《推定睡眠時間:0分》
映画館に掲示されてるこの映画のポスター見たら「世界一有名な配管工兄弟が」みたいな文句が書いてあって配管工ってとこそんな重要か? って思ったんですけど映画が始まったらマリオとルイージはレッキングクルー(スーマリの前身のひとつ的なやつ)の会社から独立して二人で配管屋を開業しました! ときたのでちゃんと重要な設定であった。ところでこの出だし、ブルックリン在住のマリオとルイージがなんやかんやあって下水に入ったらそこには異世界のキノコ王国に通じる土管があり…というのは実写映画版『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』を踏襲したものではないか!
まさかそこからネタを採るとは思わなんだ…しかし今ではキノコというよりも粘菌みたいにされた王様がキモイ、オリジナル敵キャラのグンバが全然可愛くない、クッパ役にデニス・ホッパーの起用はキノコの映画と考えればある意味適役かもしれないがキノコの解釈がダイナミックに間違い過ぎている、などの理由によりゲームとは別物が過ぎるカルト映画扱いされている『魔界帝国の女神』も、キッズ時分の俺はとくに疑問など覚えることなく普通の映画として面白く観ていた気がする。『ゴーストバスターズ』とかと同じ枠の映画だよね、キモくてファニーな怪物が出てきてニューヨークが舞台でっていう。やれカルトだ黒歴史だとインターネットでは呼ばれがちだが、そう考えればマリオネタ超てんこ盛りのこの映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が引用するのも別におかしなことではないのかもしれない。でもクッパがデニス・ホッパーというのは絶対おかしいと思うのだが。
まぁそんなことはさておいて…楽しかった! もうこれは楽しい、単に楽しいだけの映画だ。上映時間94分、エンドロールを抜けば本編は90分を切るだろう。アクションとユーモアとマリオネタを大量に仕込んだら後はもう入れられるものなんかない。ここには深いドラマとか大それたスケールとか新感覚の映像とかとかというのは少しもなく、したがって人生を変えるような特別な映画体験になんか逆立ちしたって成り得ない。映画が始まる前にはマリオシリーズのCMが流れるが、それはマリオをやってる時は老若男女みんな笑顔になるねというだけのCMで、それ以上に何かを観客に押しつけることはない。それはこの映画にも言えることだろうと思う。
いや立派なことじゃあないですか、世界のマリオだからとふんぞり返って大上段に構えたりせず、マリオは所詮マリオ、お客さんを楽しませて日頃の疲れの一つや二つ吹っ飛ばせたらそれで本望ですと自らの役割をしっかり弁えてる。アメコミ映画が所詮コミックという矜持を無くして何か人生訓やタメになる社会批判を織り込んだ文芸大作ででもあるかのように振る舞う昨今、ハリウッドメジャーが単に娯楽でしかない娯楽映画を作るというのは逆に難しいことなのだ。さすが製作(任天堂と共同)が『ミニオンズ』とか『SING』シリーズのイルミネーション、肝が据わっている。っていうかここ何年かイルミネーション大人しいなと思ったらこのプロジェクトに傾注してたのね。
ま楽しいだけの映画だからそれ以上書けることというか書きたいこともあまりない。強いて言うならここ十何年かまともにゲームをやっていなかった俺でさえわかるほどマリオネタが豊富だったのであれはこのマリオゲーから引用したネタであれはこのマリオゲーから引用したネタで…とかそういうところ。ルイージが迷子になるシーンが『ルイージマンション』っぽいとか、回想に出てくる幼少期のマリオ&ルイージが『ヨッシーアイランド』の絵柄っぽいとか、レインボーロードでは『マリオカート』の近作に準拠して下の通路に落ちてショートカット(そしてトゲ甲羅は回避できない)とか…ピーチ姫がドレスの裾を持ち上げて空中浮遊するのは『スーパーマリオUSA』だよな。
まだまだあるぞ。ウツボが怖いのとピーチ城のステンドグラスとクッパの倒し方は『スーパーマリオ64』、ピーチ城にある練習コースは『マリオメーカー』、お付きキノピオがフライパンを武器として携帯しているのは『スーパーマリオRPG』でピーチの確か最強武器がフライパンだったからじゃないかろうか。っていうかこの映画全体的に『スーパーマリオRPG』の雰囲気があった。ドンキーコングの住んでるコング王国の玉座後ろに飾られている世界地図は『スーパーマリオワールド』のワールドマップ、コング王国がレースカー大国として描かれているのは『ディディーコングレーシング』があるからか? とゲーム小ネタは尽きない。
