《推定睡眠時間:30分》
ロバート・レッドフォード俳優引退作! と言われたところでロバート・レッドフォードに少しの思い入れもなければロバート・レッドフォードのどこが良いのかも少しもわからない審美眼ド近視なので特に思うこともなく、映画を見てもそれは変わらなかったのですが、たぶん俺みたいなやつはそれでいんだろうと思ったのはロバート・レッドフォードの106分ひとり芝居という2013年公開の『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』があったから。
その後も何本か映画に出たり作ったりしているわけですが106分のひとり芝居、しかも救命ボートで海上を漂流する男が死に向かっていくお話なのだからこれは究極だ、究極のロバート・レッドフォード映画。
それを観た時にこの人は役者としての引き出しはもう全部出し切ったんだと思ったし、実際『オール・イズ・ロスト』のロバート・レッドフォードは素人目に見てもまったく素晴らしかったとおもう。
だから『さらば愛しきアウトロー』でロバート・レッドフォードが新しくやれることなんて何もないし本人も作る側もそんなものは望んでないんでしょう。『オール・イズ・ロスト』がロバート・レッドフォードのひとり有馬記念なら『さらば愛しきアウトロー』は引退後のファンイベントみたいなやつ、ちゃっかり過去の出演作のフィルムなんかインサートしちゃったりして、こういうロバート・レッドフォードがみんな好きだったでしょう? と客に語りかけてくるわけだ。
そりゃ、「こういう」を知らない俺に響くわけがない。でも響かなくてもいい。わかるやつだけわかればいいんでしょう。
邦題はなぜか『さらば愛しのやくざ』風ですが内容は『いつかギラギラする日』風。ファンサービス映画という意味でも似たようなもの。基本的にゆるい。ぎらぎらではなくゆるゆる。いつかではなくいつも。いつもゆるゆるしているロバート・レッドフォード強盗団の人生の黄昏を茶目っ気たっぷりに描く。
シシー・スペイセク、良かったね。紳士な銀行強盗ロバート・レッドフォードと人生最後かもしれない恋をする人の役ですが、ダイナーでロバット・レッドフォードの渡したメモを読もうとして老眼で読めない、その仕草が超チャーミングで。
それぐらいしか言うことがないが別に言葉を弄してどうこうという映画でもないのでそれぐらいでいいのだ。とくに面白くもないしとくにつまらなくもない、なんとなく始まってなんとなく終わる。
映画ってこんなもんでしょう、みたいな肩の力の抜け方は一時代を築いた名優の引退作として幸せなことではないでしょーか。
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ジャケ写ではロバート・レッドフォードが荒波に立ち向かってますが本編では全然立ち向かいません。ただひたすらぷかぷか浮かびながら台詞もあまり言わず過去に想いを巡らせるだけですいやマジで。