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あのね本当にそういうのやめて欲しいんですけれども俺がこの映画を感想を書く前に監督アスガー・ファルハディがアイディアを事もあろうにワークショップの教え子から盗作して訴えられ有罪判決が確定してしまったというね、いやそんなの感想書きにくくなるだろ超面白いって書いてもなんか後ろめたい感あるし逆に面白くねぇって書いてもパクられ元の作者に失礼な気がして!
(2022/5/13追記∶コメントで教えてもらいましたが有罪判決確定というような話は現時点でなく、盗作を訴えている元教え子をファルハディが名誉毀損で逆に訴えた件について裁判所が証拠不十分でファルハディの訴えを斥けた、という話を俺が勘違いしてしまったらしい。大変もうしわけない)
でも映画の内容と奇しくもリンクしてしまってちょっと面白いよねげへへ。イラン映画界の英雄からパクリ屋への転落っていうね。映画の方は刑務所入りたくないから拾った(?)金貨で借金返済して告訴取り下げてもらおうとした男がこれじゃあ全額返せないし印象悪くするだけだからやっぱ金貨は返しますってことにしたところ刑務所の人からおおそりゃお前いいことやったじゃん、模範囚だよ模範囚、所長も喜んでるしなんかテレビの取材が来るってよ! ってな感じでぐるんぐるんローリングに事態進展、この主人公の男は根っからの悪人ではないがどうにも薄っぺらく人に合わせて都合の良いことをついつい言ってしまうものだから小さな嘘を積み重ねてってまーそのうちに諸々綻びが出てきて人間関係も拗れていってにっちもさっちも行かなくなってしまうというストーリーなわけですが、ねぇ? そういうストーリーの映画でさ、でしかもカンヌでグランプリ取ってるえらい映画でさ、それでその監督が盗作で訴えられて有罪確定(疑惑ではなくあくまでも確定)っていう…これはちょっと出来すぎてるよね。
まぁそういうエピソードも含めて野次馬的にはたいへん面白い映画ではございますがただじゃあ映画単体としてどうかっていうと俺はそんなでもないと思ってて、現代社会の風刺の意図はわかりますけどそう鋭い角度からは攻めてこない、悪く言えば予定調和で「こう描けば欧米の映画祭で評価されるだろ」的な優等生のあざとさがある。でそこにはこれがみなさんのイメージするイラン映画ですよねみたいのも入ってて、それっていうのは教訓性なんですけど、なんかね、これ別に盗作を知ってそう思ったわけじゃないですけど(などと言ったところで証拠は提出できないが!)やっぱ芯を感じないのよ、これをどうしてもこの映画で訴えたいんだーみたいな。
だから良く出来てるとは思うんですけどそれ以上先には行かない、俺の中で。主人公の息子の面構えだけは良く出来てるなーをちょっとだけ超える存在感があってよかったですけど。こいつが本当に頼りない面構えでもう…大丈夫? ハンカチ持った? 学校のプリント忘れてない? とか親目線で世話焼きたくなっちゃうね。イラン映画といえば子供の魅力だから、これもまたあざといところではあるんだけどさ(吃音の設定なんて、ねぇ?)
※ちなみに俺の推しキャラは主人公に金貸したオッサンです。あいつの「なんで俺が悪人みたいになってんだよ!」っていうキレ、イイっすよねぇ~。
【ママー!これ買ってー!】
タイトル出落ち。
盗作で有罪はデマのようですね。そういった風評への懐疑的態度こそこの映画の訓示の一つなのでは
申し訳ありません…どうもファルハディが教え子の方を逆に名誉毀損で訴えた件について裁判所がファルハディの訴えを退けた、という話を勘違いしていたっぽいです。元教え子から盗作を訴えられたのは事実のようですが続報がないので結審していないか、もしくは裁判にはなってないのかもしれません。記事にその点追記しときました。反省します…。
人間関係においての「居心地の悪さ」を相変わらず上手く描いていたなーと思いました。この監督の実力はもう十分に分かっていたので、安心してその「居心地の悪さ」を堪能できました。ラストの主人公の諦めなのか、達観の域にまで行ってしまったのか、動かず長回しのシーンが印象的でした。