するようなサイバーパンクなんだけど銃夢は鉄錆と油の匂いがする町工場みたいなサイバーパンク感なんですよね。まぁどっちも好きだけど。
イドが
>『クロックタワー3』の殺人鬼みたい!
という印象なのは面白いですね。多分そこは尺の都合で削ったんだろうけど原作を読むと得心が行くかと。
個人的には続編を望まざるを得ない素晴らしい映画化だったんだけどまぁぶっちゃけ単品の映画としては普通ですね。
熱いっすねー!いやぁ、原作ファンにそれだけ届いてるんならキャメロンも嬉しいでしょう。そもそも原作知らない俺みたいのが見ても面白かったんですからすごい映画です。
『FF』といえば『Ⅵ』も改めて考えると直球で『銃夢』だったんじゃないかというところが多々あり(魔導工場なんか入口をセンチュリアン的なデザインの敵が守ってますね…)、色々と発見がありました、知らないなりに。
鉄錆と油のサイバーパンク。そうか、確かにデジタル志向の『ニューロマンサー』系統とインダストリアル志向の『スキズマトリックス』系統にサイバーパンクは大別できるでしょうが、『スキズマ』系統のサイバーパンク映画はどちらかと言えば『ブレラン』とか『マッドマックス2』の影響が強い80年代後半~90年代のトレンドという感じで、『マトリックス』以降は『ニューロマ』的な表現や世界観に現実のテクノロジーが部分的に追いついたこともあって、そちらがサイバーパンク映画の主流になった印象はあります。
そういう中で『銃夢』の世界を持ってきた、というのはかなり意義深いことかもしれないっすね。
>『クロックタワー3』の殺人鬼みたい!
いやこれはあの、イドの服装が『クロックタワー3』に出てくる闇の紳士っぽくて、持ってる武器は最初の方のステージに出てくるハンマー男っぽいなと思っただけなので別に深い意味はないです笑
たしかに『銃夢』的サイバーパンクは『スキズマトリックス』の系統のものでここ十数年の流行から見れば古臭い感じのものですよね。それが今作のヒットによってまた脚光を浴びるようなことがあれば原作ファンというだけでなくSFファンとしても感慨深いというかまぁシンプルにうれしいなぁとも思います。
原作ではこの先アンドロイドやサイボーグを扱ったSFものにありがちな生命に自意識はあるのかとか、自由意志は因果から解放されるのかという大好きだけど面倒くさい方向へ突っ走っていくんだけどキャメロンならきっとそれも上手くエンタメに落とし込んでくれると無責任に信じてる。
続編といえば中国で『アリータ』が大ヒットしているというニュースを見て続編に繋がる希望としてうれしかったんだけど中国って確か農業戸籍と都市戸籍みたいな行政上での区分があるんですよね。それってザレムとクズ鉄町の関係に似ていて中国の人たちには滅茶苦茶刺さる題材なのかもと思いました。
続編やるならザレム(中央)VSクズ鉄町(地方)という構図になるのは明らかだと思うけど共産党的にそれはOKなのだろうかといらぬ心配もしました。
>農業戸籍と都市戸籍みたいな行政上での区分
そんなのあるんですか。知らなかった…でも確かに都市と農村の格差がどえらいことになっているとは聞きますし、クズ鉄町人のメンタリティとは共鳴したのかもしれないっすね。
全然別の映画ですけど『世界で一番ゴッホを描いた男』っていう大都会深圳の一角で複製画を描き続ける職人を追ったドキュメンタリーがあって、外に出れば『ブレードランナー』みたいなSF的高層ビルが建ち並ぶ未来都市が目の前に広がっているのに、この職人は本当に貧乏で飯を食うのが精一杯だからその世界には決して足を踏み入れることができないなんですよね。
その感じかなぁって思いました、クズ鉄町の住民たち。
検閲は、たぶんこういうフラストレーションを晴らす類いの映画なら問題ないんじゃないすかね。ガチガチの検閲っていうか実際は大して機能してなくても一応存在することに意味がある的なソフトな検閲だと思うので。
そういうのは問題ないと思うんですが、反愛国的なものに対しては中国のネチズンとか民間企業は自主的にスクラム組んで排除にかかる傾向があると言いますから、外国の映画製作者はそっちはかなり気を遣うと思います。まぁ、『アリータ』は大丈夫だと思います笑
初めまして。
アリータ面白かったですよね。私は原作も無印1巻から最新刊まで追いかけてるファンですが、大満足でした。「日本の漫画をハリウッドが実写映画化」っていうとあんまり良いイメージが無いのでちょっと不安だったのですが、随所に原作をリスペクトしている事が感じ取れて良かったです。
無骨にして繊細で、キモイ物も美しい物も、ドでかい物から微小な物まで、色々な機械要素が登場する本作の世界観を見事に再現していたと思います。
本作は4DX推奨ですねぇ。合う合わないの差が激しい4DXですが、これはガッチリ合います。特にモーターボールのシーン。
原作ではこのモーターボールという競技は選手の視界を有料配信していて、客は自分もフィールドに居るかのように観戦出来るという設定があるんですが、この映画はまさにそれでした。競技中の実況アナウンサー日本語吹き替えに名(迷)実況アナウンサーとして名高い古舘伊知郎を起用している事も相まって、本当にこういう競技を観戦しているような感覚に浸れました。
惜しむらくは尺の都合上、試合のシーンが短い事ですねぇ。正直このモーターボール編だけで2時間の映画作って欲しいくらい、この僅かな試合シーンに惚れ込みました。
続編も有り得るラストでしたが、原作が未だ連載中という事もあって続編作ると「止め時」を見つけるのが大変そうですが、もう一作くらいやってくれても良いのよ
モーターボール短かったですね! ストリートのモーターボール・コートでアリータがモーターボールに慣れていくシーンが序盤にキッチリ描かれていたので、そこは後半で生きてくるんだろうなぁと思っていたらめちゃくちゃ短くて…たぶんもっと撮ってると思うんですよね、モーターボールの場面。尺の都合で最終的にカットしたんじゃないかなぁと。もしそうならソフト化される時に入れて欲しいなぁ、ジェームズ・キャメロンと言えば劇場公開後にディレクターズ・カット版をやたら作りたがる人ですし。俺ももっとモーターボール見たかったです。
4DX、羨ましいですね。劇場が限られるので中々見れないんですよね。実況が古舘伊知郎というのが気になって本当は吹き替えで見たかったんですが、どうも吹き替えは3Dとか4DX用で、通常2D版は基本的に字幕上映っぽいのでこれも中々機会が無く…配信されたら見てみようと思います。