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帰りの電車でちょっと泣いてしまったのだがそれは『ザ・フラッシュ』の余韻によって、ではなく、『ザ・フラッシュ』のストーリーが1999年/2000年に発売されたアトラスのRPG『ペルソナ2 罪/罰』を彷彿とさせたことから、『ペルソナ2 罪』のエンディング曲であるhitomiの「君のとなり」をウォークマンで聞いていたら、『ペルソナ2』の記憶がぶわっと溢れだしてしまったからなのであった。
『ペルソナ2』のストーリーなどは前にかなり入魂の解説というか読解記事を書いたので興味のある人はそちらをご覧になっていただければいいがいやそれにしてもですよ、20年遅いじゃないの、悲劇を避けるために過去を改変したら世界が変わっちゃって大変なんてネタは。当時そういうゲーム結構あったよな、『YU-NO』とか『街』とかそして『ペルソナ2』とかさ。そもそもアクション(シューティングなど含む)以外のゲームってトライ&エラーで物語を進めていくわけだからコンピューターゲームというメディア自体が「過去の改変」という要素を内包してる。メタ的に考えればアクションだって同じ面を何度もプレイすることで少しずつ先に進めていくわけだからそれも一種の「過去の改変」だよね。
だからゲームと「過去の改変」の物語ってすごい相性がいい。そしてそれはハード性能が飛躍的に向上してトライ&エラーの幅が広がると一気に開花して、そのひとつの到達点が『ペルソナ2』とかだと俺は思ってるんですけど、プレイヤーに過去の改変という操作を絶えず要求するゲームの場合その没入感は映画とは比較にならない。で、こっちの方がより重要だと思うんですけど、過去の改変操作を体験の基礎とするからこそ、そのストーリーの中で改変不可能なもの(エンディングや各ルートの共通イベントなど)に直面したときにプレイヤーが受けるショックはとても大きなものになる。俺はこれをゲーム的エレジーとひとりで呼んでいるが、このゲーム的エレジーを取り入れた映画というと筆頭はNetflixの人気ドラマ『ブラック・ミラー』のスペシャル回『バンダースナッチ』で、この回はインタラクティブ映画と銘打って視聴者が選択肢で展開を変えることで異なる結末が…って要はノベルゲーだったわけです。
まぁだからそういうわけで『ザ・フラッシュ』は20年遅いとおもった(SF小説なら更に昔の作品に遡れるだろう)。そしてこういう過去改変の可能性とそれに伴う改変不可能な出来事の喪失感を描いたストーリーは…やっぱゲームに敵わんな。別に『ザ・フラッシュ』が悪い映画と言いたいわけではないけれども、映画という視聴者が操作不可能なメディアは『バンダースナッチ』のような特別なものを除けば決定論的であることは避けられない。いかにマルチバースだ時間遡行だとやったところでそれは始まりから終わりまで一直線にしか進みようがない映画というメディアで描かれれば博物館の剥製みたいなもんで、迫真性という点では限界がある。俺は今でも20年前にプレイした『ペルソナ2』の結末を思い出してジ~ンとできるが思い入れの有無も影響するだろうとしても『ザ・フラッシュ』ではそういうことはないだろう。『ペルソナ2』の場合は自分たちの行動で世界は変えられるんだという主人公たちの思いとプレイヤーのそれがコントローラーを媒介に一致するけれども(そしてその思いが一つしかないエンディングによって打ち砕かれるわけだ)、『ザ・フラッシュ』の場合はこっちゃ客席に座ってジュースでも飲みながらスクリーン眺めてただけなわけだからさ。
