タイトルから察するに恐竜が出てくるドキュメンタリー映画と犬が出てくるドキュメンタリー映画を観てきたのでどうぶつ映画二本立てということで感想コンパイル。『ダイナソーJr./フリークシーン』と『ストレイ 犬が見た世界』です。
『ダイナソーJr./フリークシーン』
《推定睡眠時間:0分》
アメリカのオルタナロックとかグランジとかは全然俺はピンと来なくてそもそもパンク的なサウンドとかスリーピースバンドとかが嫌いなのにどっちもクリアしてる上にオルタナ枠のダイナソーJrなんか縁がないことこの上なかったのだがこの映画を観た結果どうなったかといいますとTSUTAYAでダイナソーJrのCDを3枚借りてきて代表作のひとつ『バグ』がレンタルになかったことにくっそーってなるぐらいにはハマりました。単純です。
いいですよね映画が始まると早速タイトルにもなってる”Freak Scene”が一曲丸ごと来るアゲアゲ親切設計、音楽ドキュメンタリーかくあるべしかどうかは知らないがダイナソーJrの音を知らない俺的にはド頭からガツンとうおーかっけーだ。そりゃ安直な構成とも言えるけどダイナソーJrの音を聞きに来る観客が奇を衒った複雑な構成なんか求めたりはしないんだからこれで別にいいじゃない。こうやって褒めているつもりでもナチュラルに偏見が入ってくるあたり俺のオルタナ素養のなさがよく表れていますねと自分でおもう。
その後、映画はバンドの歴史をバンドメンバーに加えて同時代の重要人物(ソニック・ユースの人とかマイ・ブラッディ・バレンタインの人とか)の証言を交えて辿っていくのだがぶっちゃけ「おっ」というところはほとんどない。もうちょっと深掘りすれば面白いエピソードも出てくるのかもしれませんがオリジナルメンバー間の確執→フロントマンJ・マスシスのソロ・プロジェクトへ→そして再びオリジナルメンバーで再結成、の流れとかめちゃくちゃベタだなとか思ってしまうしたぶん実際にめちゃくちゃベタ。音楽的な特徴だってスリーピースバンドのギターロックなんだから際立ったものがあるわけじゃないしっていや別に悪口を言うつもりはないんだってば!
こうなるとファンの人には少し物足りない内容だろうし俺みたいな初心者には逆にお前ら知ってるだろ的な感じで説明なくスルーされてしまう情報が多くてこっちはこっちでやはり物足りなさがある(Jのキャラはもっと掘り下げてほしかった)。でもね…そういうことじゃねぇんだよ! 足りるとか足りないとかそういう話じゃなくて観客が画面の中のバンドメンバーほかと時間そして音楽を共有する映画じゃないですかこういうのは! だいぶ無理をしてロック野郎感を今こうやって出してますけれども楽しかったですよ実際。そうじゃなかったらTSUTAYAでCD3枚借りないでしょ。ダイナソーJr最高! それだけでいいんだこういう映画の感想は。
※でもJがカート・コバーンにウチのバンドで弾かないかと誘われたエピソードとかJとオリジナルメンバー(ベースのルー・バーロウとドラムスのマーフ)との関係が悪化していた頃のライブでJがガチ切れする映像とかはなかなか面白かった。
『ストレイ 犬が見た世界』
《推定睡眠時間:30分》
なんでもトルコには現代版生類憐れみの令があるそうで野良犬の殺処分ができないらしい。独裁国家のくせにそれはすばらしいと俺のように心が濁っていない素直な人は思ってしまうかもしれないが殺処分を禁じているだけで保護を義務づけてるわけではないので野良犬の生活環境がよくなったわけでは別にない。というわけでそんな野良犬どもの過酷ストリートぐらしを犬目線(文字通り)で追ったのがこの映画だった。
まぁあれだね色々印象に残ったが犬、腹減ると猫食う。同じような映像スタイルで同じように飢えた犬たちの野良暮らしを活写した『犬は歌わない』でも野良犬コンビが猫を襲って食っていたがこっちでもやはり猫を襲っておりましたので(ただし木の上に逃げられ未遂に終わる)人間がそうであるように慢性的な飢餓はどうぶつの性格も変えます。
ペットの小型犬を散歩させていた飼い主が野良ドッグに遭遇し室内外の無謀と純粋で野良に近づこうと小型犬を「こら! 殺されちゃうよ!」と叱りつけて引っ張っていくあたりなかなか切ない。たまたま世界女性デーかなんかのデモにやってきてこともあろうにその場で相棒と交尾を始めるや近くの婆から「この薄汚い犬どもが!」と棒のたぐいを打ち付けられえらい剣幕で追い払われるあたり義憤すら覚える。俺だって好きでなぁ! 好きでこんな粗野な野良暮らしをやってるわけじゃねぇんだよ…! 俺ではなく犬なのだが。
犬たちが唯一心を許しているように見えるのは半分ストリート・チルドレン化したシンナー遊びが趣味のシリア移民キッズたちだ。廃墟を不法占拠したドッグとキッズののんびり時間はうつくしい。もっともそんな時間がいつまでも続くはずもなくあっさり管理人に見つかり追い出されてしまうのだが。シリア移民にも野良犬にも帰る場所はまだない。どこかハードボイルドの空気さえ漂う硬派などうぶつ映画でしたなこれは。
【ママー!これ買ってー!】
ダイナソー、ドッグときてバグ! わお! どうぶつ三連発! だから何なのかはわからないがロックと野良の世界はノリが大切!