《推定睡眠時間:吹き替え版 40分、字幕版 10分》
新型コロナで公開延期になって2年くらい待った『ミニオンズ・フィーバー』だが公開初日にさっそく駆けつけたところ驚いたことに結構ガッツリ眠ってしまった。ミ…ミニオンズで? ミニオンズに寝るとこある? 俺自身そう思ったのだが確かにこれねなんかいつもよりまったりムード。つーのもグルーが子供の頃の話だからそんなスケールの大きい展開とかにならないんですよね。ミニオンズシリーズに求めてるのはスケールのでかさじゃないけど『怪盗グルーのミニオン大脱走』は冒頭から80年代ダサファッションに身を包んだやべーヴィランが出てきて掴みは最高じゃないですか、それで最後はそいつがクソダサ巨大ロボットに乗り込んで街を破壊していってこれも最高でしょ。『ミニオンズ・フィーバー』はそういう盛り上がるところがあんまりなくて、最初から最後までずっと単発的な小さなギャグをやってるって感じだった。だから眠くなるっていうか、今回まぁリラックス編ってことなのかもしれないすね。
悪党に憧れる少年のグルーのもとに悪党版アベンジャーズのヴィシャス6から手紙が届いた。なんでもメンバーに欠員が出たとのことで新メンバーを募集しているのだという。喜び勇んで面接に向かうグルー少年。邪魔だからミニオンズたちはおうちでお留守番…なんかしているわけがなくこっそりグルーについていく。そこにヴィシャス6の現メンバーに裏切られた元リーダーのナックルズが乱入し…なんかはちゃめちゃなことになるのであった。
今回こういうお話だもんだからヴィシャス6が中国の密林に『インディー・ジョーンズ』しにいくシーンはちょろっと冒頭に置かれているものの基本的には大きな出来事が起こらない。導入部に続くのは悪党になりたくてくすぶっている少年グルーがミニオンたちと一緒に近所のゲームセンターでイタズラばかりして遊ぶシーンだ。ピンボールのボールを磁石で操作したりバスケットボールのゲームでミニオンズを台に上げてボールをゴールに入れさせるとかショボイがかなり迷惑な出禁イタズラが続く。アイスクリーム屋ではチーズぶっかけ銃で客をチーズだらけにして「お前もチーズまみれになりたいか!」と店員を脅してアイスクリーム強奪。かわいい系ミニオンのボブが料金代わりにいつも抱いてるクマさんの人形を置いていったがイタズラっていうかたぶん犯罪だろう。他のアニメスタジオの主人公ならこんな悪いことはさせてもらえないがグルーは悪党だから構わないのだという開き直りがとてもよい。
まぁこんなのが…というわけでもないけどスケール的にはこれくらいのゆるい笑い、ゆるいシーンがストーリーの大きなうねりもなく続く感じ。などと書けばなんかつまらなそうに思われるかもしれませんがいやいやそんなことないもちろん当然おもしろい、だけどミニオンズの短編アニメを十本ぐらいまとめたようなスケッチ集に近い構成だからずっとニヤニヤできてあははって笑ってるけど大興奮するところは基本的になかったってわけです。
で、スケッチ集に近いからあんまり個々のスケッチのネタバレをしたくない。言ったらちょっとだけ興を削ぐでしょ。でも言いたいから言っちゃうけどミニオン飛行機に乗るの巻は最高だったね。なーんて無責任な! 真似できないけど子供が真似したらどうするの! カートゥーン魂だねぇ、こんなことありえないよってことを平気でやっちゃう。あとミニオンカンフーを習うの巻もよかったですよ。サンフランシスコのチャイナタウンに行ってミシェル・ヨーが声をアテてるカンフーマスターにカンフー習うんですけどそれが全然役に立たない! いいなぁ、とくに意味はなくても面白いことを思いついたらやっちゃうの。だって普通そういうシーンがあったらカンフーで強くなったミニオンがカンフーで悪党を退治してグルーを助けるみたいなの想像するじゃん。でもそういう展開にならないんだよ。単に面白いからミニオンにカンフーさせてブルース・リーのトラックスーツ着せてるだけ。粋だよね、この意味の無さ。こういうところが俺ミニオンズシリーズのめちゃくちゃ好きなところなんですよ。
舞台が70年代であることにも見た目が面白いっていう以外の(あとグルーの幼少期を描くという以外の)必然性はない。ヴィシャス6のメンバーはみんなアクが強いキャラなのに出オチに近い扱いで大して活躍しない。その一人のヌン・チャックは悪の修道女で武器は十字架型のヌンチャクなのだが、修道女はNunなのでこれはヌンチャクとNunをかけたダジャレである。ちなみにボスのファンキーウーマン(声はタラジ・P・ヘンソン)以外は大して活躍しないヴィシャス6は声の出演がジャン=クロード・ヴァン・ダムにドルフ・ラングレンにダニー・トレホってなんだよその無駄すぎる豪華さは! 意味ね~。意味なくてサイコー。
ま、肩肘張らずに気楽に楽しみましょうよって映画だな。伏線もなにもあったもんじゃないご都合主義もむしろ歓迎、ご都合でなんでもなっちゃう不条理はご都合にやたらと厳しい昨今では痛快だ。70年代ロックやディスコサウンドに彩られたサントラもセンスいいんだよなぁ。エンドロールで流れるセイント・ヴィンセントの”Funkytown”カバーなんてミニオンズっぽい茶目っ気に溢れて楽しいですよね。
そうそう、オットーが三輪車でアメリカを超爆走横断(?)してしまうシーンも好き。なにあれバカバカしい! やっぱ良いよね、ミニオンズは。
※それにしてもイルミネーションのアニメはローカライズが毎回かなり凝ってて素晴らしく、中でもミニオンズシリーズはミニオンの声の一部だけ日本語台詞っぽくしてるからどうやってそんなに近い声の持ち主を…と不思議に思ってたんですけど、今回字幕と吹き替えの両方で見たらどうもオリジナル版のミニオン声優さんに追加で日本語っぽい台詞を言ってもらってるっぽく、吹き替え版を作るためにわざわざそこまでするのかとプチ感動してしまった。そこまでするならなんでグルーは鶴瓶なんだろう!(もう慣れたけどね)
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スケール感とかストーリーの面白さを求めるなら前作。こちらも大脱走といったところで大して脱走要素もなかったりしますが(しかし脱走シーンは爆笑)
“だけどミニオンズの短編アニメを十本ぐらいまとめたようなスケッチ集に近い構成だからずっとニヤニヤできてあははって笑ってるけど大興奮するところは基本的になかったってわけです。”
私はカンフーの下りでこれを感じましたね。面白いけど章区切りで映画っぽくはないなって。
ちなみに横に座ってた6才くらいの女の子は「ミニオン達が秘密基地を作るシーン」で死ぬほど笑ってて、ウケ過ぎて持ってた飲み物を全部こぼしてました。
あのカンフーのところはめっちゃミニオンズ短編っぽかったですよね!イルミネーションってたぶんトップダウン的な脚本作りをしてなくて、シーンとかシークエンス単位で作っていって、それをどう繋げるかっていう感じなんだと思います。
笑いすぎてジュースこぼす女児とか最高の客じゃないですか!片付ける方は大変だろうけど!