とはいえ『ザ・フラッシュ』にはおもしろいところがたくさんある。俺はよく知らんがフラッシュというヒーローは超速が武器ということでそのスピードを武器にしたバトルが…いや実はこれはそんなに面白くなく(だって超速を生かした戦いをそんなにしてくれない!)同じ超速バトルだったら『ソニック・ザ・ムービー』の方が全然楽しかったのだが、そこじゃあなくてさながら『スーパーロボット大戦』かッ! というDCコミックのIPフル活用っぷりがたのしかった。フラッシュはジャスティス・リーグの一員でバットマンの親友らしいのだが、母親の死という過去の悲劇を回避するためにフラッシュがほんのちょっとだけ過去をいじったことで世界が分岐してしまい、その結果バットマンやスーパーマンも、ということなのだがこれはこれから観る人のおたのしみだろう。マルチバースで過去作と接続しようという発想は安直だが俺は素直なのでびっくりしたしよろこんだ。
あとは劇中でも言及されるが『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』みたいな展開も時間SFの醍醐味に溢れてよいですな。しかも『BTTF』の引用が伏線になっているという巧さ。フラッシュと相棒の掛け合いは笑えるし、別世界線のヒーローズもこれがカッコよろしい。これでラストバトルがもっと盛り上がればなぁと思う。過去改変ものゆえラスボスはいつかどこかで見たことがある人なのであるが、そうした新奇性のなさというのもあるし、単純にバトル演出が物足りないというのもある。バトルがどうこうより今回は時間SFのストーリーに力を入れたアメコミ映画という感じだったのだが、そのストーリーが前述の理由でそこまで俺のメンタルには迫ってこなかったので、なんか最後らへん盛り上がりに欠けたなぁという印象が残ったというわけなのでした。
そうだそれから思ったのがさ、伝統的にハリウッド映画って三幕構成だったでしょう。ハリウッドのシナリオ教本みたいの読むとどれもそう書いてあるし、映画評論家もハリウッド映画は三幕構成って言う。でもこれとか最近のアメコミ映画を観てるとどうも三幕構成じゃなくて起承転結の四幕構成なんだよな。この映画に即して言えばフラッシュが母親救出の目的を持って過去の世界に遡行するまでが起承転結の起、過去の世界で某所にある秘密基地に潜入してドンパチ一回戦をやるまでが承で、そこから思わぬ出会いを経て終盤のドンパチ二回戦に入るまでが転、そこからラストまでが結。ポイントはドンパチ一回戦の部分に長く尺を取るようになったというところ。おそらく客を飽きさせないためにドンパチ一回戦を以前より盛り上げようとしてるんだろうな今のハリウッド脚本家は、あるいはスタジオは。そこで盛り上げとけばラストのバトル二回戦は温存したまま派手なバトル映像を予告編とかで使えるしね。
そう考えるとさ、最近のアメコミ映画って本当どれも長くて140分が当たり前になっちゃってますけど、それって要は今まで三幕構成で映画を作ってきたハリウッド映画人が起承転結の四幕構成に慣れてないから従来の三幕構成120分に承の20分を足してそうなったみたいな、単にそれだけの話って気がしますよ。だからハリウッド映画人には140分当たり前なんて思わないでさっさと四幕構成120分で作れるように慣れて欲しいよな。昔の任侠映画とかは起承転結で見事に90分ぐらいなんだから。
あのね、一ヶ月に1本とかしか映画を観に行かない人はいいよ別に、140分でも困らないだろうけれども、一日に何本もハシゴした人種には困るんだよ無駄に長いハリウッド映画は…終電なくなるから仕事帰りに観に行けないし! 俺に過去を変える力があったら100年前のハリウッドに行って三幕構成ルールを四幕構成にさせると思います!(改変行為により三幕構成を取る映画史上の傑作群が消滅する大惨事)
【ママー!これ買ってー!】
ペルソナ2 罰 ETERNAL PUNISHMENT.オリジナル・サウンドトラック
オリジナル版はPSだしリメイク版もPSPだしということで現在はなかなか気軽にプレイできないためとりあえず手を出しやすいサントラを貼っておくが、アトラスさんどうかこの傑作を今の人が気軽にプレイできるようSteamとかPSアーカイブみたいなやつに移植してください…!
