《推定ながら見時間:80分》
最近はさすがに絶滅したでしょうけど昔は怖がらせサイトってよくあって、大抵ウェブプログラミング覚えたての中学生とかが趣味でやってたんでしょうけど、ウェブサイト版のお化け屋敷って感じでとにかくガキの考える怖そうなものがあちこちに並んでるわけね。怖そうな写真がたくさん置いてあって、怖そうな図像と文字がデタラメに並べてあって、「タスケテ…タスケテ…」みたいなのが横にスクロールしていったりして、ポップアップで「あなたは呪われました」みたいなのが出たりさ、何気なく次のページに続くハイパーリンク押すと遷移先のページでお経が流れたりとか、縦長のページの上から下まで強制スクロールして下の方に怖いことが書いてあるとか、まぁそういうやつ。
なんかそれを強烈に思い出した映画だった、『呪詛』。怖いシーンは目一杯出てくるんですけどそのせいでチープ感が出て逆に和んじゃうっていうかさ、フェイク・ドキュメンタリーの形式を取っているしまぁ白石晃士の映画とかは参照してるんだろうけど、白石晃士の心霊映画もゾゾゾってする怖さじゃなくて基本的にはジャンプスケア的な、アトラクション的な怖さで、異界の存在の侵入による世界の転覆なんかが描かれたとしてもディザスター的な爽快感があって怖さが尾を引いたりはしないじゃないですか。この映画もそれと同じでみんなでこわいこわーいって騒ぎながら観る感じ。俺はずっと友達がいなかったので何を見るにも一人だったわけですが昔の個人制作の怖がらせサイトだってみんなで怖がりながらわいわいがやがや盛り上がって見られてたんでしょう、友達がいなかったので完璧に想像ですが!
そういう映画として観る分にはとても楽しい映画で、インターネットでやたら評判になっているというのも頷ける。観たら使いたくなるバズワードもあるしね。ラッセーラッセーウッセーワみたいな。それってどうやったら映画が売れるかっていうマーケティングをしっかりやってるってことで、感心する一方、こうもマーケティングが全面に出てくると作品じゃなくて商品としてしか観れないから、怖かった、とか、楽しかった、ぐらいしか感想としては出てこない。怖いシーンの数々もオリジナリティを感じるところは皆無に近くて、だけどそれはお決まりの怖いものを求める観客を意識して意図的にベタな恐怖演出・展開にしていると思うので、悪いとは言えないんですよね。
個人的には、子供を産んだばかりのシングルマザーの不安をテーマにした物語だったので、どうせ2時間近い映画にするならその点をもう少し掘り下げて欲しかった。怖い映像のつるべ打ちは楽しいけれども2時間もあるとさすがに途中で飽きてくる。映像に飽きてきたところで物語の面白さにシフトチェンジできればいいが、これはあまりそういう風にはできてないんですよね。スナック感覚で楽しめるオカルトホラーの快作として、人に勧めるか勧めないかで言えば勧めますけれども。
※あと主演の人が竹内結子にちょっと似てたので『残穢』と頭の中で繋がりました。
【ママー!これ買ってー!】
『コンジアム』[Blu-ray]
『コンジアム』[Amazonビデオ]
韓国の心霊フェイク・ドキュメンタリー。これも怖い仕掛けテンコ盛りでオバケ屋敷的に楽しめる。