《推定睡眠時間:0分》
まだ公開初日なのであれですがなかなか評判がよろしいようで結構なことです。はいみなさんそいつらの高評価感想は全部忖度まみれのバカ感想か自分では何も考えることのできないアホ感想かもしくは党派的なクソ感想なので無視して大丈夫です。正直にパンケーキ映画の感想を書いているのは映画にわかだけ! なわきゃあありませんが、まぁガッカリしたよね。映画の内容はもちろんですけどこんな映画をゼロ批判で持ち上げる連中にガッカリしましたよ。だって基本的には今の政権に批判的な人たちが観る映画なわけでしょ、俺も含めて。
その人たちがさ、まこの映画をいわば身内として、敵を叩いてくれているからと身内の粗相は見て見ぬふりをするっていうのは、そんなのあなたたちが大嫌いな今の自民党と行動原理が同じじゃないですかって俺としては思いますよ。この映画の中でも批判の大切さが語られていたわけじゃないですか。誰が言ってたか忘れましたけどちゃんと批判をしないと腐っていくみたいな。あれたしか共産党の小池晃が言ってたんじゃないかな。それはまったくその通りだと思います。なのでこんなゴミみたいな映画はいくら政権に批判的な人でもちゃんとゴミと言わなければいけないし、その臭気を臭い物に蓋で無かったことにする感想はちゃんとバカにしないといけないのです。俺ぐらいだよこの映画のメッセージをちゃんと受け取ってるのは。皮肉ですがね。
さてどこから書いたものかなぁ。悩ましい。インタビューシーンを除けば全てが酷いと言っても過言ではない映画なので逆にどこが酷いと書きにくい。とりあえず最悪だと思った点から書こうか。みなさんこれ菅義偉とは何者かということを描いたドキュメンタリーだと思ったでしょう。俺も思いましたが違いました全然描いてなかったです。びっくりしない。なんでそれやらないのかな。映画の冒頭で色んな政治家への取材申し込みが断られたことがわかります。うーん、じゃあさ、菅義偉の実家に行くとか、実家取材が無理なら学校の同級生に話聞くとか、学校の同級生が無理なら近所に人にとか…ありますよね? 取材の仕方って色々。一個も関係者インタビューが取れなかったとしてもその足跡を追って風景をカメラに収めるぐらいのことはできますよね?
これ逆にすげぇなと思ったのが本当にそういう基本的な人物の掘り下げを全然やらない映画で、菅義偉をよく知る人として江田憲司と石破茂と村上誠一郎にインタビューしてるんですけど、菅義偉の人物エピソードに割かれた時間、俺の体感になるが三人合わせて約3分。いやなんでだよ! そこお前そこ! そこに菅義偉をよく知ってる人いるよ三人! そのインタビューをもっと使えよそこは! それお前もう掘り下げる気がないだろ! 菅義偉を叩きたいだけで!
そういう不誠実さと党派性がまぁとにかくものすごくてね…たとえばさ、「権力を監視するのは誰?」みたいなテロップが画面に出るんですよ。まぁメディアだよね。少なくともリベラルとか左翼にとってはメディアというのが模範解答だし俺もそう思いますよ。で、そのテロップが出た後にナレーションが入るの。「我々は特別にしんぶん赤旗編集部の取材が許可された」。しんぶん赤旗をクローズアップするのは分かります。よくスクープ出すからな赤旗。ただね、権力を監視するのはメディアと言っておいて映画に出てくるのは赤旗だけ(ただし引用動画では岩上安身のIWJも出てくる)。これは苦笑せざるを得ないでしょー。宣伝だよこんなもん。完全に共産党の宣伝。
俺べつにこの映画を共産党が宣伝で作ってるとは思ってないですから。共産党と赤旗がいつも的確に政権を叩いてくれてるから嬉しくなっちゃった監督だか製作者だかが勝手に応援キャンペーンを張ってるだけでしょうけど、もうなんつーかさぁ、それの何がダメかこの映画の作り手はわかってるのかな? どうもわかってないような気もしててまた頭を抱えてしまうんですけど、そういうのね、本当迷惑だからやめてくれ。あなたたちにとっては赤旗は正義の新聞で共産党は正義のヒーロー集団かもしれないですけど、世の中はそんな単純な善悪には割り切れないし、今の政権に納得していない人がみんな赤旗と共産党を支持してるわけじゃないんだよ。
俺が危惧するのはこういう映画を観てやっぱり反政権派はこういう姑息な感じかーと無党派層(のとくに若者)に思われてしまうことで、まぁそう言ったところでこの映画を作った人とかこの映画を支持する人にはそれで何が悪いのって言われてしまいそうですけど、要は視野があまりにも狭く論理は粗雑の極みでその政治感覚ときたら古すぎる。バランスを取るとか、客観性を保つとか、多角的に物事を見る気がサラサラない。自分たちが正しいと思ったことは全ての人にとって正しいと思ってる。そんな独善的な人間がドキュメンタリーを撮っていいのかなと思ってしまうぐらいですが、まぁ表現の自由があるからそれはいいです。いいですけど、そんなもんで若者層を引きつけようとしたって(最後の方に若者よ投票へ行こう的な展開があるのです)無理ですよ。
それが引っかかる若い人もいないわけではないと思いますけど、若い人だってバカじゃないんで「これは偏ってるな…」と思ったら警戒するし、その疑念が色んな情報によって確信に変わったら(だって実際に偏ってるので)それは不信に変わります。この映画の作り手だけが不信に晒されるならそれは自業自得だから別にいいですけど、それが野党全体とか与党に異議を呈する人たち全体とかあるいは政治そのものに対する不信感の源になってしまったらあなたたちどう責任を取るんですか? と俺としては言いたいところで、一言で言えば総理大臣としての菅義偉と同じぐらい浅薄すぎるし無責任すぎるし人をバカにしすぎているんですよこの映画は。一言で言えてないけど!