なんかいよいよおじいさんの独り言みたいになって少しかわいそうです。
独り言ではないブログなど信頼してはいかん。
独り言ではあるが勝手にオススメにでてきたので書き込む。
熱量はすごいけどここまで的外れなのもまた珍しい
ザ・フラッシュに対しては不満があるほうだけどこの感想(批評のていをなしていない)には何一つ同意できないなあ
アトラスファンの悪いとこが全面に出ていてよくない
本当にあの脚本の教科書をちゃんと読んだのかと問いたい。
なんかもっとシンプルでいいんですけどね。こっちは冒頭の赤ちゃん救出のシーンみたいなのをもう少し見たい訳なんで。まぁその辺はドラマ版でやっているんでしょうけど‥
ただ最近のDC映画の中では頭一つ抜けた出来だとは思いますよ。最近のDC映画ってユニバース構想のせいでイビツに感じる所が多かったので、この出来を基準にしてほしいすね。
最後に一つ疑問に思ったのですが、初見だとゾット将軍関連ってどう感じるですかね?割とマン・オブ・スティールを踏まえての展開が多かった気がするんですが。
俺もDCEU映画の中ではかなり良くできていると思ったんですよ。ユニバース構想とマルチバースの面白さを上手く引き出していて。でも『ジョーカー』とか『ザ・バットマン』の方が一本の作品として面白かったので、もうユニバース構想はこれで一旦終わりということにして普通に単独作・単独シリーズ作ってけばいいんじゃないかと思います…(それが売れてきたらアッセンブルすればいいわけですし)
ゾッド将軍ですが…『マン・オブ・スティール』も他の『スーパーマン』作も観てないのでゾッド将軍といえば秘宝の奥付けで読者のお悩み相談をやっていた人という歪んだ認識の持ち主からお答えいたしますと、「なんかよくわからんがきっと魔人ブウぐらい強いんだろう。大変だなぁ」でした!
“もうユニバース構想はこれで一旦終わりということにして普通に単独作・単独シリーズ作ってけばいいんじゃないかと思います…”
これはマジで同意見です、多分もう引っ込みがつかなくなってるのでしょうね。
ちなみにゾッド将軍をドラゴンボールで例えるなら、魔人ブウというより初期のベジータが近いかもしれません。
マンオブスティールすら観てないとか嘘だろ‥それでここまで偉そうなこと書いてたのか
なるほど君は大物だ
ありがとうございます!
この感想も、充分、長いよ。
居酒屋の中年男の愚痴みたいに。
居酒屋の中年男の愚痴のブログ版なんです!
そろそろ終映しそうなところを滑り込めました
最後お母ちゃんの事件の真相にはまるで触れないのにあのバットマンとアクアマンに尺を割いてるってのは、つまりこれから描かれる世界はこれまでと似てはいるけどこれまでとは違った世界の話なのでいままでDCEUとして展開してきた流れはいったん全て捨ててちゃらにしての再スタートなんですよという宣言と受け取ったけど、さてここからどうなるか。色んな世界から同名異人もしくはスーパーマンに対するスーパーガールみたいに役柄が相当する代替キャラたちをわさわさ招集してきてわちゃわちゃやったりするのかな
トマト缶の銘柄と監視カメラの仕掛けはうまかった。これみよがしの出オチみたいな伏線とも呼べない伏線もどきが氾濫する中、ああいうのを本当の伏線という。フラッシュが光の速さで棚の品を入れ替えてる姿を想像すると可笑しいけどまあ終始その手の可笑しさを強調した映画だったしいいか笑
一応話は繋がってるとはいえ『スースク』もザで作り直しましたし、『ジャスティス・リーグ』もたぶん作り直そうとしてるんだと思います。前のリーグを覚えてるフラッシュがメンバーを集めるため世界を巡り…みたいなところから始まって。でも『ザ・フラッシュ』自体がコケたわけではないにしろ経営陣が思ったほどの興行成績を上げてないらしいので、早くもその計画に暗雲が…リセットできない過去もあるとDC=ワーナーの経営陣にも学んで欲しいです!
シャザムとブラックアダムについてはこれっぽっちも言及しないとこがまた露骨でね……お前らそんな小競り合いしてる間があったらまずジャイモン・フンスーに謝れ!とも言いたいですねー笑