見てきたぞ!『ハロウィン』(2018)感想文!(ネタバレなし!)

《推定睡眠時間:0分》

※シリーズの概要とおさらいはこちらから→新作公開記念『ハロウィン』シリーズ全作感想

一作目から直に繋がる続編と事前にどこかで読んだ気がするが序盤の台詞からすると二作目から続くストーリーらしい。
あの夜、マイケル・マイヤーズは5人殺して…そうだっけ? 他ならぬ一作目と二作目の主人公ローリー・ストロードことジェイミー・リー・カーティスが語っていたが、一作目だけだったらまぁそれぐらいだったかもしれないが二作目を合わせたらもうちょっとマイケル仕事していたと思ったが…。

となると一作目から直に繋がる続編説を唱えたくなるがそうなるとマイケルがローリーに執着する説明が付かないし、二人が兄妹の設定も二作目で初めて語られたわけだから何の説明もなく二人が兄妹設定になっているのはおかしい。
するとやはり二作目の続編か? ところがそこにも大きな壁が立ちはだかってしまい、物語はマイケルの現在を記事にしようとしている三文ジャーナリスト二人組が一作目および二作目の惨劇時にマイケルが被っていたマスクをマイケルが収容されている施設に持参、おいお前、これがお前だろう、こいつがお前じゃないか、このマスクを見てくれよマイケル!

プロレスラーみたいに熱血挑発するところ(あまりにも美しい殺されフラグ)から始まるのだが、二作目の最後でマイケル火だるまになってたからマスクあんなちゃんとした形で現存してないと思うんですよね。
じゃあ一体どこから繋がる物語なんだ。『ハロウィン レザレクション』でローリーは死んだとされているが、そういえば死体の映像はなかったから殺されたと見せかけて実は生きていて…いやでもそうするとシリーズ7作目にあたる『ハロウィン H20』とその続編『レザレクション』のローリーには息子(ジョシュ・ハートネット)がいたはずだか今回は娘しかいないことになってるし、『H20』『レザレクション』とは別の世界線になっている『ハロウィン4』~『ハロウィン6』ではローリーが二作目の後に娘を一人産んだことになっているが、問題は『4』~『6』の世界ではローリーは二作目の後に事故死していることだ。一方『H20』ではこの事故死がマイケル殺しに執念を燃やすマイケルの担当医・ルーミスによって偽装されたものであるとされ…論理クイズか。

だが最終的にその論理クイズが解けましたよ俺は、この映画のストーリーの繋がり、シリーズ作との関連、キャラクターの設定。
その答えというのは…どうだっていい! どうだっていい映画でした! 細かいことはどうでもいいが、とりあえず楽しいのが新生『ハロウィン』だったのだ!

いや笑ったよなぁ。『レザレクション』なんかはわりと現代風のメタホラーっぽいところがあったからクスっとくる場面もありましたけど、基本的に『ハロウィン』シリーズはシリアスじゃないすか。
ロブ・ゾンビ監督のリメイク版『ハロウィン』二部作はその極北でしたけど、その次に制作されたのがこんな陽気で楽しい人死にの軽い『ハロウィン』っていう…もうそれが面白いから。ロブ・ゾンビがこの映画を観た時の顔を想像したら破顔不可避でしょ。ガチで真面目だったからなロブゾン版『ハロウィン』。

こっちはもう真面目に見せるつもりとか毛頭ない。冒頭からしてPC的にアウトっぽい医療刑務所のザ・精神を病んだ人たちの群。今時そんな描写があるかよと思うが所詮映画だからどうだっていいんだよの力強い監督ボイスが聞こえてくるようだ。
脱出後のマイケルの一発目の殺しが善良そうな無関係キッズというのもその意志の現れだろう。不謹慎大いに結構。だって人が死んだら面白いでしょうが! 鬼か。

そんな鬼監督の要望に応えてマイケルがついにお馴染みのマスクを被る瞬間、基本的には笑える映画ですけどちょっと感動的でしたね。もう全然嬉しそうに被らない。完全に日勤の仕事が終わった後の夕方に別現場の更衣室で作業着に着替えるダブルワーク定年後清掃夫の被り方ですよあれは。あの哀愁のこもった。人に誇れるもんじゃねぇがこれでも仕事だからなみたいな。職業殺人鬼としての矜持すら漂う素晴らしい被り。
その後ハドンフィールドに舞い戻ってからの仕事人っぷりも最高。こんなんシリーズ初でしょ、マイケルの後ろにカメラがびったり着いて6分ぐらいワンカットでマイケルの殺人お宅訪問を撮るとか。しかもその6分間で3軒ぐらい回りますからね。そんなに殺しに前のめりなマイケルあった今まで!?

