つーワケでいよいよやる。
アレクサンドル・アジャ監督、ダニエル・ラドクリフ主演の『ホーンズ 容疑者と告白の角』(以下『ホーンズ』)が5/8から公開。
(追記:観たんで感想コッチ書いた)
どーゆー映画かっつーと、マァ予告編観ればストーリーなんて一目瞭然だが、こーゆーハナシだ。
ある日、男が目覚めると自分のアタマに二本の角が生えていた。
理由は分からないが、角に念じると人の秘められた欲望を解放して、自分と会った記憶を消すことも出来た。
男は悪魔になったのだ。
ってことで男は表向きは平和平凡、でも誰もが醜い欲望を抱く静かな町をさ迷うコトになる。
そして、角の力で男は知るコトになる。一年前に最愛の彼女を殺した犯人を…。
エラくありきたりのハナシに思えるし、予告編も随分大人しいが、監督はあのアレクサンドル・アジャである。
アジャっつーと『ハイテンション』(2003)で一躍ホラー映画の旗手に躍り出て、『ピラニア3D』(2010)でホラー映画マニアとボンクラ映画好きを歓喜させたアイツだ。
トレードマークは容赦ないスプラッター描写と、焦らして焦らして焦らしまくるネチっこいサスペンス演出、それになにより溢れんばかりのホラー映画愛!
観客のツボがホントによく分かってるあたり、イーライ・ロスなんかと共にホラー映画の旗手って言われる所以なのだ。
ところで、『ホーンズ』の煽り文句は「ファンタジー・サスペンス!」ときた。
血なまぐさい映画ばっか撮ってたアジャにしてはスプラッター描写も少ないらしいが、だからって「ふーん。じゃあDVDでいっか」と考えんのは早い!
そらナゼかっつーと、原作の『ホーンズ 角』は家族ドラマ的な側面もあり、個人的にそれこそアジャに撮って欲しいもんだったからだ。
アジャの現段階でのサイコーケッ作はウェス・クレイヴンの『サランドラ』(1977)をリメイクした『ヒルズ・ハブ・アイズ』(2006)だと俺は思う(デビュー作『フリア』(1999)は観てないんで分かんないが。観たいが、国内では未DVD化、アマゾンUSでもUKでもDVD廃盤&プレミアなんである)
この映画のなにが素晴らしいって、相変わらずの凄惨なスプラッター&バイオレンス描写もだが、人間ドラマがすげー面白いトコだ。
大体こーゆースラッシャー映画だと殺され役はバカ&クズとして描かれるんで「さっさと死ね!」と思うが(それはそれで正しいとも思う)、『ヒルズ・ハブ・アイズ』はそのへん疎かにしないでキッチリ描く。
殺される側の家族の微妙な緊張感を孕んだリアルな人間関係が描かれるが、コレがあるんで例のネチっこいサスペンスも真に迫ってくる。「さっさと死ね!」じゃなくて「殺されるぞ!早く逃げろ!」なんである。
家族VS殺人家族の戦いの中にアメリカの業も浮かび上がって、そして戦いの末のラストなんてちょっと感動。
この手の映画で感動するなんてまず無いが、悪趣味なスプラッター&バイオレンスと感動的な人間ドラマを両立させるあたり、アジャの才能なんである。
もう、あんま面白かったから映画館で三回観たぞ、コレ。
三回しか観てないとも言えるが。
そんなワケで、『ホーンズ』に血の気があんま無いとしても、俺としちゃ「待ってました!」ですよ。
アジャ初のファンタジー映画にして人間ドラマ!
絶対面白いと思うね!
まぁ、ファンタジーつっても相当ダークだと思うが。
さてさて原作『ホーンズ 角』ですが、コイツはスティーヴン・キングの息子ジョー・ヒルの長編小説。
ヒルはブラム・ストーカー賞やローカス賞も受賞していて、短編集一冊・長編二冊で既にホラー・ファンタジー界の新たなスター作家になってるらしい。
で、『ホーンズ 角』がどーゆー小説かっつーと、ラブストーリーでも青春小説でもブラックコメディでもサイコ・サスペンスでもノワールでもミステリーでもファンタジーでも家族ドラマでもあるよーな、ジャンルミックスな快作なのだ。
狂騒的なブラックコメディの序盤、ノスタルジックな青春小説の中盤、パルプ・ノワールを経て、解説で霜月蒼さんが指摘してるようにアルフレッド・ベスターの大カルト『虎よ!虎よ!』を思わせるSF的なラストになだれ込む。
狂気を秘めたユーモアのセンスはキレキレだし、とくに後半に進むにつれて露になる幻想的なイメージの数々はサイコー。
ストーリーの上ではストレートだが、感情の上では悪意が善意に、狂気が正気に、地獄が天国に反転する大ドンデン返しが待ち受けるラストなんてスバラシイね!
それぞれのパートで書き方を変えながらあの手この手で楽しませてくれる小説で、オヤジ譲り(親父の名前隠してデビューしたヒルなので、名前出して悪いが)のサブカルチャーの言及と引用も大量。
ホラーとかロックとか好きな人なら堪らないもんがあると思うが、そうでなくたって全然面白いだろう、多分。
コレ、ちょーオススメである。面白いよ!
ちなみに、今ヒルの短編集『20世紀の幽霊たち』を読み始めたところですが、もう冒頭の『年間ホラー傑作選』からしてフルスロットル。
コイツはホラー映画・小説好きならニヤニヤしながら読める、タイトルからしてパロディ的なオタク感ありありの一篇だ。
「ラブクラフトを模倣した作品を無理して読み進めても、痛々しいほど真剣な“旧神”への言及が目に入った途端、自分の内面のどこか重要な部分が麻痺するのを感じた」
(本文より)
ラブクラフトとかTRPG好きな人は思わず苦笑い。
でもパロディに徹してるワケじゃなくてちゃんと怖いし、どこかユーモラスなラストの大騒ぎはイエーイって感じである。
ケッ作だし、なにより深い(そして不快な)ホラー愛が滲み出る愛すべき一編だ。
『ホーンズ』もいいが、いつかホラーオタクのアジャにはコレ映画化して欲しい。
【ママー!これ買ってー!】
とゆーワケで『ヒルズ・ハブ・アイズ』と原作本。
どっちもホラー愛に溢れた、ホラー好きなら大喜びの作品ですが、マニアオンリーになってないバランス感覚がイイ。
こーゆーバランス感覚は大事にした方が良いとツクヅク思う。
とくに女の子と話すときは。
あとアレだ、『ヒルズ・ハブ・アイズ』は発売直前になってTSUTAYA全店で販売・レンタル中止になったコトを忘れてはいけない。
俺はこの映画が大好きだからDVDをTSUTAYAで予約してたのに、発売二週間くらい前になって急に取り扱い中止になった。
何年か経ってこっそりレンタル・販売ともに取り扱いを始めたが、当初は(恐らく)フリークスの描写が問題となって自主規制したらしい。
被爆者がフリークスに!そして変態殺人鬼に!
…とゆープロットが事実に基づかないのは重々承知するが、別にドキュメンタリーじゃなくてフィクション映画なんだし、大体国内で一般公開された作品を後から、それも販売・レンタル直前になって自主規制するなんて、バカバカしいよ。
こーゆーのはホント、やめて欲しい。
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