俺の言いたいことは以上でだいたい書き終わったので後はまぁ各論というか各部批判で感想を終えよう。憤りが先走ってどういう作りの映画か書き忘れておりましたがこの映画は菅義偉の評伝ドキュメンタリーっぽく見せかけておいて内実は左派の政権批判(安倍政権批判の方が管政権批判より尺的に多いくらい)イシューにとりあえず片っ端から触れていくような総花的かつワイドショー的な左派向けドキュメンタリーで、はっきり言って構成はぐちゃぐちゃ、論点は未整理で説明も足りず、日頃からそれこそ赤旗を読んでいるような人なら「あるある」みたいな感じで楽しめるのかもしれないが、完全に内輪ウケの映画である。
色んな人のインタビューと報道映像、国会アーカイブ映像が出てくるがその間を埋めるのは嫌味ったらしい下品なナレーションと少しも笑えない風刺アニメと何がしたいのかわからないイメージショット。最後は政治系の学生団体が出てきてなんで若者は選挙に行かないのだろう…という左派の定番問題提起で幕を閉じる。だいたい以上のような映画が『パンケーキを毒見する』。全体像がなんとなくわかったところで映画を構成する各要素を見ていこう。
まず菅義偉の評伝として。一応生い立ちから現在までをテンポ良くまとめているので菅義偉がどういう政治家かということを手っ取り早く知るにはまぁ使える。ただしテンポ良くまとめているのでプロフィール紹介以上の意味は持たないし、独自情報などは一切ないからネットで15分ぐらいかければ知ることのできるプロフィールを映画で見ても、とは思う。その先を見せてくれよ映画なら。
次にインタビュー。これはこの映画の一番の見所で与野党の政治家にジャーナリストに近現代史研究家、国会パブリックビューイングの人など色々出てきて様々な角度から菅(と安倍)政権の問題点を検証するが、それぞれのインタビューは表面的なものに留まって、その浅いインタビューの更に上澄みだけを編集で掬うので恐ろしく薄い。どの人も面白い視点を提供しているのだからちゃんと掘り下げろよと思う。これではインタビューに応じた人まで薄っぺらく見えてしまう。
国会アーカイブ映像は菅義偉の答弁が酷くて面白いが普通に衆院と参院のサイトに行けば見られるものなのでとくに価値なし。国会パブリックビューイング主催者の上西充子による解説(ツッコミ)付きで見たければこの人がYouTuberに動画たくさんアップしてるのでそれを見ればいいじゃんという話になってしまうし、そっちの方が当然おもしろい。
ナレーションと風刺アニメとイメージショットは全部ひっくるめて耐えがたいほどの昭和オヤジ趣味。頭が悪くセンスもデリカシーのない謎の上から目線に魂が死ぬ。一例を挙げれば石でできた五輪のマークとGOTOの文字をズルズルと引きずって苦しそうなアニメ菅義偉が腕時計を見ると時針が「ジージョ!ジージョ!」と音を立てていて(意味不明)助けてくれーと叫ぶとワクチンと書かれた大型の船が来て「自分のことは自分で助けろ!」とかなんか言います。
これは他のゲロ風刺アニメパートに比べればまだ吐かずに見られる方でザマス的なメガネをかけた女教師が「政治家がウソをつくから僕たちもウソをつくんだよー」とか白々しくのたまうガキにキーっとなるところとかゲボァ! 女の人の扱いは総じて地獄なので古舘寛治のうざったいオヤジナレーションが急に甘ったれたゆるふわ口調の女ナレーションに変わってオジサン(菅義偉)ださーい的な空気を醸し出すが、要するに「若い女に舐められる菅義偉www」と嗤っているわけで、菅義偉をdisっているようで女全般をナチュラルにdisっているし、あと金髪碧眼のモデルさんみたいな人のお色気映像を出す演出とか女を見る目がキモイ。
赤旗編集部の取材パートは菅義偉と関係ないので採点不能だ。