いやぁ、40周年。初代『ハロウィン』公開40周年ということでマイケルも漲ってますよ。マイケルが漲るならローリーも漲る。昔、武田鉄矢と明石家さんまが共演した『とられてたまるか!?』という映画があったが、あんな感じでマイケル迎撃用に家を大改造、『H20』の時は斧一本でマイケルと互角に渡り合ったローリーだったが今度は戦争だ! というわけでボタンを押すと台所がウィーンて動いて出てくるハイテク・パニックルームに大量の銃火器を備蓄、日中はマネキンに向けて銃を撃ちまくっている…笑うしかないだろうそんなもの!

ちなみに“シェイプ”マイケルを照らすためにその家の屋根には業務用を超えて軍事用クラスの大投光機が設置されているが、とくに役に立ってはいなかった。

とにかく軽はずみに人を殺す映画だったので殺人数はシリーズで一番多かったかもしれない。従来のマイケルの殺しにはタメがあったが今回はそれがない。通りかかった拍子に殺す、誰か見つけたらとりあえず殺す。殺されるキャラはどうでもいいやつばかり。
こうなると怖くないばかりかむしろ応援したくなってしまうので不謹慎にも応援上映向きの映画で、元祖スラッシャー殺人鬼のプライドを懸けて殺しまくるマイケルと、旧シリーズでマイケルハンターだったルーミス先生こと名優ドナルド・プレザンスの遺志を背負ってマイケルをぶっ殺しにかかるローリー・ストロード/ジェイミー・リー・カーティスのガチバトルはプロレス的興奮。

そんなシリーズでは確実になかったと思うが、都合が悪くなってくるとすぐ主要登場人物をいなかったことにしてストーリーをリセットしたり、邪教集団を出してオカルト路線に転換しようとするも頓挫した黒歴史(×2)を持つのがこのシリーズであるから、まぁそういう新展開もあるよなと変に納得してしまった。
うまくいかなかったら続編でまた世界をリセットしてやり直せばいいというのは強い。それが映画としていいことなのかどうかは別として。

“シェイプ”マイケルが象徴するものは作品ごとに結構違ったりするが、今回は「男」あるいは「父親」。シリーズを振り返ってみればマイケルが固執し凶刃を振るうのは姉とか妹とか姪とか身内の女ばかりであった、というわけで今回ローリーは銃を取る。暴力でもって女たちを支配しようとする男には暴力で対抗。潔い。
その関係性の中でマイケルとローリーの立ち位置が入れ替わってしまうのはほぼほぼ『コマンドー』タイプの筋肉アクションと化したこの映画の中にちょっとだけ香るインテリジェンスだ。

一作目には授業中に窓の外に目をやったローリーがこちらを眺めているマイケルを目撃するシーンがあるが、今度はその反対をやる。ローリーの孫が授業中に窓の外に視線を向けると…そこにはマイケル不安から孫ストーカーと化したローリーが立っていたりするのだ。
ただそのへんはファンサービス的な意味合いが強く、取り立ててテーマとして掘り下げたりはしない。そういう難しい話はリメイク版『ハロウィンⅡ』が一通りやってしまったので、こっちはもう単純にネタとして楽しんでくれって感じ。

人たくさん死ぬ。アクションいっぱいある。かっこいい女の人たたかう。三拍子揃ったら映画は最強、ジェイミー・リー・カーティスの攻撃性は老境に達しても衰えず。スカっとしてブシャってしてボワっとしてたのしい『ハロウィン』でした!
ちなみに一番のお気に入りキャラは面白黒人枠のクソガキッズです。あいつ名演。

※2019/4/14 少し加筆

【ママー!これ買ってー!】


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個人的にはシリーズワースト筆頭候補ではあるが今度の『ハロウィン』は『H20』のリメイクのようなところも結構あったので。
今回はH40ということで『H60』、待ってます。

↓ストーリー上の前作

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2 Comments
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匿名さん
匿名さん
2019年4月14日 5:39 PM

1の続編だけど設定のみ後のシリーズから持ってきてます