沈黙しない映画感想文『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(悪口と多少のネタバレあり)

《推定睡眠時間:15分》

これ俺には不満ばかりの映画でしたけどだいたい俺はこの前作からして面白くないっていうか面白くないわけでは正確に言えばないですけどそれお前んとこのご都合ですよね!? みたいなシーンの連続を受け入れることができず面白くないわけではないけど腹立たしい映画のブラックレッドリスト(腹立たしい映画を観たときに出る俺の赤黒い吐血で染まっているという意味で)に入ってしまっているのでそのお前のご都合ですよね!? 成分が今作では更にスーパーパワーアップしていたとあっては冷静に見られるはずがない。

もうね、設定の根本から否定するようであれなんですけどなにこのエイリアン。異様に耳がよくてちょっと音を立てるとどこからともなく超絶ダッシュで現れて人間を吹っ飛ばす(食わない)とかいうもしかしたら本人的には人間と遊んでるつもりかもしれないのでちゃんと育てれば可愛いペットになる可能性もある謎生物が敵ですけどこいつら自然の音とか野生動物の音にはそれがどんなに大音量でも反応しないのに人間が音を立てると襲ってくるんだよな。

こんなのめちゃくちゃ腑に落ちないですよ。そりゃ例えば人間独特の呼吸音とか声とか排泄音とかそういう自然界にはない音に反応するってんならわかりますけど落ち葉を踏んでカシャって鳴っちゃったら来るとかそれで来るなら熊とかめっちゃエイリアンと格闘してるだろとか思うじゃん。よしんば体重とか歩調とかによって人間独特の落ち葉の踏み方パターンというのがあってそれに反応しているのだとしてもじゃあブービートラップはなんだよってなるでしょ。なんか地面すれすれのところに紐とか張っといて侵入者が入ったらカランカラーンって音を出して中にいる人に知らせる簡易警報装置ってあるじゃないですか。あれを人間が鳴らす時だけエイリアン来るんですよ。なんでだっつーの熊だって警報装置踏むっつーの。

つーかなんでそんな警報装置を設置してんのか全然わかんないし確実に頭悪いじゃないですかそんなの設置してるやつ。だって音を立てたら来るエイリアンなんですよ? そのエイリアンから逃れて森の中とかでひっそり暮らしてる人間がアジトの入り口とかにそんな警報装置設置してたら完全に逆効果でしかないだろ。一応理屈を付ければ盗賊みたいなやつが来るかも知れないから来たら中に入る前にカランカラーンでエイリアンさんに来てもらって中に入る前に始末してもらおうっていう風に考えて設置したのかもなってギリ思えなくもないですけどただそれめちゃくちゃリスキーだと思うし現にこの映画の中でもあれいたずらにエイリア呼び寄せただけで警報装置を踏んだ侵入者の主人公一家は普通にアジトの中に入ってきちゃうし何の役にも立ってなかったけどね!

それでじゃあそんなに音に敏感なエイリアンなのかこわいなーって棒読み調で思っているとそうでもねぇんだよね。ここは俺の中で超えてはいけない一線なんですけど「そうでもねぇ」んだよね! 音を鳴らしても来るときもあるし来ないときもあるんですよ。まぁそれはいい、いいとしよう。エイリアンにも都合はありますよそりゃ眠いとかおなか減ったとか仕事行きたくないとか。しかし赤ん坊は許しがたい。この赤ん坊というのは主人公一家の母親エミリー・ブラントがなんとエイリアンからの避難生活を送ってる中でサイレントに身ごもってサイレントに出産してサイレントに育児していたっぽいことが年月経過のテロップから判明するのであるがそんなわけないだろ。仮に仮に拾い子だとしてもギャーギャー泣いてそこらへんに落ちてる赤ん坊を超音に敏感なエイリアンがそいつだけ見逃すはずがないんですよ。

主人公(一家)補正がおかしすぎるだろなんだよこれゲームなら絶対レビュー欄クソ荒れてるよ。とにかく雑。各所雑すぎ。デバッグしないまま売り出してしまったかのような大惨事。エミリー・ブラントとかなんなんだよショートワンピとか着て! そんな格好で森の中を歩いたら絶対木の枝とかに引っかかりまくって音出るじゃんTシャツを着ろよTシャツを! Tシャツかもしくはタンクトップ! あんまそこ寒くなさそうだしいざという時にワンピ戦いにくいし! で上はショートワンピとかいうエイリアンを舐め腐った格好をしているくせに足はエイリアン対策で音を出さない素足ってそれはお前今度は確実に大自然を舐めてるだろ! なんか色々刺さる! 切る! 破傷風になったら怖い!