ドンキーコングといえばなのだがこの映画のドンキーっていうかコング王国のキャラ全般、ファンキーなお調子者でそのキャラ解釈がすげぇコロコロまんが『スーパーマリオくん』っぽかった。マリオが喋るっていうのもゲームのマリオシリーズだと基本マリオ喋んないからなんか『スーパーマリオくん』っぽく感じられるんだよ、『スーパーマリオくん』のマリオはツッコミ役でガンガン喋るから。クッパのキャラもめっちゃ『スーパーマリオくん』だったな~。クッパとカメールの寸劇のシーンなんかコロコロ誌面で読んだ気さえしてくるもん。俺エンドロールでスペシャルサンクスかなんかに『スーパーマリオくん』の沢田ユキオ先生の名前があるんじゃないかと思ってちょっと探したよ。っていうのはさすがに冗談ですけど!(でも載せて然るべき、ガチで)
あとねこれは正式名称をなんていうのか知らないんですけどキノコ王国の外の世界を旅するシーンでうわー世界広いなーってわくわくした。その感覚をちゃんと大事にしてくれてるのは嬉しかった。評論家のさやわかが『僕たちのゲーム史』で書いてましたけど初代『スーパーマリオブラザーズ』ってアクションがどうとかっていうより世界を冒険するゲームであることを前面に打ち出して宣伝してたんですって。だからマリオシリーズってそこからどんどん派生していくわけですけど広い世界を冒険するってコンセプトが共通してある。単純な操作で海の底から宇宙の果てまでどこでも行けちゃうっていうのがマリオシリーズの面白さの実は核なんですよね。ゲームクリエイターの飯野賢治は開発中の『スーパーマリオ64』をプレイして広大な箱庭世界で自由にマリオが動かせることに驚嘆したとか(製品版はミッション制になって開発中のものより自由度が減ったからダメ、と批判するのだが)
やっぱ任天堂がライセンス売ってるだけじゃなくて内容にも噛んでるっていうのは伊達じゃないね。そういうマリオシリーズの楽しさをちゃんと押さえつつ、これもマリオシリーズ(というか任天堂か)の特徴でしょうけど老若男女楽しめるように配慮されてて、そこに80sポップスを景気よく流しまくったりアクションにカートゥーン的なギャグをハイテンポで混ぜるイルミネーションらしさが乗る。見事、見事、これは見事なものづくり。娯楽映画のお手本だ。お手本にしては、決して面白すぎないところも含めて(あまりにも面白すぎる映画はセンスの鈍い観客を置き去りにしてしまうものだ)よく出来すぎていて、逆に参考にならないかもしれないけれど。
あちなみにクッパといえばワンワンなわけですが(このへん世代が出る)今回はワンワンなし。がーん。まぁでも10本ぐらいは続編とかスピンオフとか作って儲ける算段だと思われるのでそのうち出てくれるでしょう安心。ちなみにパート2はあのキャラが大活躍すること間違いなし。どのキャラかはエンドロールを最後まで見ればわかるのでエンドロールに入っても席を立たないように…などという野暮なアドバイスは不要だ。エンドロールのバックに流れるマリオシリーズ名曲メドレーが最高だから!
【ママー!これ買ってー!】
スーパーマリオくん スペシャルセレクション (コロコロコミックス)
映画公開と同日に発売ということで小学館の方はグイグイ来てます。任天堂さんとイルミネーションさん、続編ではスーパーマリオくんとのコラボをお願いします。
イルミネーションはディズニー・ピクサーより制作費が安いとも言われてますが、
確かにクッパ軍はノコノコがメインでクリボーとトゲゾーがワンシーンのみだった。
キノピオの見た目も大臣っぽい奴以外はほとんど同じでしたね。
ピクサーだったらモブでも描き分けしたがると思うので。
あとライティングもピクサーと比べたらワンパターンだとか。
モブはモブでいいじゃんっていう開き直りがあるんですよね。トゲゾーなんかクッパの「その他!」なんて台詞でネタにされてるくらいだし笑
イルミネーションってやっぱりカートゥーンの伝統を受け継ぐスタジオで、良くも悪くも最近のディズニー・ピクサーみたいにガチガチに世界を作り込んだりしない。キャラも背景も記号としてあればいいっていう考え方が根底にある。
俺はイルミネーションアニメのその潔さが好きなんですけど、リッチな映画体験を求めると物足りないよなぁとは思います。
観ました。面白かったです!ルイージはマリオよりポンコツなんですけど、そのことに対してマリオは特になんも言わないし気にしてないのが今っぽくていいなあと思いました。好きで一緒にいるんだねって感じで。ヨッシーが好きなので次が楽しみです。
ヨッシーどんな感じになるんですかねぇ。なんでも食べるからブルックリンの街に出て片っ端から食べちゃって大騒動みたいな感じかもしれません。