報道の自由度や国民幸福度の国別統計を並べて日本ってここまでダメになったんですねと言われても飲み屋のオッサンの愚痴の粋を出ないし菅・安倍政権との関連性は言及されないのでデータとして意味がない。どんなにダメ政権でも結局選挙に勝つからダメさが直らないという指摘はその通りだがわざわざ言われないでもたぶんみんな知ってる。必要なのはその背景を掘り下げる姿勢だろう。
もちろんそんなものはこの映画の作り手は持ち合わせていないので「政治的に完全に中立な学生組織」(いや本当にこういうことをナレーションで言うんだよ! マジで!)に取材して「選挙に行け!」と訴えるだけなのだが、都選管の出している年齢別推定投票率を見れば実は18歳・19歳の投票率は決して低くなく、とくに18歳は選挙権の付与された2016年以降の全ての選挙で50%前後をキープしており、前回の都知事選においては60%という非常に高い数値を記録してさえいるのである。
年齢別投票率は18歳~20歳まで徐々に下がって21歳~24歳で底を打つ。そこからは年齢上昇に合わせて投票率も上昇していくが、以上の統計から次のような簡単な仮説を立てることはあながち論理飛躍とは言えないだろう。21~24歳といえば大学の卒業や就活、または新入社員として過ごす時期である。18歳の投票率より下がると言っても19歳~20歳でもまだ21~24歳の投票率を上回っているということは、世間に流布するイメージとは裏腹に若者に投票の意志はあるのである。しかし、卒業・就活・就職といった人生を左右する重大イベントが投票の余裕を無くしているのである。
あるいはこのようなことも言える。前回の都議選も天気が悪かったので投票率は低かったが一般に雨の日には投票率が下がると言われている。雨の日に投票率が下がる理由は他に考えようがない。外に出るのが億劫なのである。もしも21歳~24歳の投票率の低さが卒業に付随する様々な事柄(卒論とか単位集めとか)や就活や新入社員のお仕事に絞殺されてのものであるなら、雨の日の投票率の低さと問題の根は同じなのではないだろうか。とすればその解決策は単純にして一つしかない。郵便投票やネット投票などの遠隔投票を法律で可能にすればいいのである。
これはもちろんネットを旅して5分で拾ってきた統計を基にした荒っぽい解決策であり実際に何が年齢毎の投票率を左右しているのかは容易に断定できることではない。しかし俺が言いたいのは、「そんなこともあんたら調べないで若者は投票に行けってアジってるの?」ということである。ついでに言うならなぜ若者の投票率が上昇すれば野党が有利になると考えているのか不明であるが、まぁそれは良いとして、このへんね、本当にこの映画の作り手を軽蔑するところです。
ネットで5分で調べられる公的なデータさえ参照しようとせずなんとなくの印象論だけで善悪を決めつけ恐怖と憎悪の感情で観客を煽るポピュリズム。なんだか嗤っちゃうね、だってそれが第二次安倍政権から今までの与党自民党のやり方だったわけですから。同族嫌悪ってあるよ。あんたら安倍さんと管さんにドリアン・グレイみたいに自分たちの醜い写し絵を見てるんじゃないの。その皮肉は超おもしろいから、ヤング若者たちにはぜひこの映画を観てもらいたいな。そして大いに嗤ってやれ。お前らみたいにこっちはバカでもガサツでも恥知らずでもねぇんだよってさ。無能でもねぇんだよ。
【ママー!これ買ってー!】
俺パンケーキ好きなんですけど食物アレルギーでお腹下しちゃうから何枚も食べられないんだよね。くそー菅義偉め!
私はまだ未見なのですが、客観性を欠いた政治的立場についての話には共感するところの多い内容でした。
一つ気になったのですが、文中で菅総理のフルネームが出てくるときは「菅」となっていて、苗字のみ出てくるときは「管」となっているのには何か意図があるのでしょうか?どうでもいいことですみませんが…
すいません誤字です…直しておきます
この監督、また似たような映画やるんですね。
https://youkai-mago.com/index.html
さわださんは見る予定ありますか?
ええ~もういいよ~!