映画『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』体験入店感想文

《推定睡眠時間:40分》

新宿東口にこういう文言のアドトラック走ってる。歌舞伎町周辺を周遊してる。ホストが新店出すときの広告。『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』。完全にそう。
こんなのね、タイトル知っただけで観に行かざるを得ないんですよ。TVシリーズの方は履修してないが劇場版前作は観てるからどんな映画かはだいたい知ってる。なんかEXILE族の若人たちが女を巡って村の通過儀礼的なことをやるやつでしょ。まぁ前作もホストクラブみたいなギラついた世界観だったから? 今回こんなタイトルだったら「みたいな」じゃなくてもうホストクラブだよね。観るホストクラブですよ。あっはっは。しょうもない!

とこんな風に、ぼくのような逆張りマウンティング王子ともなると映画を観る前からどうやって映画をバカにするか、マウンティングを取るか、頭の中でこねくり回しているわけですが、やられたよこれじゃホストじゃんって嗤うつもりで観に行ったら本当にホストの話だったじゃん。読まれてる。マウンティング王子、『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』のスタッフに手のひらで踊らされてる。どうしよう。ルール無用の空中殺法がすごすぎてマウントを取れない。それどころではない。

なんなのこれ。劇場版前作観てるからある程度知った気で映画観始めたら前作はバカ高校が舞台だったのにいきなり歌舞伎町のホストクラブでシャンパンコールってなんなの。呆気にとられて見ていたら歌舞伎町ナンバー1ホストクラブのライバル店のホストが何者かに殺されてしまってなんなの。殺されてしまったホストの弟が建設会社を経営していて土方仲間とハカを踊って士気を高めるってなんなの。兄の死の真相を暴いて犯人に復讐するため弟が歌舞伎町ナンバー1ホストクラブに潜入したらホスト若頭になっちゃって買収を繰り返しながらホストクラブを夜のコングロマリット化していくってなんなの。悪のホストクラブのずる賢いオーナーに丸め込まれたホスト若頭が王子のひしめくバカ高校をグループ傘下に収めようとバカ高校の理事長をハニートラップにかけて…ってなんなの!?

三池崇史の『初恋』よりヤクザVシネの世界じゃねぇか。EXILE族のキラキラ学園映画を観に行ったつもりだったのにVシネって。マウント取るどころか絞め技決められてもうオチてるよ。死んだホストと土方の兄弟の回想シーンとかキッズ時代の二人がテレビで馬場対タイガー・ジェット・シン戦を見てプロレスごっこしてるからな。これどこの次元の世界なんだよ! なんもわからんが、なにかすごいことがスクリーンの中で起こっているのは確かだ。

とここまで書いて一度多すぎるキャラクターを整理しようと公式サイトの人物相関図を開くと歌舞伎町ヤクザ? に殺されたホストはホスト若頭ドリー(白濱亜嵐)の兄ではなくドリーの兄は伝説の歌舞伎町ホスト・シニア(DAIGO)ということが判明してしまった。じゃああれ誰だったんだよ…まぁいいか、どうせ歌舞伎町ホストだし。どうせということもないが。

序盤のダイジェストパートこそ急なホスト展開に面食らうも(ちゃんとTVシリーズ見てるファンには当然の光景であったでしょうが…)その後は舞台をバカ高校に移していつもの王子たちが物語に絡んでくるので一安心。前作劇場版を見たときにはどこの異次元だよッ! と思っていたはずの聖ブリリアント学園&王子たちに安心させられてしまうのだからすごい世界だ。ちなみに前作劇場版では確かにいたはずのチームDV男みたいなのは今回はいなかった。女殴るとか拉致監禁するとかで逮捕されたんだろうか。この高校の出身者犯罪率高そうだからな(※寝ていた間に出てきたのかもしれません)

さてラストでなぜかヒース・レジャー型のジョーカーメイクを施していた黒幕ホストのノア(山本耕史)に唆されて聖ブリリアントの乗っ取りを着々と進めるドリーであったがそこに現れたのが海外出張中(聖ブリリアント学園は教育機関ではなく非合法の俳優事務所なので生徒は無給で労働させられる)であった伝説の王子・朱雀奏(片寄涼太)。片や元土方のホスト、片やウルトラビッグ大金持ち。貧苦の中で馬場対タイガー・ジェット・シン戦だけを希望に育ったドリーにとってスポーツ以外で汗を流したことなどない何不自由のなさすぎる人生を送っている朱雀奏は因縁の敵。

海外出張をいいことに聖ブリリアント学園の王子室を乗っ取ったドリーとホスト仲間たちは先代伝説の王子・岩田剛典くんの美しい美しい肖像写真をテメェのそれと差し替えたりして好き勝手してやがったので観ているこっちの準備は万端だ。殺れ、朱雀奏。黒幕ホストに騙されているとはいえ剛典くんを粗末に扱う不敬者は許せない、一泡吹かせてやってくれ。かくして裏切りと欲望にまみれた陰謀渦巻く聖ブリリアント学園でドリーと朱雀奏の決闘がはじまるのであった。
…あれほかの王子どこいった? 影薄くない? 京極兄弟とかネクストは物語に絡んでいてっぽいが生徒会の二人とかお前ら完全噛ませじゃねぇか。それはまぁ、前作劇場版もそうか。先生は今回も空気です。

ホストと土方とヤンキーとヤクザ。ダンスとケンカとヤンキーアクション。隙あらば飛び出すシャンパンコール。愛と仁義と下剋上。出てくる女は全員キャバ嬢。コミカルに演出しているとはいえ話がVシネなので前作劇場版のようにキラキラポップな観るアッパードラッグ映画ではないが、今回も唯一無二のEXILEスタイルの映画でしたな。次回は中国編だそうです(前作ヒロイン枠の人がスケジュールの都合か中国留学中の設定により出演していなかったため)

【ママー!これ買ってー!】


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世界に向けているようで結局はドメスティックな情緒に訴えかける作りになってしまっている某フクフィフ映画みたいのよりこういう意識の低いバカ映画をもっと海外で展開した方がいいんじゃないですかね、日本映画界。バカに国境はない。

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