《推定睡眠時間:15分》
メインビジュアルになっているスケキヨフェイスのお子様が大変にインパクト大なこの映画は導入部もインパクト大、マンションの廊下やベランダで魂が抜けてしまったかのように虚空を見つめて四足歩行したり欄干をかじったりしている「!?」な人々を何者かが監視しているらしく、その何者かはどうやら精神科病院への行政入院措置の取られた彼ら彼女らの搬送先を調べ上げているようである。
この怪しげな人物こそこの映画の主人公の男子高校生くんなのだがいったいどうしてそんな真似を。少なくともこの時点ではまったくわからず、神経を蝕む不穏なBGMと相まってひじょうに奇怪、なんだかとんでもない世界に迷い込んでしまった…と思わされるのであった。ウサギがたくさん出てくる映画なので異世界への迷い込みの印象は作り手も意識したところなのかもしれない。アリスはウサギを追いかけて不思議の国にたどり着いたのだし。
面白いのだが俺の中でこの映画のピークはこの冒頭部分だった。以降、主人公の男子高校生は例の異様な姿態の人々が玉木宏演じる心理療法士のクリニックに通っていたことを突き止め、同じような症状に悩まされている母親を救うためにその原因と見た玉木宏ファミリーへの接近を試みるのだが、そうして事実がひとつひとつ明らかになるたびに映画冒頭の強烈なインパクトは薄れていく。
これはちょっと宣伝ミス的なところもあるんじゃないだろうか。ポスターに絶叫だのなんだのと書いてあったしスケキヨマスクのキッズまでいるのでホラーかと思って最初の方は観ていたが、その後の展開からすればニューロティックなサイコサスペンスというべきで、微妙にだがリチャード・フライシャーみたいな猟奇系の監督の撮るホラー寄りの50年代ノワールのような香りもある。そういう映画として観ればなかなか面白いのだが、怖さを期待して観るとわりと肩すかしだったりする。
絵作りが平板でどうにもストーリーの緩急がゆるく感じられてしまうのもちょっとつまらなく感じられてしまったところで、そのくせ事の真相は突飛な、まぁ俺の感覚では『デアボリカ』みたいな話だったなという感じですけどこの映画に対してこのたとえがしっくり来る人は世界中に俺しかいないと思うのでこれはネタバレにはならないと思うが、ともかくそういうものであったので、真相に驚くというよりは失笑してしまった。この真相ならもう少しカメラワークなりなんなりで画面に迫真性をつけないとちょっといい大人が観る映画としては厳しいだろう。とくに怖い映画としては。
脚本で勝負するタイプの映画であるにも関わらず展開の詰めが甘く台詞が定型的で面白味に欠くというのもどうかなぁとなるポイントか。意欲作ではあると思うがそんなわけでまぁあれだ、うん、意欲作だな。意欲作だったなーで終わってしまうなんか惜しい映画だったと思います。
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あと観ていてこのドラマ思い出しました。