《推定睡眠時間:25分》
たまたま通りかかった女を拉致監禁して強姦出産を目論むというアメリカン田舎ホラーによく出てくる鬼畜一家の話(※これはカナダ映画)なので将来的にはクズ男どもが絶対権力を握り女を性奴隷にする野蛮男天国村死ねの建立を目指しているのかもしれないが映画に出てくるのはガソリンスタンドと納屋だけなのでまだ村になってないみたいでした。あと人肉も食わないこともないがそんなに人肉ばっか食ってるわけじゃなかったです。邦題詐欺! でもトカナ配給の映画なのでそれは知ってた。
美術なんかは結構作り込んであるので絵的なチープ感は少ないとはいえ安い映画であることには変わりなく、鬼畜兄貴のもったいぶったどうでもいい長台詞で尺を稼いだりする低予算作劇が実に効果的にへっぽこ感を醸し出し、いわゆるひとつの胸糞系映画だがいまひとつ悲惨感が弱いのは短所でも長所でもある。あんまり間に迫った女の人の悲惨さを出されると見ててキツいもんね。いやでもそれがないと怖くないだろとも思うわけですが。
ゴア映画っぽい売り方がされているがゴア描写もほとんどない。このへんは撮ってるけどゴアありR18とゴアなしR15以下でそれぞれ売れるようにカットしている疑惑もあるが、それはともかくゴアもないというわけで映画の主軸になるのは人間ドラマであった。この鬼畜兄弟というのが仲良く女を拉致監禁してるのかな死ねと思いきやわりと仲悪くてお互いテメェぶっ殺すぞって心の中では思ってる。母親が生きてた頃は均衡を保っていたらしいが老衰だか病気だか知らないが死んじゃったので諍いを調停する人間がいない。どうもその喪失を埋め合わせお互いへの憎しみをどこか別の対象に逃がすために女を拉致監禁しているようなのであった(なんて迷惑な話だ)
ほぼほぼ納屋に作った監禁部屋とその周辺だけで展開する話なので密室劇の趣もあり、兄弟の確執が表面化して腐った楽園が予想通り崩壊する終盤は密室の中で煮詰まった男どもの愚かしさが爆発してそれなりに面白い感じになる。聞かされている時は全然面白くないとはいえ鬼畜兄貴の長台詞も鬼畜弟と監禁した女たちに自分の優位を植え付けるためのクオリティの劇的に低い雄マウンティングであり、終盤に至ってちゃんと活きてくるので尺稼ぎも確かに兼ねてはいるがそれだけではない。
総じて、予算規模に応じてコンパクトにまとまった映画と言えるが、まとまっていることとそれが映画として面白いかどうかは別の話なので、映画に点数を付けることは好きではないが3点満点中の3点みたいな、トータルの印象としてはなんかそういう感じになる。観客のこころに爪痕を残そうとしたオチもすごい後味が悪いわけでもなくかといってスッキリするわけでも当然なく、それならいっそアレをああして皆殺しにでもしてしまった方がよかったんじゃないかとか思うのだが…いつもの宣伝になってしまうが、こういう中途半端な鬼畜映画を観ると同じ女拉致監禁映画でも『ザ・ウーマン』は本気度の高い鬼畜の所業をちゃんと画面に出しているにも関わらずセンスの良いブラックユーモアとポップな楽曲でバランスを取っていて見事だし、一見して理想的なアメリカンファミリーの虚飾が徐々に剥ぎ取られていくミステリアスなストーリー展開も、女受難がMAXに達したところで爆発する男殺し暴力のカタルシスも、それを通した家父長制批判のメッセージも大変な迫力と説得力を持っていて素晴らしかったし、いやぁ、『ザ・ウーマン』は面白い映画だなぁ…と『人肉村』と全然関係ない方向に感想が逸れたと思いきや実は結構共通点がある『人肉村』と『ザ・ウーマン』なので、まぁ、そういうことですよ!
【ママー!これ買ってー!】
この邦題ならこういうやつを想像するよね。これもそんなに面白い映画ではないけど…。