こんなデタラメな一家がどうして超怖いらしいエイリアンから逃れることができたのかまったくわからないがデタラメなのはサバイバル術だけではなくテメェで勝手に人様のアジトに踏み込んでおいてお前の生活態度はなってない的にアジトの主のキリアン・マーフィにキレ説教をかまし娘がテメェで勝手にどっか行っちゃったっていう完全テメェ事情にも関わらず「なんで娘を助けに行ってくれないの! (あなたの友人だった)夫が生きていたら助けに行ってます!」とこの母親エミリー・ブラントはまさかの死人に口なし同情恫喝でキリアン・マーフィにキレるんですがふざけんなよお前だったら自分で行けやとしか言えないし逆になんで娘の行動パターンを知り尽くした自分よりもよく知らないキリアン・マーフィなんかに救助を任せようと思えるんだよとか、それで仮にキリアン・マーフィが首尾良く娘を救えたとしても長期間に及ぶ孤独生活で性欲が壊れたキリアン・マーフィが俺こいつ助けたんだしその権利はあるんじゃねぇかとかいう悪魔の囁きに負けて声の出せない娘の強姦に至ったりするかもっていう危険は考えなかったのかよっていうデタラメ思考回路っぷりで…なんなのこの一家もう嫌!

あー全員死んでくれー。たのむー。エイリアン頑張ってくれー。しかし無情にも殺されていくのは台詞があまりない殺される用に出てくる善良な人たちばかりでこの一家はエイリアンが綺麗に無視してくれるという異世界転生ばりのチートっぷり。助けてくれー。無理だーこれ俺無理だー。一家の長女がラジオで受信した「ビヨンド・ザ・シー」という曲から海の向こうに避難所があるに違いないと確信して実際にあるんですけどだったらなんで普通に「海の向こうに避難所があるから○○に来なさい」って避難所の人たちは放送しなかったんだろー無理だー。っていうかラジオの音にはエイリアン反応しないんですね。無理だー。

「それは君の読みが浅いせいと寝ながら見ていたせいで主人公たちはちゃんとヘッドフォンをしてラジオを聞いている」という反論もあるでしょうがヘッドフォン使うか使わないかは聴取者側の都合なんだからそんなどこでもヘッドフォンがあるとも限らないしその場合はラジオを通して人のいるところにエイリアンを集める間接的な殺人行為になるじゃねぇかそれはいいのかよそれはって思うしあとこれは前作のラストでもう出てきた展開だからネタバレじゃないと思いますけどエイリアンの弱点がハウリング音ってそれどっかの段階で誰かは気付くだろ主人公一家以外にも! 以上オタクの早口顔真っ赤!

だいたいさ、もう本当に意味のわかんねぇ映画でハウリング音を出すと鉄みたいな皮膚を持つエイリアンのチン皮(※頭部の皮です)が剥けて弱点の赤身が出てくるからそこをショットガンでドーン! っていう退治法、いやだからさ音を出すなっつってるじゃん。なんなのかねそれは。一匹倒してまた別の一匹来るじゃん。刃物を突き立てるとかクロスボウを打つとかあるだろ他にももっとマシな感じで使える武器は。あとこのエイリアン一回の襲撃につき一匹ずつしか現れない謎の生態なんですけどそれはなんなのそれはなんかフェロモンとか出して仲間同士近づかないようになってるの? しかし普段はどこに住んでるのかねこのエイリアンは。音を出すと森でも都市でも瞬時に登場するくせにどこにも生活痕がないじゃないか。

壊滅的に酷い。あのですね、一応擁護すると、あんま細かいところにはこだわらないでシチュエーションを楽しむ分には面白いんじゃないすか。なんか叙情的なアコギサウンドみたいなのが静寂と(エイリアン襲撃の)暴音の合間を埋めるからムードは良い映画なんじゃないすか。とかは思わないではないですよ別に。冒頭のエイリアン襲撃一日目のシークエンスはよかったですよ。つかそれを言うなら前作だって冒頭10分ぐらいは全然よかったんですよね。何がダメかってオッと興味を引かれるような設定を最初に出しといて本来ならっていうかよくある映画ならそこからその設定に基づく世界を丁寧に作り上げていくところをこの映画の監督は放棄してるんで10分過ぎたら設定倒れであちこち全部ガタガタになっちゃう。

ある程度寓話的に観れる映画だとしても最低限の世界観の構築はすべきなんじゃないすかね。その最低限のラインが人によって違うのでまぁこれぐらいでいっかどうせハリウッド映画だしみたいな優しい観客が多いからこんな映画でもそれなりにヒットしたりしてるんでしょうけど俺は優しくないんだ。わかった、わかりました、じゃあこれでもう良しとしよう、これぐらいのリアリティとか作り込みで良しとするんでエイリアンがバクバク人を食べるシーンたくさんくださいって思ったらそれもねぇんだよね! なんかまだ続きそうな気配あるんで次もつまんねぇの作るんじゃないすかね! 作ったら観るけどね、逆に!!!!

【ママー!これ買ってー!】


ストーカー [Blu-ray]

すっかり心に膿が溜まってしまったのでソ連のクワイエット・プレイスこと『ストーカー』を観て浄化したい。

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