長野が怖くなる『4月の君、スピカ。』感想(ネタバレあり)

廣木隆一とか月川翔先生が監督のゴージャスな女子高生映画にすっかり慣れてしまったのでたまにこういうスカムな女子高生映画を出くわすと新鮮味ある。
限界だ。映画を観ている俺がじゃなくていや俺も結構限界領域に突入してましたけど撮影現場が限界だ。

本当にもう厳しかったんだろうな色々と。メインキャストの衣装が一種類かせいぜい二種類(制服と寝間着)しか用意されていないとか相当なものですよこれは。
何年か前の回想シーンだって全部それで済ましちゃうんだから。シーンの季節とか時間帯をそれに合わせて撮る余裕はないから(※想像)とりあえず日中に撮れるだけ撮ってフィルターか後からの色調補正でそれっぽくしてるようだが、衣装は同じままだからシーンによってその色が違って見えたりしちゃうんだから。ある? 今のシネコン向け商業映画でそんなの。

誰か映画に詳しい人が女子高生映画こそ現代のプログラムピクチャーと言っていたことを思い出す。確かにプログラムピクチャーだよなぁ。どうせ二本立ての添え物だからと無茶を押し通す東映の70s学園系プログラムピクチャーからバイオレンスとエロスとケレンを抜いたような感じだ。
それなにも面白要素が残ってねぇじゃねぇかと言われそうな気もするがいや! バカは! バカと無茶は残りました! 大丈夫か? 大丈夫じゃない。

早乙女星(福原遥)は親の都合かなんかでどこか都会から長野に引っ越してきた女子高生。クラスに溶け込もうと自己紹介で田舎のワードを連呼してしまった彼女はさっそく都会ヘイトを燃やすお局女子のイジメ標的になってしまう。
地域振興を兼ねた地方系女子高生映画のくせに早くも田舎の厭さだけを直球で叩きつけられたが、ヘコむ俺と早乙女星に救いの手あり。この田舎高校が誇る二大イケメンの一人である天文部の部長・深月(鈴木仁)であった。

星占いが大好きな早乙女星は名前を呼ぶときに「あ、早乙女星。来たんだね」みたいな感じでフルネーム呼びして星のことをなんでも知っているし星にしか興味が無いオタク設定になっているが星よりも水泳の方に才能があるというどこに向かいたいのかわからないキャラ設定の深月がたちまち好きになってしまう。理由とかそんなものはない。好きなものは好きなのだ。

だがそこに田舎高校の誇るもう一人のイケメン、泰陽(佐藤大樹)が現れる。泰陽の読みはタイヨウ。言うまでもなく部員数二人の天文部のもう一人の部員にして深月の親友であった。
学園トップのイケメンふたりが在籍しているのにこの天文部はなんで他に部員がいないんだろう…まぁ、どうだっていいか! ともかくこうして夜空の星なんかそっちのけで地上の星を巡る天文部の大三角関係が始まるわけである。田舎の高校には恋愛しか娯楽がない(これ地域振興になっているのだろうか)

一睡もせずに観ていたが実はそこからの展開はなんだか混沌としていてよくわかりませんでした。記憶に残っている部分だけを取り出せばこんな感じになる。
深月が好きになってしまった星は一夜漬けのにわか天文知識で深月に迫ると深月は突然無言でその場を去って行く。なぜ? 困惑しながらとぼとぼ廊下を歩いていた星を捕捉した泰陽は星の手を取って走り出す。なんでも近くの山に天文台があり、星のために深月はその予約を取っていたらしい。天文台に到着すると深月は何事もなかったかのように二人を迎える。さっきの態度急変なんだったんだろうか。

そんなことをしているうちに手より先に口が出る泰陽は星に心理的無許諾キス。意味が分からずとりあえず逃げる星だったが翌日学校で泰陽と再開、両手壁ドンを受けながら好きなんだと告白されて再困惑…しているところをお局女子の手下が盗撮、星が泰陽を誘惑しているとのフェイクLINE画像を拡散して翌日、星が朝礼のために体育館に入ると全校生徒が「ありえない」「なにかんがえてるんだ」とわざと聞こえる声で陰口の嵐。

見かねた泰陽は朝礼を始めようとする校長を突き飛ばしマイクを奪い取って全校生徒に向けて演説する。俺は本気で早乙女星が好きだ。早乙女星! 俺のものになれ!
…なにこの未開。まぁでも泰陽の佐藤大樹、EXILE TRIBEの人ですしね。トライブっていうくらいだからそれは求愛もトライバルですよ。

トライブの男は強さがすべて。星を巡って泰陽と深月は最終的に水泳で勝負をつける。いや天文部設定なんだったの!? そこは星の知識を絡めたなんかで星に相応しい(ややこしい)パートナーっぷりを競うものなんじゃないのか普通…。
そのとっくの前から映画の世界観について行けてないが、映画の中盤になると重い病を治療するため海外に行っていたが治療をせずに(しろよ)帰ってきた元天文部の天川咲(井桁弘恵)が加わって三角関係は四角関係に。

泰陽は咲に負い目があった。泰陽の気を引くためにわざと深月と無許諾キス(お前もか)をするところを見せつけた咲にビッグ衝撃を受けた泰陽は長野県側からの要望と思われる咲との寺デートをすっぽかしてしまう。
鳥居の下で咲が泰陽を待っていると雨が。すると突然、雨に濡れた咲はその場にしおしおと倒れ込んでしまう。それが咲の抱える大病の原因であった。

どういうことなのかさっぱりわからないしそれが泰陽の責任なのかも全然わからないが病院に見舞いにいったら咲の父親に問答無用で殴られたし病室に入ったら咲の兄貴に二度と顔を見せるなと凄まれたので泰陽が責任を感じているのは間違いないし長野に人権とか対話の概念がないことも間違いない。リアルでは違うとしても映画を観る限りは。

あとなにがあったっけ。なんか色々あったと思うが怒濤の展開と驚愕の安撮りに脳の処理が追いつかず記憶の網を通り抜けてしまった。あ、購買の店員がティアドロップのサングラスにヘビ柄のワイシャツとかいう真島リスペクトスタイルのヤクザだったとかありましたね! どんどん長野のイメージが野蛮方向に向かっていくな。あと急に倒れて意識不明の咲を「救急車を呼んでくれ!」って言いながら泰陽がお姫様抱っこでどっか運んでいくんですけどあれ普通にダメだよね。

日付の違う同じ場所のシーンでも構図や質感がほぼ同じというところが多々あったのでたぶん相当効率的にまとめ撮りしている。美しく調和の取れた長野県の山河と地方学園映画名物の橋を上昇下降しながら一挙に捉えたドローン映像は何カットかに分割して困ったところで尺埋めに利用。
涙ぐましいほどの現場の限界感を思えば脚本の方もろくすっぽ開発の時間なんて与えられなかったんじゃないだろうか。結果このカオス。原作あるんだから脚本に金も時間もいらないだろとかそんなことねっつの。そんなことだったかどうかは知りませんが。

泰陽と星の最後のキスはいやに生々しい。時折現れてはストーリーには一切絡まず漫才をやる謎の非モテ男子二人。風がちょうどキャラクターの進行方向に吹いていたので背景の木の葉が小動物のようにキャラクターを追い続ける形になった奇跡の屋外ショット…なにがなんだかわからないが、印象に残る場面は多い。
ヘタウマ的な味というか。結局、かなりのポンコツ映画ではあったと思うが面白かったのは事実だ。

泰陽が言う。「俺はいつまでもお前を照らしてみせる!」。星が言う。「何万光年先もあなたが好き!」。こんな映画今時ある? あるかもしれませんが俺はすげー久々にこういうの観たから笑っちゃったよ。笑ったらもう、俺の完敗。

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↓原作


4月の君、スピカ。(1) (フラワーコミックス)

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